AIR/エアー(2015年の映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『AIR/エアー』は、2015年のアメリカ映画。人気テレビシリーズ『The Walking Dead』(ウォーキング・デッド)のスタッフが制作に携わり、同作のダリル・ディクソン役で知られる、ノーマン・リーダスが主演を務めて話題となった。外気が放射性物質に汚染され、死の星となった地球を舞台に、地下施設で冷凍睡眠中の科学者たちを守る管理人の男の、心理的駆け引きを描いたSFスリラー。物語は、2人の管理人による緊張感あふれる会話劇を軸に展開する。

『AIR/エアー』(2015年の映画)の概要

『AIR/エアー』は、2015年のアメリカ映画。人気テレビシリーズ『The Walking Dead』(ウォーキング・デッド)のスタッフが制作に携わり、同作の原作コミックを手掛けたロバート・カークマンが制作総指揮を務めている。人気キャラクターであるダリル・ディクソンを演じたノーマン・リーダスが主演に抜擢されたことでも話題となった。
外気が放射性物質に汚染され、生命をほとんど失った地球を舞台に、地下施設で冷凍睡眠中の科学者たちを守る二人の管理人の心理的駆け引きを描くSFサスペンス。
地下施設という閉鎖空間での緊張感や極限状況で表れる人間性が物語の主軸ではあるが、主人公のひとりが見る幻覚として現れる女性の正体など、小さな伏線をちりばめた演出も心理的緊張を高めるのに一役買っている。
この一方で、二人の男の会話劇を中心に展開されるために、ストーリーのテンポが緩やかで、アクションや派手な展開を期待する観客からは退屈に映るという評価も多い。
しかし、キャストの演技やセットの緊迫感、制作総指揮のロバート・カークマンによるポストアポカリプス(世界の破滅後)の世界の構築などの要素が絡み合った、心理サスペンス的な深みを味わうことができる。
鑑賞後の評価は分かれる作品ながら、極限状態での人間ドラマと、映像による閉塞感を楽しみたい観客には見どころの多い映画といえる。

『AIR/エアー』(2015年の映画)のあらすじ・ストーリー

酸素が貴重になった時代

近未来、大気汚染や化学兵器の影響で、外の空気は放射性物質が含まれた毒となっていた。滅亡寸前となった人類の希望は、地下の「バンカー」に冷凍睡眠状態で保存された科学者たち。彼らは将来、地球環境が回復した時に目覚め、再建を担う予定の優秀な人材だった。
バンカーには2人の「管理人」が常駐し、半年に一度、数時間だけ目覚めて機材の点検と空気濾過装置の整備、睡眠ポッドの管理を行っている。
この管理人を務めるバウアーとカートライトは、2人だけの孤独な作業に従事しつつ、良好な関係を築いていた。
そんなサイクルを繰り返し、人類の未来のために働いてきたバウアーとカートライトだが、何度目かの点検の最中、カートライトの睡眠ポッドが火災で破損。次の眠りにつく場所がなくなってしまう。

ポッドの破損と2人の亀裂

このままではどちらかは命を落とすことになってしまうため、必死に代替ポッドや予備のパーツを探す2人だが、バンカーに残されているものは不具合だらけだった。
極限状態の中、バウアーは「生き残るためには、眠っている科学者の誰かを犠牲にし、ポッドを奪うしかない」と提案をするが、カートライトは「人類再建のための科学者たちを殺すのはあり得ない」と反発。良好だったはずの二人の間には、埋まりようのない溝ができてしまう。絶望で極限状態に陥ったカートライトには、冷凍睡眠中の科学者の女性の幻覚が見えるようになっていく。
幻覚の女性に励まされたカートライトは隣接する別のバンカーに行き、余ったポッドを探そうと決意する。しかしその施設にはすでに生きている人物の姿はなく、死の静寂に包まれていた。
監視モニターには「生存者がいる」と表示されていたが、実際にはすべての科学者が何年も前に死んでいた。モニターは虚偽のデータを映していたのだ。再び絶望に追い込まれるカートライトに、女性の幻覚が優しく寄り添う。
バウアーは隣のバンカーに向かったカートライトを無線でサポートしていたものの、過去の監視映像から、彼が自分を見殺しにしかけた瞬間を目撃したことで、不信を募らせる。互いに互いを信用できない状況に陥ってしまった2人の関係は、もはや修復することは不可能だった。

人類の再建

カートライトが戻ってきたとき、バウアーは銃を構え、互いに相手を信用できないまま衝突する。
追い詰められたバウアーは正気を失いかけ、カートライトは最終的にバウアーにモルヒネを注射。彼を事実上「安楽死」に近い形で眠らせてしまう。バウアーは静かに死を受け入れ、薄れゆく意識の中で自分の過去と心の内を吐露する。実は「外気がすべての生物を殺す」ということを全く信じていなかったバウアーは、妻子がいたにもかかわらず独身者限定のこの仕事に応募しており、その負い目を覆い隠そうと日ごろは軽口ばかりを叩いていたのであった。過去の自分の行動に負い目があったバウアーは、たった2人で仕事を共にしてきたカートライトを「家族」としてとても大切に思っていたことを明かし、命を落としていった。
やがて時は流れ、地下の空気環境が改善され、システムは自動的に科学者たちを覚醒させ始める。
眠っていた人々が続々と目を覚まし、その中には幻覚の女性ことカートライトの妻、アビー の姿もあった。

『AIR/エアー』(2015年の映画)の登場人物・キャラクター

バウアー(演:ノーマン・リーダス)

バンカーの管理をする技術者で、本作の主人公のひとり。半年に一度の目覚めが毎回嬉しくて仕方ない様子があり、仕事よりも自分のストレス解消を優先しがちな一面も。
事故により睡眠装置が一つ壊れてしまい、予備のパーツで修理して試しに入るも失敗する。
そのせいでカートライトを疑い、更に生き残る為に仕事を放棄するという暴挙に出る。
隣の格納庫から予備のパーツを調達する為、向かうカートライトを無線でサポートするが、過去の監視映像をもとに彼への不信感を募らせる。最後はカートライトにモルヒネを打たれ、地上に残してきてしまった妻子への懺悔や、カートライトへの信頼を明かして謝罪。そのままこと切れる。

カートライト(演:ジャイモン・フンスー)

バンカーの管理をする技術者で、本作の主人公のひとり。マイペースながら仕事をこなす、非常に真面目な男。
確実に仕事をやり遂げることができる一方で神経は繊細なため、眠っているはずのアビーという科学者の女性の幻と会話をして正気を保っている。
事故により睡眠装置が一つ壊れ、予備のパーツを取り付けるも不安で試せなかった。これが原因でバウアーは危うく窒息死しかけるが助けることもできず、これが原因で彼からは不信感を持たれるようになってしまう。
疑心暗鬼になったバウアーが拾った銃で撃たれるが、反撃をして彼を葬り、生き残って仕事を続ける。

アビー(演:サンドリーヌ・ホルト)

人類再建の鍵となる優秀な科学者で、冷凍睡眠中。カートライトの幻覚として登場し、極限状態にある彼を導く存在となる。バウアーが科学者を犠牲にしようとした際には、カートライトを説得して暴挙を止める役割を果たした。物語の終盤、実はカートライトの妻であることが明らかになる。

『AIR/エアー』(2015年の映画)の用語

バンカー

バンカーの管理人を務めるカートライト(画像左)とバウアー(画像右)

バウアーとカートライトの職場。外気が有毒になった世界で、人類再建のために科学者たちを冷凍睡眠で保存している地下施設。物語の舞台のほとんどを占める閉鎖空間。
作中では、二人の管理人の孤独や極限状況を際立たせ、心理サスペンス的な緊張感を生む装置として一役買っていた。

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