ビンテージ・キーボードの役に立たないウンチク~海外製ポリフォニック編

最初は単音しか出ないモノフォニック式が多かったシンセサイザーですが、和音が出せるポリフォニック式のものも徐々にサイズが小さくなっていきます。そして、世界的な知名度を持つ2つのビンテージ・キーボードが誕生したのです。1つはProphet-5、もう1つはOB-Xaです。楽器そのものの名前は知らなくても、使用されている楽曲を聴くと懐かしく思う人も多いかもしれません。

猫も杓子も使った「Prophet-5」

亡きSequential Circuitsが開発した「Prophet-5」は、かつてはアルバムを聴けばこの音が溢れていたほどの名器です。発売された1978年は、シンセサイザーといえばモノフォニックが基本だった時代で、5音とはいえ和音を出せたのは画期的でした。
また、作成した音の記録装置を内蔵していたのも画期的でした。MinimoogもOdysseyも作成した音を記憶することはできず、一度作った音を完全に再現することは不可能に近かったのです。これも当時としては最先端の機能で「最先端のハイテクマシン」だったのです。

YMOが使用していたことで知られていますが、日本語と英語のWikipediaを見ると、主なユーザーに冨田勲、喜多郎、小田和正、クラフトワーク、フィル・コリンズ、デュラン・デュラン、ホール&オーツ、ピーター・ガブリエルなどなど、著名なミュージシャンやバンドの名前がずらり。アナログシンセサイザーとしては馴染みやすい音だったこともあり、本当に猫も杓子も使っていたという感じです。

坂本龍一氏が弾いているキーボードのうち、上段にあるのがProphet-5です。2012年でも現役なあたりが凄いです。

Prophet-5は当時、モリダイラ楽器が輸入販売しており、定価は170万円でした。ちなみに英語版Wikipediaによると、価格は4495ドルとなっています。1980年当時の為替レートが1ドル=225円ぐらいですから、単純計算ですと約101万円。手数料考えてもぼったくりすぎじゃないの?

通好みの「OB-Xa」

そして、海外製ポリフォニックシンセのもう1つの雄といえばOberheim。Prophet-5の翌年、1979年に発売されたOB-Xでポリフォニックシンセの「対抗馬」となりました。Prophet-5同様に音色メモリーを備えており、それなりに人気を博したのですが、Oberheimの名前を知らしめたのはこの後継機で、1981年に発売されたOB-Xaです。価格は4595ドルとProphet-5より若干高く、日本での販売価格も200万円とそれに準じた形になっています。にしても、何なんでしょうね、この値付け…。

OB-Xaは後継機であるOB-8よりも「出音がいい」として広く使われました。日本での知名度はProphet-5ほどではないですが、どちらかといえば「通好み」なイメージです。ちなみにこのOB-Xaが使用されている楽曲で真っ先に浮かぶのがこの曲です。

Van Halen「Jump」

冒頭からずっと流れているシンセサイザーの音こそがOB-Xaです。ギタリストのエディ・ヴァン・ヘイレンによる演奏です。

現代に残るビンテージの血脈

Sequential CircuitsもOberheimも今は亡き会社なので、実機の入手は困難です。Prophet-5のメイン開発者であるデーブ・スミスは現在、自らのファクトリーからProphet-5の血脈を引き継ぐ「Prophet-6」を出しています。価格は40万円前後とリーズナブルにはなりましたが、それでも高いですよね。

そんなあなたには、Prophet-5を再現したソフトシンセである仏Arturia社の「Prophet-V」があります。価格の方も99ユーロと一気にお安くなります。さすがに実機をシミュレートしたというだけあって、インターフェースはそっくりです。実機にはなかったエフェクトが装備されているのはご愛敬。実際のユーザーから見ると、出音に若干の違いがあるとのことですが、まあ値段を考えれば問題ないのではないでしょうか。

さすがに実機をシミュレートしたというだけあって、インターフェースはそっくりです。実機にはなかったエフェクトが装備されているのはご愛敬。実際のユーザーから見ると、出音に若干の違いがあるとのことですが、実機を探したりメンテナンスしたりする手間を考えれば、価格の方も99ユーロと実機よりかなりお安くなっていることもありますので、まあ問題はないのではないでしょうか。

一方、OB-Xaの方はOberheim代表だったトーマス・エルロイ・オーバーハイムがシンセ製作現場から離れてしまったため、純粋な意味での後継機が存在していません。その状況を気の毒に思ったのかどうかは分かりませんが、OB-Xaをシミュレートしたソフトシンセが、なんとフリーで配布されているのです。「OBXD」というのがそのソフトウェアです。

フリーだけあって、さすがにGUIを完全再現というわけにはいかないのですが、これはこれでいい感じですよね?

関連記事

renote.net

renote.net

renote.net

keeper
keeper
@keeper

目次 - Contents