ハッピーボイス・キラー(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ハッピーボイス・キラー』(原題:The Voices)は、2014年公開のアメリカ映画。自分以外の誰にも聞こえない「声」に翻弄され、次々と殺人を犯してしまう青年の運命を、ポップでブラックなタッチで描いたホラーサスペンスコメディ。精神疾患を抱える男という難しい役どころをライアン・レイノルズが演じ、アナ・ケンドリックら豪華キャストが脇を固める。幻聴や遺体損壊といった重いテーマを、美しい映像と緻密なセットで、コミカルに昇華する手腕が高く評価された作品。

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『ハッピーボイス・キラー』の概要

『ハッピーボイス・キラー』(原題:The Voices)は、2014年公開のアメリカ映画。同年1月に開催されたサンダンス映画祭で初公開され、その後アメリカで2015年2月、日本では同年9月に劇場公開された。フランスの漫画家として活動し、2011年の『チキンとプラム 〜あるバイオリン弾き、最後の夢〜』で称賛を集めたマルジャン・サトラピが監督を務め、全編英語で製作されていることで映画ファンの間では話題となった。
精神疾患を抱える男という難しい役どころをライアン・レイノルズが演じ、アナ・ケンドリックら豪華キャストが脇を固めていることで注目を集める。特に、メインテーマとなる「幻聴」の部分の声をすべて一人で担当し、演じ分けたライアン・レイノルズには称賛の声が集まった。
自分以外の誰にも聞こえない「声」に翻弄され、次々と殺人を犯してしまう青年の運命を、ポップでブラックなタッチで描くホラーサスペンスコメディ。幻聴や遺体の損壊といった重いテーマを、美しい映像と緻密なセットを用い、コミカルに昇華した手腕が高く評価されている。

『ハッピーボイス・キラー』のあらすじ・ストーリー

ペットと会話ができるジェリー

バスタブ工場で働くジェリーは、ペットの犬のボスコと、ネコのMr.ウィスカーズとともに、地味ながら平穏な毎日を送っていた。しかし普通と違うのは、ジェリーには彼等の言葉がよく分かったという点である。
いつも優しいボスコと意地悪なMr.ウィスカーズは毎日ジェリーに話しかけてくるが、彼らはジェリーが外でどう過ごしているかまでをよく知っていた。ジェリーはフィオナという同僚の女性に片思いをしていたのだが、彼女から煙たがられていることに悩んでいて、なぜだかボスコとMr.ウィスカーズはそんなことまでしっかりと把握している。ジェリーは彼らに相談したり、いじられたりする日々を過ごすのであった。
ある日、ジェリーは雨の中で立ち往生しているフィオナを見かける。意図せずも彼女に近づくチャンスを得たジェリーは、濡れたフィオナを車に乗るよう促すのであった。
そして、彼女を家に送り届けるために動き出した車は、森の中へ入っていく。

鹿との接触事故から始まる悲劇

フィオナと車内で交わす会話は、思った以上に楽しいものだった。ついテンションが上がってしまったジェリーは運転に集中することができず、気付いた時にはフロントガラスに鹿が突き刺さるという大惨事を引き起こしてしまっていた。
呆然とするジェリーだが、その耳には死を懇願する鹿の声がはっきりと聞こえていた。
ジェリーはその声に従い、ナイフを取り出すや否や、鹿の喉を切り裂いてとどめを刺してしまう。その様子を見たフィオナはパニックに陥り、車を飛び出して逃げていく。
フィオナに危害を加えるつもりはなかったため、慌てて彼女を追いかけるジェリー。しかし、もみ合った弾みで彼女の腹を刺してしまう。ジェリーは必死に謝りながらフィオナを何度も刺し、殺害するのであった。

第二の殺人

もの言わぬ体となったフィオナを連れ帰ったジェリーは、自宅で彼女の身体を解体した。
そしてそれをタッパーに詰めて積み上げ、頭だけはそのまま冷蔵庫の中へと片付けてしまう。しばらくすると、どこからともなくフィオナの声が聞こえてきた。
冷蔵庫を開けたジェリーにフィオナの生首は恨み節を言い、さらに彼女は「友達が欲しい」とジェリーに要求した。フィオナの殺害自体が予期せぬアクシデントだったこともあり、ジェリーにはそれ以上罪を重ねるつもりはない。しかし、フィオナの生首と話している所を見られたら殺すしかないと判断したジェリーは、たまたま家へ遊びに来ていた同僚で、自身の恋人となっていたリサも手にかけてしまう。

罪を重ねるジェリー

フィオナもリサも同時期に姿を見せなくなり、そのころから会社を無断欠勤しているジェリーに疑いを持った同僚のアリソンが彼の自宅を訪ねてきた。エスカレートする声と、犯行が露呈する恐怖で歯止めが効かなくなったジェリーは彼女も殺害してしまう。こうして、冷蔵庫の中には三人の女性の生首が揃った。それを目の当たりにしたジェリーは自分が恐ろしいと思い、自分の主治医であるウォーレン博士に罪を打ち明けて誘拐し、自宅まで無理やり連れてきた。
ジェリーの自宅の惨状を見た彼女はその様子に恐れおののき、絶叫した。ペットの糞まみれの不潔な床と血だらけのテーブルというだけで恐ろしいというのに、ジェリーはウォーレン博士の目の前にフィオナを連れてくる。しかし彼女の目には、それはジェリーの説明した喋る生首ではなく、ただ損壊された女性の遺体の一部として見えているのであった。

ジェリーの最期

しばらくするとパトカーのサイレンが聞こえてきた。ジェリーを不審に思っていた同僚たちが、警察に通報していたのだ。警官たちが突入する頃には、ジェリーは配管用のスペースを通り、その場から逃げ出していた。しかし逃げる際に誤ってガス管を破壊してしまっており、それが静電気に反応したことで爆発が起こり、自宅は火に包まれてしまう。
ジェリーは「逃げろ」という声と「自分は生き残るべきではない」という両方の声を聞いて葛藤するが、逃げることをやめた。ここで生きるのをやめようと決意した彼は、動物たちや遺体たちの声は幻聴だと悟っていたのだ。心の中で手にかけてきた人々に謝罪をしながら、ジェリーは静かに目を閉じるのであった。

『ハッピーボイス・キラー』の登場人物・キャラクター

主要人物

ジェリー・ヒックファン(演:ライアン・レイノルズ)(少年期演:ガリヴァー・マグラス)

日本語吹き替え:松本保典
本作の主人公。バスタブ工場に勤務する青年。精神科で治療を受けているものの、ペットの犬のボスコとネコのMr.ウィスカーズの声を聞くなど、妄想と現実の境界が曖昧になっている節がうかがえる。ひょんなことから同僚のフィオナを刺し殺してしまい、咄嗟に遺体を冷蔵庫に隠したものの、その遺体の声も聞こえるようになったことで正気を失っていく。
多感な少年期に実母の死や継父からの虐待を経験しており、これが現在の疾患へ繋がっていることが示唆されている。

フィオナ(演:ジェマ・アータートン)

日本語吹き替え:本田貴子
ジェリーの働く工場の会計課で働く美しい女性。加速度的にエスカレートするジェリーのアプローチに戸惑い、やや煙たがる様子を見せている。思わぬアクシデントから彼に殺害され、遺体を自宅に保管される。

リサ(演:アナ・ケンドリック)

日本語吹き替え:小林沙苗
ジェリーに好意を抱く同僚の女性。後に彼と恋仲になるが、遺体となったフィオナが「友達を連れてきてほしい」と言ったと思い込んだジェリーに殺害され、遺体を自宅に隠された

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