ガールズバンドクライ(ガルクラ)のネタバレ解説・考察まとめ

『ガールズバンドクライ』(GIRLS BAND CRY)とは、2024年の春に放送された東映アニメーション制作のTVアニメ。音楽に打ち込む少女たちの青春と葛藤を題材としており、本編は3D映像をアニメ処理して描かれている。神奈川県の川崎市が主な舞台となっており、実在の風景が多数登場する。作中に登場するバンド「トゲナシトゲアリ」は、実際にMVが作られて公開された。略称は「ガルクラ」。
高校を中退した井芹仁菜は、憧れていたミュージシャンの河原木桃香と出会い、仲間たちと共にバンド活動に打ち込んでいく。

『ガールズバンドクライ』の概要

『ガールズバンドクライ』(GIRLS BAND CRY)とは、2024年の春に放送された東映アニメーション制作のTVアニメ。略称は「ガルクラ」。
音楽に打ち込む少女たちの青春と葛藤を題材としており、本編は3D映像をアニメ処理して描かれている。

神奈川県の川崎市が主な舞台となっており、実在の風景が多数登場する。同時期に放送されたTVアニメの中でも特に評価が高く、物語後半は放送されるたびにX(旧Twitter)のトレンドで1位になるほどの話題作となった。
作中に登場するバンド「トゲナシトゲアリ」は、実際にガールズバンドとしても活動しており、放送中に公開されたMVは登録者数10万人、総再生回数3200万回を超える反響を得た。

イジメにより高校での居場所を失った井芹仁菜(いせり にな)は、学校を中退して上京。そこで憧れていたミュージシャンの河原木桃香(かわらぎ ももか)と出会い、彼女に魅せられるようにしてバンド活動にのめり込んでいく。
安和すばる(あわ すばる)、海老塚智(えびづか とも)、ルパといった東京で出会った仲間たちと共にバンド「トゲナシトゲアリ」を結成する仁菜だったが、桃香がかつて所属していたバンド「ダイヤモンドダスト」との対峙、両親との軋轢、プロとしての試練など、彼女たちの前には次々と新たな問題が立ちはだかっていく。

『ガールズバンドクライ』のあらすじ・ストーリー

仁菜と桃香の出会い

イジメにより高校での居場所を失った井芹仁菜(いせり にな)は、学校を中退して上京。高卒の資格を取って大学に入るという条件で一人暮らしを始める。
しかし、実は仁菜には「ずっと憧れていた人気のガールズバンド・ダイヤモンドダストに会ってみたい」という隠れた目的があった。上京したその日の内に、仁菜はダイヤモンドダストのボーカルを務める河原木桃香(かわらぎ ももか)という女性ミュージシャンと出会う。

有頂天になる仁菜だったが、その桃香は「引退して故郷に帰る」ことを決断したばかりの状態だった。プロデビューを果たしたダイヤモンドダストは、売れるために流行に迎合した曲作りや望まぬキャラ作りを強いられ、桃香は「自由に歌うことができないなら、音楽を続ける意味がない」と脱退。1人で歌い続けることにも限界を感じ、音楽そのものをやめようとしていたのだった。
イジメに苦しむ中で桃香の曲から生きる勇気をもらった仁菜は、そんな彼女の決断を受け入れられず、「音楽をやめないでほしい、“間違っているのはお前だ”と勝手な理屈を押し付けてくる連中に負けないでほしい」と懸命に訴える。その願いと想いを込めた歌声は、桃香の心を動かし、引退を翻意させる。こうして仁菜は桃香と友人にしてバンド仲間となり、本格的に音楽活動に打ち込み始めるのだった。

トゲナシトゲアリの結成

バンド活動を始めるにあたり、桃香は安和すばる(あわ すばる)というドラマーを仁菜に紹介する。すばるは仁菜と同い年で、名女優として知られる祖母に頼まれるまま芸能スクールに通っていた。このまま女優の道を進むか、音楽の道を進むかで悩むすばるだったが、仁菜たちとの交流の中で「自分が本当にやりたいと思うことをやってみたい」と考えるようになり、バンドに専念していく。
新興のバンドとして少しずつ実績を重ねていく中、仁菜は“桃香が抜けた後のダイヤモンドダスト”に旧友のヒナが参加していることを知る。仁菜はかつてイジメを巡ってヒナと対立したことがあり、「絶対に自分の方が正しいのに、ヒナも両親も教師たちも“自分たちの方が正しい”と言わんばかりによってたかって私を責めた」という強いトラウマを抱えたままとなっていた。

このトラウマに加えて、憧れていたダイヤモンドダストの新メンバーにヒナが収まったことに仁菜は強く反発する。彼女がよりバンド活動に本腰を入れていく中、行きつけの牛丼屋で働く海老塚智(えびづか とも)とルパという少女たちが「一緒にバンドをやらないか」と話しかけてくる。
実は智とルパもバンド活動をしており、ずっと仲間を探していて、客としてやってきた仁菜たちのことをこっそり注目していたのだった。智とルパを加えて5人体制となった仁菜たちのバンドは、「トゲナシトゲアリ」という名前で活動を開始。しかしそんな中、桃香が脱退を宣言する。

桃香の脱退の真相

桃香の突然の引退宣言に対してすばるは戸惑い、智は「バンドにメンバーの入れ替えは付き物」と受け入れ、ルパは「理由くらいは説明してほしい」と中立の立場を取るなど、メンバーの反応はそれぞれだった。仁菜は特に強く反発し、「バンドも軌道に乗り始めたのに、プロになることも夢ではなくなったのに、どうして今抜けるのか」と正面から桃香に問いただす。
これに対し、桃香は「プロ入りが見えてきたからこそ抜けたい」のだと返答。かつて桃香は、高校時代の親友たちとダイヤモンドダストを結成し、自由気ままに音楽を楽しんでいた。この関係と自分たちの友情は永遠に続くと信じていた桃香だったが、プロデビューした後に曲作りやキャラ作りなどでの「売れるための工作」を会社から命じられた際に、「これからもダイヤモンドダストが、自分たちが一緒にやっていくために今は我慢しよう」と懇願する仲間たちを振り切って脱退。「“ずっと一緒にやっていこう”と自分が集めた仲間たちを、今も売れるために我慢して会社の指示に従っている親友たちを、一時の感情で裏切ってしまった」との後悔を抱えていた。

自分たちがプロになれば、同様の工作の話は必ず持ち込まれる。その時にまた今の仲間を裏切るくらいなら、今の時点で自分は消えるべきだ。それが桃香がトゲナシトゲアリを脱退しようと考えた理由だった。
しかし仁菜は、「桃香さんは何も間違っていない。あなたが本当にやりたいと思って作ったプロデビュー前の曲こそが、家にも学校にも居場所の無かった自分を救ってくれた」と主張。売れるための工作をして己を曲げるのではなく、桃香のやりたい音楽を最後まで貫いていこうと訴える。

桃香が「裏切ってしまった」と考えていたかつての仲間たちもまた、彼女が音楽を続けることを望んでいた。彼女たちが「同じバンドでなくても、いつか桃香は自分の音楽を貫くためにプロの世界に、自分たちがいる場所に戻ってくる」と信じてダイヤモンドダストとしての活動を続けていることを知った桃香は、脱退を撤回し、仁菜たちの下へと戻っていった。

両親との和解

本格的にプロを目指すことを決めた仁菜は、退路を断つために親からの仕送りを断り、バイトで生活費を工面するようになる。そんな彼女を心配して両親が上京してくるが、仁菜は「会いたくない」と逃げ隠れることを繰り返す。これを見たトゲナシトゲアリの面々は、「これからバンド一本でやっていくつもりなら、それをちゃんと報告するべきだ」と仁菜に勧め、故郷に戻ってきちんと話してくるよう助言する。
渋々故郷の熊本県に戻った仁菜は、気の進まないまま実家に向かい、「大学には行かない、バンドで食べていく」と宣言。両親からは「そんなにうまくいくと思うのか、だからお前はまだ子供なんだ」と呆れられ、「私のやりたいことを頭から否定するな、だから来たくなかったんだ」と強く反発する。

仁菜のイジメ問題は両親も心を痛めており、その解決のために動いてはいた。しかしそれは娘の仁菜よりも学校での評価や世間体を守ろうとする形のもので、これが彼女が高校を中退して家を飛び出す大きな原因となっていた。仁菜が去った後に改めて自分たちの過ちに気づいた父と母は、改めて娘のイジメ問題に取り組み、これに一定の決着をつけていた。
両親がイジメの件で反省してくれていたこと、今も自分を心配してくれていることを知って心動かされる仁菜だったが、それでも「バンドで食べていきたい」という部分では相容れず、落胆したまま仲間たちの下へと戻る。しかしその直前、父がトゲナシトゲアリの曲を聴いていることを知り、「理解されなくても、良い顔をされなくても、それでも父と母は自分のことを見守ってくれているのだ」と気づく。心配そうに、それでも自分を見送る両親に、仁菜は「行ってきます」と言葉を伝えて故郷を発つのだった。

プロデビューと対バンライブ

ライブを重ね、大きなフェスでも結果を出したトゲナシトゲアリは、ついにプロデビューを果たす。ここで桃香の「元ダイヤモンドダストのメンバー」という経歴が注目され、現在のダイヤモンドダストとの対バンが企画される。
桃香たちは「現在の知名度や人気から考えて、トゲナシトゲアリに勝ち目はない。ダイヤモンドダストの踏み台にされるだけだ」と冷静に判断するが、仁菜は「“必ず勝てる”と思って挑んでくるような連中に負けたくない、ヒナにだけは“私が間違っていた”と言いたくない」と対バンを受けることを提案。この意見を受け入れ、“自分たちの音楽を貫く”ために、トゲナシトゲアリは人気絶頂のダイヤモンドダストとの対バンに臨む。

会心の新曲を作り上げ、対バンへの準備を整える仁菜たちだったが、公開したMVは再生数が伸びずに苦戦。ライブのチケットも多くが売れ残り、「このままでは対バンの大敗は必至で、バンドのイメージにも大いに悪影響が出る」というところまで追い詰められる。仁菜はヒナに呼び出され、「“自分が間違っていた”と認めるなら助け船を出してあげる」と提案されるが、「ヒナにだけは負けたくない」とこれを一蹴する。
ダイヤモンドダストからの助け船の話は、トゲナシトゲアリの所属する芸能事務所にも届いており、今後のためにこれを受け入れることを勧められる。しかし仁菜たちは、「誰かや何かに迎合するくらいなら、自分たちの音楽を貫きたい」との想いから事務所側の提案を断り、そのけじめとして事務所を抜けることを決断する。

その後も地道な活動を続けて対バン当日を迎えるトゲナシトゲアリだったが、結局チケットは完売せず、「ダイヤモンドダストへの完敗」というイメージを世間に強く植え付けることとなった。それでもアマチュアからまたやり直していこうと気合いを入れる仁菜だったが、ヒナが楽屋に自分に向けた落書きを残しているのに気づいて憤慨する。
そんな彼女を見て、桃香は「ヒナという子は、仁菜に“折れずに頑張ってほしい”と思っているのではないか」と語る。周囲に迎合せず、正しいと思った道をひたすらに突き進む仁菜を、ヒナは内心では羨ましく思っている。だからこそ音楽というジャンルで自分たちの道が再び交わったことに驚きつつ、彼女を試すようなことを繰り返しているのではないかというのだ。

釈然としない仁菜だったが、対バンのステージに立つ中で、ヒナもまたダイヤモンドダストの大ファンだったことを思い出す。そのダイヤモンドダストが桃香を失って変節してしまったこと、初期メンバーたちが今も桃香の帰還を信じて活動を続けていること、その桃香を自分が音楽の世界に連れ戻してやりたいように音楽を続けていることをヒナがどう思っているのかにふと想いを馳せつつ、仁菜はプロとしての“とりあえずの最後のライブ”を開始する。
そんな仁菜の姿を、客席に混じったヒナがこっそりと見詰めていた。その顔には「自分が本当に欲しかったものを手に入れた相手に対する羨望」と、「正しいと思ったものを貫くために過酷な道を歩むことを決めた旧友に対するエール」が同時に浮かんでいたのだった。

『ガールズバンドクライ』の登場人物・キャラクター

トゲナシトゲアリ

仁菜たちによる5人組バンド。仁菜・桃香・すばるが組んだ「新川崎(仮)」と、智・ルパが組んだ「beni-shouga」が合体する形で結成された。
名称はメンバーの中でもなかなか決まらなかったが、バンド結成後の初ライブで観客のTシャツを見た仁菜が即興で「トゲナシトゲアリ」の名を考案し、これがそのまま採用された。

井芹仁菜(いせり にな)

CV:理名

本作の主人公。17歳。「トゲナシトゲアリ」ではボーカルを務める。
イジメ問題によって両親を含む周囲と激しく衝突し、「自分は間違っていないのに、“お前にも非がある”かのように言われるのは真っ平だ」との思いから高校を中退。上京した先で憧れていたガールズバンド「ダイヤモンドダスト」のボーカル桃香と出会い、彼女と共に音楽活動にのめり込んでいく。

大胆なようで繊細。気弱にして頑固。自分が「正しい」と感じたことは絶対に譲らない強硬なほどの意志の強さを持ち、それが原因でたびたび揉め事を起こす。一方でその心の強さは仲間たちを力強く牽引し、「トゲナシトゲアリ」の方向性を決める大きな要因ともなっている。
桃香の影響で、気に入らない相手には小指を立てて不満を示すようになった。

河原木桃香(かわらぎ ももか)

CV:夕莉

トゲナシトゲアリのギター&作曲担当。20歳。かつてはダイヤモンドダストのボーカル&ギターを務めていたが、プロデビュー後に事務所から命じられた「売れるための工作」を受け入れられず、脱退した。
ダイヤモンドダストの初期メンバーとは高校の頃からの親友で、結果として彼女たちを裏切ったことを内心では大いに悔やんでおり、これを理由に音楽の道を断念しようとまでしていた。仁菜に出会い、彼女と共にもう1度本気で音楽に向き合っていく。

安和すばる(あわ すばる)

BOTAnNABE
BOTAnNABE
@BOTAnNABE

目次 - Contents