埋もれたリメイクアニメ『みつばちハッチ勇気のメロディ』
『おそ松くん』が再アニメ化、ということで、あるリメイクアニメ映画についてご紹介します。『おそ松くん』同様昭和から平成へと現代風に生まれ変わり、かつタイトルも変わったのに、今一つ知名度に乏しいのは、作品の力不足?いいえ、それは違います。たまたまジブリ、ディズニーといったアニメ二大巨頭と同時期に公開された、その時期が悪かっただけなんです。公開は2010年。原作は『みなしごハッチ』です。
概要
2010年、タツノコプロのアニメ『みなしごハッチ』放送開始から40周年ということで映画公開。
あらすじは概ね原作と同じですが、虫と話せる人間の少女、アミィが登場します。原作アニメの暗さも鳴りを潜め、残酷シーンや死体などが出ません。
タイトルが『みなしご』から『みつばち』に変わった理由は明言されていませんが、時代背景も考慮してのことではないか、との指摘あり。
あらすじ・ストーリー
平和なみつばち王国(パンフレットの表記)の王子として暮らしていたミツバチの子ハッチ。しかし王国はスズメバチの大群により滅亡、大好きなママとも離れ離れになってしまいます。「必ずまた会える」というママの言葉を信じ、成長したハッチはママを探す為旅に出ました。
スズメバチの群れと一緒にいるかもしれないと「スズメバチがどこにいるか知らない?」と聞いて回るうち、たどり着いたのは人間の町、セピアタウン。
荒くれ者のカマキリ、カマキチに絡まれていた虫を救った(実際は偶然であり、ハッチも「訳が分からないうちにこうなっただけ」と言いました)としてそこの虫と仲良くなりますが、皆カマキチ以上に、スズメバチに怯えていました。
「スズメバチなんか探すのを止めろ」と言われながらも諦めないハッチですが、一方でハーモニカの音色に惹かれて、人間の少女アミィに近づきます。ひょんなことから虫と話す能力を得たアミィとも友達になり、「一緒にママを探そう」と提案されるのでした。
一見楽しげな虫たちの世界ですが、「会いたい会いたいと願っていれば必ず会える」と励ましてくれたセミのミンミンは一日で老化。しかも彼を食べようと巣を張って待つクモまで現れます。
結局ミンミンは食べられてしまい、ハッチはカマキチから自然界の掟、弱肉強食を体に叩き込まれます。
回復後、アミィと共にママ探しを開始しますが、その中でスズメバチと接触。
執拗に追い回されますが、スズメバチが「本隊」との合流を優先したため助かりました。
ハッチと仲良くなった虫のいる公園が襲撃に遭い、イモムシのクネクネが連れ去られます。ハッチはスズメバチから救ったカマキリの子、カマチビを家まで送り届けていたため難を逃れますが、翌日事情を聞くと、クネクネを助ける為スズメバチの巣へ向かおうとします。
ハッチに子供(養子)を助けられたとして、カマキチが案内役を買って出ました。巣の目前で護衛兵たちにこてんぱんにのされますが、スズメバチたちは「ミツバチの仲間が来る」ことを予期して放置。その巣は、川の中と言う、本来ならあり得ない場所に作られていました。
カマキチと少し打ち解けたハッチは、共にオケラたちに回収されて、かつて別れたミツバチの仲間と再会します。
そこで、ママがスズメバチの巣に捕らえられていることを聞き、カマキチの提案した陽動作戦で内部の兵力を減らし、侵入。しかしスズメバチの女王までは騙せず、戦闘になります。
アミィはクネクネが偶然からスズメバチの巣から逃れて川を流れてきたこと、スズメバチの巣にハッチのママと思われるミツバチがいたことをアミィに話し、動かなくなりました。
アミィは意を決して森の虫たちに話を聞き、「ハッチはそんな簡単にやられない。一緒にママを探すって約束した」とスズメバチの巣に向かうのでした。
森の虫たちも、スズメバチの武器の一つである数に対抗すべく、遠方から知り合いの虫をかき集めて総攻撃を決行。
巣の内外で、スズメバチと昆虫たちの攻防が繰り広げられますが、一方でアリたちが巣の解体を開始。
巣が長く持たないことを悟った女王は子供たちと脱出を図りますが、閉じ込められます。そしてハッチは、ママのいる牢獄までたどり着くものの救い出せずに外に連れ出されるのでした。
お互いの女王を救うべく、スズメバチも含めたその場の虫たちが協力して川に入り巣を拾おうとするアミィをサポート。ハッチがママと対面を果たした時、アミィは虫との会話能力を失います。それでも「ずっと友達」と約束を交わし、それぞれの道を歩むのでした。
ハッチ変わりすぎ!
見出し画像を見てください。これが懐かしアニメ系の番組で目にする元祖ハッチです。平成元年放送のリメイク版でもデザインが変わってはいるものの、大まかな所は似通ってはいました。それが、2010年、いわゆる萌えの文化に触発されたのか、時代に合わないと判断されたのか、デザインが変更されました。
顔以外にも触覚やスカーフが大きめ、羽が比較的本物のハチに近い、尾(正確には腹部)の先端に針のような突起があるなどの変更点があります。
当初は色や体型も本来のミツバチに近づけるとの案があったんですが、「それじゃハッチじゃない」とのことで色やスカーフなどは初代と同じになりました。
本物のミツバチの大きさが1㎝程度なのに対し、ハッチは3㎝。これは人間が物語に絡むというストーリー上、本来の大きさだと小さすぎるとの理由で、このサイズにされたそうです。
ハッチが大きくなったため、敵のスズメバチは更に巨大です。
ちなみに、現実で最大最強のオオスズメバチの大きさが3㎝ほど。変更点はハッチのキャラデザインだけではありません。
ハッチから攻撃性が消えた
本作のハッチは攻撃をしません。相変わらずの正義漢ですが、防戦一方です。昭和版では石を投げたり飛びかかったり棒で殴ったり、時には殺害までしていたのですが、チョウやカマキリの子を抱えて飛ぶなど、攻撃できない状況にうまく持って行っています。
これは単に「かわいいハッチに攻撃なんかさせられない!」「規制のこともあるし…」ということではないと思うのです。老いたスズメバチを放っておけずに、「自分の仇じゃない」と言い聞かせて助けた元祖ハッチの優しさ、まっすぐさを更に強調するためではないでしょうか。
出典: www.hulu.jp
「悪役」が「悪者」でなくなった・人間編
最大の変更点は、人間の友達ができることです。舞台もセピアタウンというかわいらしい名前の、人間の町。
昭和版においては、顔すら出さず自然を破壊するだけだった人間ですが、ある事情で虫と話せるようになった少女アミィに、ハッチ自ら積極的に近づいていくのです。
その理由は、ハーモニカ。彼女の奏でるハーモニカを鳴き声と認知し心惹かれたハッチは、話ができるようになって後「きれいな鳴き声、聞かせてよ」とアミィに語りかけるのです。
一方のアミィは当初こそハチというだけで怖がっていたのですが、ハッチの「刺さない」という言葉を信じ、明るい笑い声を聞いて、少しずつ距離が縮まっていくのです。引っ越してきたばかりで友人が作れないほど引っ込み思案なアミィですが、危険なスズメバチの巣に向かう決意をします。他ならぬ、ハッチの為に。
「悪役」が「悪者」でなくなった・スズメバチ編
出典: blog.goo.ne.jp
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