剣客商売(大島やすいち)のネタバレ解説・考察まとめ

『剣客商売』とは、池波正太郎の名作を大島やすいちが完全劇画化したものである。年の離れたおはると共に暮らし、隠居生活をしている洒脱な老剣客・秋山小兵衛(あきやまこへい)。そして、剣客の世界を歩みだしたばかりの実直な息子・大治郎(だいじろう)。この父子が様々な事件を解決していく。華やかなりし江戸を舞台に、個性的な面々の活躍を描く傑作時代劇。

辻平右衛門(つじへいうえもん)

無外流宗家で小兵衛の師。本名は三沢千代太郎(みさわちよたろう)というが、宗家を継ぐために名を変えた。多くの素晴らしい剣客を育てたが、厳しい修行のため門下生が少なく、知る人ぞ知る道場であった。江戸に道場を構えていたが、急に京都・大原の里に旅立ちこもってしまう。道場は後を継ぐ者がいなかったため閉鎖した。

嶋岡礼蔵(しまおかれいぞう)

小兵衛の弟弟子(小兵衛より三つ年下)。大治郎にとって第二の師。剣術の腕は随一であり、小兵衛と双璧をなす腕前だ。小兵衛の最初の妻・お貞をめぐり勝負したことがあったが、小兵衛に敗れてしまう。辻平右衛門が大原の里に引きこもったとき、唯一ともに行くことを許され江戸を離れた。
柿本源七郎との果し合いをするために江戸に戻ってきたが、果し合いをする前に柿本の門人・伊藤三弥の不意を突かれた弓矢に倒れてしまう。

井関忠八郎(いぜきちゅうはちろう)

一刀流の名手で、三冬の師匠。人柄も良く、門下生には諸大名の家来や旗本の子弟も多くいた。田沼意次を介して小兵衛とも懇意にしていた。五十五歳で病死するが、その後門弟の間で後継者争いが起きる。最後には勝負に勝った三冬が道場を継ぐことになった。しかし、三冬は道場の存続を願う門弟の声を振り切って道場を閉めた。

金子孫十郎(かねこまごじゅうろう)

一刀流の名人で湯島五丁目に大道場を構えている。江戸の剣術会では重要な存在であり、多くの門弟を抱えている。秋山親子とも親交がある。井関道場の後継者争いのときは勝負の審判を務めた。

植村友之助(うえむらとものすけ)

かつて小兵衛が構えていた道場の門人。非常に有望な剣士であったが、彼岸流の手裏剣の名人でもある。たいへん有望な剣士であったが、厳しい修行と飲酒で大病を患い、剣の道から離れてしまう。弟に家督を譲り、小兵衛から貸し与えられた邸宅に住み、近所の子供たちに読み書きを教えて生活の糧にしている。
『命の畳針』では、侍三人に切られそうになっている為七(ためしち)を、持っていた畳張りを侍に投げて助けている。為七は今は植村の下男として一緒に暮らしている。

内山文太(うちやまぶんた)

辻平右衛門の門人。小兵衛の親友で、年齢は小兵衛より10歳年上だが、弟分の様に接していた。小兵衛とお貞の婚儀の仲人を務めている。娘が市ヶ谷御門外の茶問屋・井筒屋方に嫁ぎ、そこに引き取られて楽隠居の身を楽しんでいたが、ある出来事によって急激に呆けてしまい、間もなく亡くなる。その死は、小兵衛に衝撃を与え、しばらく陰鬱な日々が続いた。若い頃、弟の妻と不義を働き、清(せい)という女子をもうけており、清の子・お直(おなお)は、町医者の横山正元(よこやましょうげん)と結婚する。

柿本源七郎(かきもとげんしちろう)

辻平右衛門の道場を訪れた柿本源七郎は、嶋岡礼蔵に敗れてしまう。その後、十年が経ち、筑波山で再び礼蔵に挑むことになった。しかし、今度は引き分けに終わり、また十年後の再戦の約束をするものの、源七郎は心臓の病気にかかり、歩くことさえ難しくなっていた。そんな中、弟子の伊藤三弥が礼蔵を弓で殺害したという知らせが届き、源七郎は小兵衛と大治郎の前で自害する。

伊藤三弥(いとうみや)

柿本源七郎の弟子であり、色子(芸事や技術を習得する人)。彼は非常に優れた弓の腕前を持っている。
ある時、師匠である柿本源七郎と嶋岡礼蔵が果し合いをすることを知る。しかし、師匠が病気で歩くことも困難な状態だったため、藤三弥は礼蔵を襲撃することを決意し、大治郎の道場に滞在していた礼蔵を襲撃した。彼は礼蔵を弓で射殺したが、その場にいた大治郎に右腕を切り落とされてしまう。
その後、腹違いの兄である小雨坊(本名:伊藤郁太郎)と共に、秋山父子の命を狙い、鐘ヶ淵の隠宅を襲撃しました。しかし、小雨坊は小兵衛に斬られてしまい、その後、隠宅が再建された時に伊藤三弥は自殺した。

間宮孫七郎(まみやそんしちろう)

小兵衛の道場で代稽古を務めていた。その後、自分でも道場を立ち上げることにした。皆に尊敬される人柄と優れた指導力を評価され、小兵衛が道場を閉じる決断を下す際には、門下生の多くを任された。

柳喜十郎(やなぎきじゅうろう)

麻布・森元町で道場を構えている師範。身長は低く、優しげな表情をした優しい性格で、周囲の住民からは「全く剣術の先生とは見えない」と言われていた。しかし、道場を荒らしに来た剣客・大久保兵蔵との勝負をした際、距離感を巧みに支配し、完璧な勝利を治めた。それを見ていた小兵衛は「隠れた名人」だと評している。

波川周蔵(なみかわしゅうぞう)

『暗殺者』に登場した人物。浪人だが人品卑しからぬ体を持つ。元御目付衆・松平伊勢守(まつだいらいせのもり)の用人をしていた。父が病死した後、母に主人の手がついたことを知ってしまうが、二人に対する信頼で気持ちを抑え込んでいた。ある時、些細なことから人を斬ってしまい主の命で逃亡した。以来17年の月日が経ち、伊勢守から戻ってくるように言われたが、長い年月のうちに暗殺稼業に手を染めるようになってしまい、帰参が叶う身では無いと考えている。しかし、主人が求めたのは、まさにその人殺しの腕だった。

波切八郎(なにきりはちろう)

小野派一刀流の剣士として知られる人物。ある日、彼は御前試合で小兵衛と戦うことになる。真剣勝負を望み、両者は対戦を約束したがが、門人の水野新吾を斬ってしまったことで立ち会いの約束を果たすことができなかった。
その後、いくつかの困難を乗り越え、小兵衛との対決の機会を得た。その際に彼は利き腕を失い、姿を消してしまう。10数年後、彼は京都で偶然小兵衛と擦れ違う。

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