「シュール」を浸透させた功労者?「シュール君」について
たま~に目にする、耳にする「シュール」という言葉。浸透し出したのは90年代後半とのことですが、90年代の初め、いたのです。「シュール君」というキャラクターが。早朝の子供番組の『ウゴウゴルーガ』のメインキャラの一人でしたが、インパクトの強さはトラウマ級、しかし人気はナンバー1。「シュール」という言葉を広めるきっかけになったと言っても過言ではないキャラクターではないでしょうか。
『ウゴウゴルーガ』って何よ
1992年10月。それは突如はじまりました。それも、朝の6時10分という非常に早い時間帯に。一応子供番組ということになっていますが、内容は過激で前衛的です。当時としては珍しかったCGをふんだんに使い、ミニコーナーとメインコーナーがランダムに切り替わります。名作文学をほんの数分×5日で紹介するなどの突っ走りよう。中には「子供には早いんじゃないか」というようなネタもあれば、トラウマになりそうなものもありました。にもかかわらず爆発的な人気を博し、社会現象にまでなった、伝説の番組です。メインコーナーでは、子役のウゴウゴ君やルーガちゃんが曜日ごとに違うCGキャラクターを召喚し、トークをします。で、シュール君はそのひとりでした。
どんなキャラ?
かわいいんだか、かっこいいんだか、不気味なんだか、よく分からない風貌です。他のキャラクターは「トマトちゃん」とか「ロボット君」とか分かりやすいのに、一人だけ前衛美術風で、しかも当時の子供としては聞き慣れない単語の名前。番組自体も相当ですが彼の持つ個性もまた強烈で、ファンのハートをガッツリキャッチ。子供のみならず女性人気も取り込んだ、稀有なキャラクター。夏休みスペシャルの際はFAXでイラストが送られてきましたが、大半がシュール君を描いたものでした。その事実からもその人気ぶりが伺えます。メインキャラクターはCGで作られた子供部屋のような空間内に潜んでおり、召喚呪文で呼び出されてなぞなぞや悩み相談と言ったトークを行うのです。シュール君は絵の中にいました。召喚時はカンバスごと揺れて飛び出してきます。
インテリジェンス
公式サイトによれば「自称フランス人」だそうで、フランス語がペラペラです。出てきて最初に「おフランス語講座」をし、然る後にトーク開始。彼の場合は「キメテキメテ」という二択クイズをしていました。本人曰く「言葉遊び」とのことですが、時事ネタや風刺の絡んだ非常に高度なものでした。下記のように、うまくダジャレを織り交ぜてくるのです。
羽田派の旗揚げとはたはたのからあげ、いただけないのはどっち?
出典: ja.wikipedia.org
顔に似合わずイケボ
こんな顔して美声です。非常にイケボです。声を担当していたのは本職の声優さんではなくスタッフの方だそうですが、役者を目指していたとか。他のキャラも演じていました。ちなみに番組終了後フジテレビを退社し、現在は音楽プロデューサーをしている人物、との説が最有力です。
いろんな意味でオトナ
夏休みなど、一般の子が参加することがあり、その際はファンの子に「ジュテーム」とファンサービスをしたり、結構優しい(投げやりとも取れますが)対応をしていました。それでいて、ウゴウゴ君には厳しい一面もありましたが、恐らく愛の鞭。「ちょっといじめすぎた」とウゴウゴ君に謝ったり、「君はめげないのがいいんだよ」なんて言ったりもしていました。オトナです。ただ、オトナな一面が暴走して下ネタを連発することも多々ありました。
【暴走回】「もう最終回も近いし、こういうネタばっかり浮かんでくるからやっちゃうよ!」と朝から過激発言連発の回が存在。DVDに収録されています。
【お絵描きコーナーにて】93年、ゴールデン番組枠で『ウゴウゴルーガ2号』を放送。この時、一般の子を招いてパソコンで絵を描かせるコーナーがありました。ある時のテーマは「自分が好きな物」。ルーガちゃんに「僕は何を描くと思う?」と尋ね、返ってきた答えは「女の人」。それに対し「ピンポーン」で済ませていました。
【恋人に関して】1993年より『ウゴウゴルーガ2号』という兄妹番組が放送。その中で一般の子供や有名人(大人)を招いてパソコンで絵を描いてもらうコーナーを担当。その中で、ピチカート・ファイブの野宮真貴氏から「もしシュール君が独身だったらお付き合いしたい」とアタックを受けました。「もちろん!」と嬉しそうに答えていましたが、ルーガちゃんの口から出てきてはいけない言葉が…。「21歳のピアノの先生はどうするの?」「余計なこと言わないで…」。どうしたんでしょう。ちなみにこの野宮氏とは『ピチカート・ファイブのウゴウゴルーガ』というCDで共演。曲のラストで「大人ですか?」と聞き、デートに誘うような意味深な終わり方をしていました。後に担当声優は野宮氏と結婚しています。
【衝撃の告白】最終回、男性も女性も愛せるといった主旨のことをのたまい、「ウゴウゴ君さえ良ければ(恋人として)お付き合いしたかった」と言い残しました。そこは冗談でしょうけど、番組のスケジュールは過酷を極めたそうで、末期ともなると台本にほとんど何も書いてないことがあったそうです。つまり、ほぼ「中の人」の素が出ていた状態。実際中の人が両方愛せる人なのか、シュール君のキャラなのかは不明。
キャラの変遷
【オネエ時代】番組初期は、アーティストキャラにはオネエが多いという記号からか、オネエ口調のオネエキャラでした。去り際自分が男か女か聞いたり、詩を朗読したりと、何とはなしに耽美的なキャラクター像。「愛が大事」とよくのたまっていました。
【その後】いつからか敬語で話すようになり、オネエではなく男性寄りの口調に変貌。また、ため口で親しげに会話している光景もよく見られました。
出典: blog.livedoor.jp
出典: twstat.org
本来の「シュール」のはずだった、のか?
シュルレアリスムをイメージしたような風貌と言い、ともすると本来の意味での「過剰な現実」を意識したキャラクターだったのかもしれません。「キメテキメテ」の内容が過激だったのもそのせいなのかも、と思ってみたり…。でも、「シュール」=意味不明、難解というイメージを作り上げた一端であることは確かだとは思います。独り歩きを始めた「シュール」という言葉は今なお使われています。とっくに成人したウゴウゴ君やルーガちゃんのように。何にせよ、彼のキャラクター、風貌、いずれも当時のファンの心に深く深~く刻まれていることでしょう。いろいろと濃いですから、このキャラも、番組も。