子供向けだからって舐めたらアカン?象徴性に彩られた、少女の物語『マチルダ』
原作はロアルド・ダール。『チャーリーとチョコレート工場』の原作者、と言えば、大体の作品世界観はつかめるのではないでしょうか。監督こそ違いますが、内容の構成、良くも悪くもぶっ飛んだハチャメチャ振りは似ています。しかし、ただそれだけでないのが、凄いところ。児童文学原作と侮るなかれの、いや、児童文学を下敷きにしているからこそのある「強み」を持った映画です。
主人公は6歳にして大学レベルの数学を解き、読書好きな天才少女、マチルダ。しかしインチキ中古会社を経営する父を始め家族からはネグレクトもしくは叱られてばかりの日々。学齢に達してもとぼけているのか本当に把握していないのか、「まだ早い」などと言う始末。ですが、ひょんなことから異常に子どもを敵視する女性校長の支配する学校に編入することになります。
優しい担任のハニー先生や友人に励まされつつ、戦う少女マチルダ…と書くと何だか「健気で可哀想だねえ、グスン…」といった印象を抱くかもしれませんが、どっこい彼女はかなりの根性の持ち主です。物語全般にわたって、悲愴な感じはほんの少し。むしろ楽しげでかわいらしいのです。そして何より、誇張された少女の強さというものが垣間見えます。というより、数多くの象徴性に彩られています。マチルダがその知性を発展させるに至った図書館は荘厳な印象で、彼女には天国のように思えたことでしょう。理解してくれない家族がいるリビングは夜、テレビの明かりがないと真っ暗ですし、ハニー先生の家はかわいらしいのです。校長の家は、一見すると豪邸ですが中身は散らかり放題です。そして校長の砦とも言える学校。何だか強制収容所を思わせます。校長室では子どもの写真がダーツの的になり、罰と称して料理人の唾液入り巨大チョコケーキを食べさせ…懲罰房まで用意する徹底ぶりです。建物までが、マチルダや子供たちの心境を表しているように思えます。
それでも、子どもたちもマチルダも負けません(逆らえはしないようですが)。それは子供の強さを表しているようでした。マチルダとハニー先生の会話にも、子供の強さと柔軟性が垣間見えます。ハニー先生の「宝物」を取りに行った際強い風が吹いていましたが、マチルダは途中で目覚めたある力を使って「宝物」を奪還し、物語は佳境へ向かうのです。
親や教師は子供にとって一番身近な大人です。校長のメチャクチャぶりも、親の横暴ぶりも、すべて「嫌な大人の象徴」と見れば、なるほどね、と納得がいく気もします。古い映画ですし、「子供向けの映画じゃないの」と賛否両論あるかとは思いますが、象徴性という観点から見れば中々面白いかと思います。