『おそ松さん』第9話でギャグアニメの深さを知った。
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物凄く今更ながら、このアニメがいかにハイレベルか思い知りました。AパートBパートともども、真逆のベクトルで作品に「深み」を持たせる手腕…さすがに巨匠の作品は…いや詳しくは本文内で…。
遂にチビ太が暴走した!Aパート
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まあ、第一話ですでに暴走してましたが。
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表情が大人です。
「番組の良心」「六つ子よりか成長してる」などと言われていたチビ太が、遂に暴走しました。
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カラ松の「やりたいこと」を聞いている内に…。
「何でもいいから興味あるモノ見つけて仕事してみろ」相変わらずいいこと言います。で、中二病全開のカラ松の「やりたいこと」を書き留めている内…。「何だそうだったのか…お前の夢はおでん屋だったのか!」ええと…。まるっきりおでんと関係ない内容だった気が…「自分を高める」「世界平和」…うん、おでんと関係ない。
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…と思うのは素人の浅はかさなのかもしれません。チビ太は少年時代からおでん片手に登場していました。彼からしてみればおでんこそがすべて、なんでしょう。そして、中二病カラ松でさえドン引きするほどの「修行」として、自身の得た「技」を伝授するのです。最終的には全裸でおでんの中に飛び込んで…おでん愛しすぎです。暴走しすぎです。考えようによっては「幼馴染でも、知らないうちに何かを極め、常人では理解できない域に達していた」ということなんでしょうか。2話目でも、おそ松が弟たちの「知らなかった一面」を見る場面がありました。よく知った人でも、分からないものは分からないんです。でも全裸でおでんの中に飛び込むのはやりすぎですぞ、チビ太…。
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でも名言もあったんですよ?いや、迷言か?
兄弟一の暴走キャラが恋をしたが…?Bパート
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ハイテンションで一番非常識。そう思われていた十四松が常識人になった!1日の言動の比較(朝食、話し方、戦闘で泳ぐ子供を注意するなど)でそれを表し、どうやら恋人ができたらしい旨を知る他の兄弟。「どーせこの子男の子でしたってオチでしょ」と思ったら…。
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ギャグで締めると思ったら…。
おそ松は行きつけのレンタルDVDショップで「自分の彼女」を物色する中、あるものを見つけます。そして、他兄弟から締め上げられていた十四松に「俺より先に~!!」などときつく「お仕置き」。馴れ初めや告白する旨を聞き出して…「トッティ」の時とは違い、兄弟全員で応援し、見守るのですが結局轟沈。その日のうちに実家に帰るという彼女を追いかけるよう、さりげなく言うおそ松のセリフ、何だかんだで長男なんですね。
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この泣き顔と、彼女を見送る時の「キャラ」の違い。
ネットの感想を見ていていろいろ気づかされました。彼女がなぜ、死のうとしていたのか、そして最後のリストバンドの意味。「14」が「十四松」だっていうのは分かったんですけど、「君は一人じゃない、再会を願ってる」という意味合いが込められてたんですね。敢えて明るく見送る十四松、冒頭と同じようなことしているのに印象が違って見えます。電車を追い掛けるベタなほど定番の演出も、彼独自のやり方で、いつも彼女を笑わせていたやり方で。
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AパートBパートともども、「さりげなく描く」という手法が使われていたように思います。チビ太があそこまで暴走するほどおでんを極めた経緯をギャグで、そして十四松と彼女との間にあったさまざまなこと、彼女の人生、これからを、重く、だけどどこか暖かく。そして、おそ松の弟想いぶり(十四松を締め上げたのは、弟たちがの怒り等を鎮めるため)。普段ギャグアニメとして「バカやってる」からこそ光る感動。巨匠の作品にあぐらをかくのではなく、いかにそれを理解し、現代の作品として昇華するかを考えさせられました。