誘拐されて8年後、娘は犯罪者になっていた。映画「白い沈黙」の悲痛な内容
少女誘拐監禁事件を題材にした今作。時系列をバラバラにする演出により単なる1本道の映画には終わらず、ジグソーパズルのようにピースが段々とはまっていき、徐々に全体像が見えてくるという作りが特徴となっています。映画「白い沈黙」をご紹介致します。
あらすじ・ストーリー
マシュー(ライアン・レイノルズ)の9歳になる娘キャスが、雪の降る日に行方がわからなくなる。誘拐されたと取り乱すマシューだったが、それを裏付ける目撃情報や物的証拠が出てこない。それが原因で警察は彼が自分で娘に危害を加えたのではないかと疑うが、捜査は進展することなく8年が経過してしまう。ある日、突如としてキャスの生存をほのめかすような証拠が次々と浮かび上がる。混乱しながらも娘との再会の希望を見いだすマシューだったが、衝撃的な事実を突き付けられることに。
単なる少女誘拐監禁事件には収まらない社会の闇を描いている
パズル的な技法もさることながら、より注目すべきはその内容。単なる誘拐監禁ではなく、誘拐された少女が監禁されると同時に犯罪の片棒を担がされているという点が新しく、また恐ろしい。今や誘拐は単なる金銭目的に留まらないのでしょう。誘拐した少女を利用してさらに犯罪行為を繰り返すという構図も醜悪。突然娘を誘拐され、また営利目的ではない為にその後の連絡もなく途方に暮れるしかない親の心情は見ていて痛ましかったです。
都合8年分のシーンがほぼランダムに映し出されます。それがどの年のシーンなのかは分かったり分からなかったり。それでも共通するのは痛々しい両親の現状と警察の不甲斐なさ。今作は素人である父親が犯人を見つけ出したりしていて、警察の無能さがかなりフィーチューされています。これが現実なのかそれとも創作なのかは分かりませんが、誘拐された少女の父親を犯人扱いするシーンなどは観ていて怒りがわきました。
ところどころに雑な部分があるが、許容範囲内か
かなり粗削りな作品であることは間違いないでしょう。細かい部分をツッコミ出せばキリがありません。これを些末なことかどうかを判断するのは個々人の裁量によりますが、私個人としてはあまり気になりませんでした。もちろん少し首を傾げざるを得ないようシーンだったり、ご都合主義になりかけのシーンもあったりしますが、あくまで許容範囲内。ひどすぎるというほどでもありません。
派手なシーンはなく、ほぼ全編にわたって白い雪が画面に映し出されます。静かに進むミステリーです。雪は何も語らず、ただしんしんと降り積もるのみということなのでしょう。証拠も何もなく、残ったのは悲哀のみ。最後の最後、冷たく凍った雪が溶けるように親子が再開するシーンはじんときます。誘拐され8年が経ち、ようやく春が来たのですね。
まとめ
雰囲気が良く、またパズル的な演出法を用いた点が凄く良かったですね。これが1本の道をただひたすら進むような映画だったらもっと平凡な作品に終わっていたかもしれません。現代社会の闇を描いた作品。日本でもこういった事例はあるのかもしれませんね。行方不明になっている人は年間何万人といるようですから。興味のある方はぜひご観賞ください。