ニコラス・ケイジの渋さにやられた! 映画「グランド・ジョー」の光と闇。
あまりに人間臭い物語。ニコラス・ケイジがとにかく渋く、人間味が溢れています。虐待に耐え忍びながら家族を支えようとする少年が痛ましく、またそれを救おうとするニコラス演じるジョーが不器用ながらも優しさに溢れています。最高のヒューマン映画「グランド・ジョー」をご紹介致します。
あらすじ・ストーリー
アメリカ南部の寂れた田舎町に暮らすジョー(ニコラス・ケイジ)は前科者だが、今はしっかりと働きながら普通の生活を送っていた。ある日、彼は仕事を探しているという15歳の少年ゲイリー(タイ・シェリダン)と出会うが、ゲイリーは飲んだくれの父親の暴力に耐えながら家族の面倒を見ていた。ジョーとゲイリーは一緒に働くうちに、まるで親子のような関係になっていき……。
人間の善性と悪性を絶妙なバランスで描き切っている
悪いやつはとことん悪く、良いやつはとことん性格が良い。そんな風に人間を描けばきっと楽でしょうし、分かりやすい。でも本物の人間ってそんな風に一筋縄ではいかないものです。日常的に虐待を繰り返し、しかしふとした瞬間に親父の顔に戻ってしまう男がいたり、真面目に生活を送りながらも時々ちょっとしたことで警察に連行されてしまう人がこの作品には出てきます。
観ていて痛々しい場面も時にはあります。特に少年が虐待されるシーンや、クライマックスなどは思わず目を覆ってしまう程にひどい。しかしだからこそリアリティがあります。人間って時にとんでもなく残酷になれるものです。逆もまた然り。ちぐはぐに見えて筋が通っていそう、でもよく考えたらやっぱりちぐはぐな行動原理。人間のよくわからない心理がきちんと描写されていました。
物語のラストで気付くコントラストが見事
作中、ジョーと少年は木々に毒を打ち込んで腐らせる仕事に従事しています。なんてことはない仕事で、この仕事のチョイスに特に意味はないのだろうと思っていたのですが、ラスト付近のシーンでどうしてその仕事を選んだのかが分かりました。見事なコントラスト、最高のメタファーです。少年の前途が洋々としている様が映像だけで表現されています。これぞまさに映像だからこそできる表現。あえて説明しないところも、また乙です。ラスト付近に何が描かれているのかは、ご自身の眼で確かめて頂きたいと思います。最後には希望を感じることができました。
まとめ
かなり重厚な作品で、ライトな物語を好む人にはあまり受けないかもしれません。しかし、この映画はぜひとも観て欲しい。少年と男の交流物語はこの世に星の数ほどありますが、その中でもおそらく最高水準の映画の1つでしょう。暗い色調の物語の中で輝く少年のひたむきな前向きさと、徐々にそれを救いたいと願う男。久しぶりに映画の中に人間を観た気がしました。オススメしたい映画の1本となりました。