「純喫茶ねこ」は杉崎ゆきる氏が月刊コミックバーズ(幻冬舎)で連載中の漫画。
ストーリーは主人公の「錦織紺(にしこおり こん)」が大学受験に失敗し、強気で飛び出してきた実家に戻れずに北海道の函館まで流れてきてしまった所から始まります。お金もなく住む場所もない紺は飼い猫の「お嬢」と途方に暮れているところを、通りがかりの青年に声をかけられ、半ば強引にとある喫茶店に連れてこられます。そこにはボロボロの風体の猫達がたむろっていました。エサは出しっ放し、トイレの砂箱も掃除されておらず、毛玉だらけのあまりに無残な格好に我慢出来ずに思わず世話を焼いてしまいます。
実は紺に声をかけた青年「刀川絢鐘」は、「お嬢」の毛艶の良さを見て紺の猫の世話レベルの高さを見抜いて連れてきたのでした。手持ちの資金がない紺は致し方なく、そこでバイトをすることになります。実は喫茶店のマスターは絢鐘の長兄でした。アレルギー持ちの三男も含めて男4人と猫達の生活がスタートします。
紺の飼い猫の「お嬢」がとにかく可愛いです。もふもふです。いわゆる「美猫」ですね。つぶらな目で見上げきて「にゃ~ん」というシーンで、猫好きさんは一撃でやられてしまうと思います。首回りの毛が白くて、マフラーをしているようで可愛いです。猫と飼い主がお互い大好きなことが伝わってきてホッコリと癒されます。
猫に好かれる紺ですが、実は特異体質を持っています。何と猫の言葉が分かるのです。しかも、紺から見ると猫の姿が擬人化して見えるという厄介な体質(?)持ちでした。言葉が分かるので好物も分かり、世話はとてもしやすいのですが、こんな事がバレたら変人扱いされるとビクビクな紺。でも擬人化した猫達もそれぞれに個性が光っていて可愛いです。
話中に肉球でスマホを操作するシーンが登場します。こんな所も猫好きさんが悶える場面ですね。余談ですが、肉球でスマホの画面は本当に操作出来ます。検証している方がいらっしゃいました。ネコが肉球でスマホの画面をスライドしていたら、そりゃあ可愛いですよね。
そして猫又まで出てきてしまいます。でも猫又と言っても、おどろおどろしいものではなく、可愛らしい少女猫です。喫茶店のカウンターにちょこんと座る猫又に、紺が大好物のホットミルクをあげるシーンはとても心が温まります。
話の合間に、「珈琲豆知識」のようなページがあり、珈琲のちょっとしたお話や淹れ方などもあるので、珈琲好きの方はちょっと勉強になったりもします。心が温かくなるストーリーと猫の可愛さに癒されながら読める楽しいお話です。章の区切りが「一話」「二話」ではなく「一杯」「二杯」となっている「純喫茶ねこ」、杯を重ねるごとに味が深まる作品です。