ガールズバンドクライ(ガルクラ)のネタバレ解説・考察まとめ

『ガールズバンドクライ』(GIRLS BAND CRY)とは、2024年の春に放送された東映アニメーション制作のTVアニメ。音楽に打ち込む少女たちの青春と葛藤を題材としており、本編は3D映像をアニメ処理して描かれている。神奈川県の川崎市が主な舞台となっており、実在の風景が多数登場する。作中に登場するバンド「トゲナシトゲアリ」は、実際にMVが作られて公開された。略称は「ガルクラ」。
高校を中退した井芹仁菜は、憧れていたミュージシャンの河原木桃香と出会い、仲間たちと共にバンド活動に打ち込んでいく。

CV:美怜

トゲナシトゲアリのドラマー。17歳。名女優として知られる祖母の希望で芸能スクールに通っているが、内心では音楽により強い興味を抱いていた。仁菜たちとの交流を経て、女優としての道を捨ててガールズバンドの一員としての道を選ぶ。
メンバーの中では比較的世間慣れしていて、対人能力が高い。その如才の無さを仁菜から「上から目線で気遣われている」と反発の対象とされるが、自身も仁菜の「自分のやりたいことしか考えていない」態度に辟易としており、たびたび衝突した。

海老塚智(えびづか とも)

CV:凪都

トゲナシトゲアリのキーボード担当。16歳。仁菜たちがたびたび訪れていた牛丼屋でバイトしており、彼女たちのバンド活動に注目。物語の途中で合流する。ルパとはバンド仲間にしてバイト仲間であり、同時にルームメイトである。
冷淡でシニカル、自分にも他人にも厳しい性格。それが高じて今まで何度もバンド仲間とケンカ別れしたことがある。仁菜の「自分が正しいと思うことしかしたくない、それを間違っているという者たちに負けたくない」という姿勢に呆れる一方、その強烈な反骨心が生み出す彼女の歌声のことを気に入っている。

ルパ

CV:朱李

トゲナシトゲアリのベース。22歳。南アジア人の父と日本人の母を持つ、褐色の肌の少女。車の運転が得意。
メンバー中最年長ということもあって物腰が落ち着いており、それぞれに個性的で周囲との揉め事が絶えない仲間たちのフォローに回ることが多い。詳細は不明だが家族と死に別れており、「両親には会いたくない」と言い張る仁菜を説得して熊本に帰るよう諭した。

ダイヤモンドダスト

若手の中でもトップクラスの人気があるガールズバンド。インディーズの頃から高く評価されており、高校に通っていた頃の仁菜は友人だったヒナと一緒によくこのバンドの曲を聴いていた。略称は「ダイダス」。
プロデビュー後、会社から「売れるための工作」として路線変更を命じられ、これを受け入れられなかった桃香が脱退。この穴を埋めるため、上京してオーディションを受けたヒナを新たなボーカルとして再スタートした。

ヒナ

CV:近藤玲奈

ダイヤモンドダストの新ボーカル。熊本出身の17歳。高校に通っていた頃の仁菜にとっては、共に「ダイヤモンドダストの魅力」について毎日のように語らう友人でもあった。
仁菜の「自分が正しいと思ったことを何が何でも貫く」という姿勢に「自分から貧乏クジを引いている」と呆れる一方で、「自分にはできない」と憧れてもいる。

『ガールズバンドクライ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

仁菜「一緒に中指立ててください!」

桃香が音楽を辞めるつもりだと知った仁菜は、慌てて彼女を追って街へと飛び出し、路上ライブに乱入。「自分に“何かに負けたくない”という勇気を与えてくれたのは桃香さんだ、そのあなたに何かに負けてほしくない」と理屈にもなっていない剥き出しの願いを叫ぶと、「一緒に中指立ててください!」と絶叫する。
“中指を立てる”というゼスチャーは、欧米では“くたばれ”を意味する下劣なものだとされている。物語当初はその意味を知らなかった仁菜だが、桃香からそうだと教えてもらった上で、「私が正しいと思ったことに、“お前は間違っている”と言ってくる全てに対して一緒に戦ってほしい」との思いを込めてこの言葉を口にしている。仁菜のこの言葉は、作品を貫くロックな精神を端的に表している。

仁菜「愛の告白です」

「プロデビューすれば自由に曲を作ってはいられない時も来る。かつてそれを受け入れられずに仲間を裏切った自分にプロになる資格は無いし、また同じことを繰り返さないとも限らない」。そんな理由でトゲナシトゲアリの脱退を決意する桃香だったが、「桃香さんが作った歌しか歌いたくない」という仁菜の言葉を受け、「桃香がいつかプロとしてこの世界に戻り、私たちと同じ場所に来てくれるのを待っている」というかつての仲間たちの想いを知って、ついに翻意。“誰にも指図されずに自分の作りたい音楽を作る”ことをあくまで貫きつつ、トゲナシトゲアリの面々と共にプロを目指す決意をする。
そんな桃香に、仁菜は「桃香さんの作る歌が好き」と告げて、この意味が分かるかと問う。戸惑う桃香に仁菜が伝えたのは、「愛の告白です」という言葉だった。

この場合の「愛の告白」というのは恋愛的なものではなく、「あなたの“自分の好きな曲しか作りたくない、歌いたくない”という理想が私は大好きだ」という意味である。自分の理想をどこまでも信じ、共に歩み続けることを力強く宣言する仁菜に、桃香は感謝の言葉を返すこともできずにただ歓喜の涙を溢れさせるのだった。

仁菜の父「いい曲だな」

イジメ問題を機にこじれにこじれた仁菜と両親の溝は、彼女が音楽で食べていくことを決意してからも埋まらないままだった。桃香やルパに諭され、両親に大学進学をやめる旨を報告しに熊本に戻った仁菜は、両親との間に生じた溝を埋めることもできないまま再び故郷を発とうとする。
しかしその直前、父が自室でトゲナシトゲアリの曲を聴いていることに気づき、「あれだけ突き放した父さんが、私のことを何も分かってくれないと思っていた人が、私の歌を聴いている」と驚く。仁菜に曲を聴いていることを気づかれたと察した彼女の父は「いい曲だな」と語り、自分にはまったく理解できない未知へと進もうとしている娘に静かなエールを送る。

仁菜が高校時代に巻き込まれたイジメ問題が完全に解決したわけでもなく、彼女と両親の間の溝がすっかり解消したわけでもない。それでも、娘に対して一生懸命歩み寄ろうとした不器用な父の姿は、仁菜の心にも大きな勇気を与えるものとなった。

『ガールズバンドクライ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

脚本家も持て余した仁菜の「正論大魔王」っぷり

「自分が“正しい”と感じたことは何が何でも絶対に譲りたくない」という仁菜の性格は、物語の根幹を成す重要なものであると同時に、製作スタッフにとっても難儀なものだった。作中でも「正論大魔王」と揶揄される仁菜のこの気質は、脚本を大きく引っ掻き回し、印象的で感動的な物語を生み出す一方で予定していたエピソードのいくつかを省略する要因ともなった。
トゲナシトゲアリのメンバーの中で、ルパにだけ個別のエピソードが無いのは、これが大きな理由となっている。

『ガールズバンドクライ』の主題歌・挿入歌

OP(オープニング):トゲナシトゲアリ「雑踏、僕らの街」

BOTAnNABE
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