魔女の執行人(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『魔女の執行人』とは、『少年ジャンプ+』で連載されている紅木春のファンタジー漫画である。作者の紅木春は、美大を卒業後フリーのイラストレーターとしても幅広く活動している。この作品は、150年前に月から来た魔女たちがもたらした技術と魔法によって文明が発展した世界を舞台にしている。法を犯した魔女を裁く執行人である魔女ナターリアと、呪いを受けた少年エリオットの出会い、および彼らの冒険を描いている。独特の世界観と、魔女と人間との複雑な関係性の設定も本作の魅力の1つである。

『魔女の執行人』の概要

『魔女の執行人』とは、『少年ジャンプ+』で連載されている紅木春のファンタジー漫画である。作者の紅木春は、美大を卒業後フリーのイラストレーターとしても幅広く活動中している。
150年前に月から魔女がやってきた世界を舞台とし、人と魔女が共生する中、法を犯した魔女を裁く「魔女の執行人」の活躍を描いている。
本作品は、人と魔女の共生関係や法を守るべく戦う「魔女の執行人」の活躍を通して、人間社会の秩序と正義について描かれているのが特徴である。また、魔女の持つ独特の能力や、彼女らの文化的背景がどう描かれるかにも注目が集まる。読者は、特殊な世界観で展開されるこの物語に引き込まれていく。
本作品の魅力は、人間社会と魔女社会の複雑な関係性を丁寧に描いていることにある。法を犯した魔女を裁く「執行人」の存在は、人と魔女の共生を維持するための重要な役割を果たしている。一方で、魔女の持つ強大な力と技術により、この国の文明は大きく発展したことも見逃せない。
本作品は、人間と魔女の共生をテーマに、法と正義、秩序と自由といった問題を深く掘り下げている。これらのテーマは、現代社会においても重要な問題であり、読者に考えさせる機会を提供している。略称は特に付いていない。本作品を語る上で重要なキーワードは、「魔女」「法」「正義」「共生」などが挙げられる。

『魔女の執行人』のあらすじ・ストーリー

月からやってくる魔女ナターリア

魔女ナインによって呪いをかけられたエリオット(右)を魔女ナターリア(左)が助ける場面

月には魔女たちが住んでいて、地球にやってくるのが普通となっている世界。最初の魔女ミランダの来訪から150年経ち、人類が住む地球は魔女によって特に医療や通信技術で大きな発展をしていた。一方で、魔女たちとの間でトラブルが後を絶たないのも事実であったのだ。
魔女ナターリアと彼女に拾われた少年エリオットは半年前から共同生活をしていた。エリオットは魔女ナインに呪いをかけられ、その呪いをナターリアが抑えてくれた。だが呪いは徐々に進行していき、かけた本人でなければ解くことはできない。ナターリアはそのかけた者を追っていると言い、エリオットに協力を求めてきたのだ。エリオットはナターリアに助手兼雑用としてこき使われ、もといお手伝いをする日々が続いている。

そんなところへ、政府直々の黒封筒を持った老紳士がやってくる。執行人であるナターリアに依頼をしたいという。依頼の内容は子供達の集団失踪事件だった。ナターリアが作った魔法具の犬の力を使い、辿って行った先には遊園地があった。エリオットはピエロに歓迎され、何もかも忘れて楽しく過ごそうとすると、ナターリアの魔法具スカンクー3世の臭いにおいで現実に帰る。ナターリアによると幻覚がかけられているらしい。
わらわらと出てきた着ぐるみたちをナターリアが魔法で燃やそうとすると、この事件の張本人である魔女ドロシーが出てくる。その場には子供達もいて、幻覚の影響で休むことなく遊び続けているため体力の限界だ。ナターリアは、呪いがかけられているエリオットの目で、魔法の源である「ハート」を探させる。ピエロの像の持つ王冠がハートと分かり、ナターリアが魔法で撃ち壊す。すると、ドロシーの過去がナターリアやエリオットの脳内に流れ込んでくる。もともと遊園地の客であったドロシーは、故郷の魔女の国で失った笑顔を遊園地で取り戻し、それからずっと遊園地と共に生きてきた。遊園地の者がドロシーに後を託したが、月日が経ち遊園地は廃れ、誰も来なくなった。ドロシーはなんとかしようと、子供達を攫ってきたのだ。魔女の国の魔女法を破ったことにはかわりない。ナターリアは執行魔法「誓約の門・満月」によってドロシーを魔女の国へ強制送還する。

どうにか遊園地を残して欲しいというドロシーの願いを受け、ナターリアは遊園地を丸ごと買い上げ圧縮魔法を使い、遊園地のものをおもちゃに変えた。おもちゃを孤児院に寄付し、孤児院の子供達が喜んでいる姿を魔女の国にいるドロシーにも見せ、慰めとした。

魔女ナインとナターリアとの関わり

いつものように魔法具製作の作業に勤しむナターリアは、必要とする素材を切らしていることに気づいた。
エリオットを伴って月にしかない素材や魔法具が手に入る店の「魔女の隠れ家」へとやってくる。仕入れは魔女の担当だが、店自体は人間が運営していた。合言葉の認証をして中へ入ると、店員の男が傷つき倒れている。奥では、顔だけ人間でそれ以外が鳥の姿になった店員の妻がいた。ナターリアは店員に、これは古くからある魔法「使い魔の契約」で、魔力と能力の付与に失敗したため契約生物と呼ばれる怪物になってしまったのだと説明した。ナターリアは変わってしまった店員の妻をひとまず月へ連れていくことにする。

ナターリアが戻るまで、エリオットたちは休んで待つことになる。店員に付き添うエリオットは「1人にして欲しい」という彼の願いを聞き、中庭へと出て1人で休むことにした。
そこへ魔女ナインが現れる。以前されたことへの恐怖でエリオットが動けないでいると、ナターリアが現れ、ナインに魔法をかけて拘束した。拘束されたナインに、エリオットが目的はなんだと聞く。ナインは自分の幸せのために行動していると言う。ナインは「心から愛してくれる本当の友達を探している」が故に、繋がりを求めて「使い魔の契約」を使っているのだ。「月へ連れていく」と言ったナターリアに対し、ナインは近くにあった石で石像を作り出し対抗する。通常ならば杖が必要なところ、ナインは杖を使わずとも魔法が使えるため、ナターリアは一手遅れてしまう。ナターリアの取った手は、自身の作った魔法具を一挙に解放することだった。大量の魔法具を相手にし、やりづらいナインだったが、致命的な弱点の本体であるナターリアを狙ってくる。ナターリアはナインと視界が繋がっているエリオットに視野転換(コンヴァート)を唱えさせ、ナインの視界を一時的に奪わせた。そこへナターリアが魔法具を使い、一気にナインへと畳み掛ける。やったかと思われたが、ナインは石像を盾に直撃を避けていた。ナインはこれ以上やったらエリオットが壊れてしまうと判断し、「また遊んでね」と翼を生やして飛び去る。

ナインは、200年前に人間界と魔女の国との交流が始まるきっかけを作った「魔女ミランダ」の生んだ、天才と呼ばれる魔女だった。ミランダはナターリアの大の親友であった。ナインの感情が乏しいのを心配したミランダが実験によって感情を取り戻そうとする。だが、ミランダの行動が魔女の国にとって良くないと考えた後輩が裏切り、実験は失敗してしまい、暴走したナインがミランダを殺してしまったのだった。
すぐにナインは捕えられたが、日に日に魔力が増大するのを魔女の国でも持て余してしまい、人間界へと行くのを許してしまう。死にゆくミランダにナインのことを託され、討伐隊に志願したナターリア。これこそがナターリアが人間界にやってきた理由であった。

ビスショットの参入

ナターリアとエリオットの元に、魔女ビスショットがやってきて、ナインのことに協力するという。今までナインは捕獲対象だったが、討伐対象へと格上げされていた。近年、月での研究で魔女ミランダが発見した魔女の体内にあるもう1つの魔力「呪枷魔力」。これを増大させる魔法薬を、ビスショットの転移魔法でナインに撃ち込むという作戦を立てる。呪枷魔力は、魔女の本能と魔力を抑える力があるのでナインを弱体化できるのだ。ビスショットは魔女ミランダから恩を受けており、ミランダやその他大勢の者を殺めてきたナインを許せず、執行人特殊部隊掃除人(クリーナー)にまで入ってナインを殺すつもりだったが、そのことは関係者以外秘密にしていた。
その夜ナターリアは、ミランダの夢を見て深夜に起きる。エリオットがミルクティーを手にやってきて話をした。エリオットは、ナインの暴走が止まることは望んでいるが、討伐されることは結果として、ミランダとの約束が果たせなくなるのではとナターリアが恐れていることを知る。

ミュルジー万国博覧会

ナインが人間界と月との交流150周年を祝うイべント・ミュルジー万国博覧会に、強い興味を持っていることがビスショットの調査で分かった。イベントでは、魔女たちによる新型魔法具の展示や公開オークションが開催される。ナターリアが言うには、珍しい魔法が見れるとあればナインは必ず来るだろうという。

2ヶ月後ミュルジー万国博覧会は開催され、執行人の魔女ミストリージュとストックライダも増援として加わる。どちらも月で長年ナインを拘束し続けてきたベテラン中のベテランだ。作戦はナターリアが魔法具でナインの注意を引き、増援に来た2人が拘束魔法を発動する。ビスショットが魔法薬をナインの体内に打ち込む。その間会場内の人たちを待機中の執行人とエリオットで避難誘導し、弱体化したナインをナターリアとビスショット、ミストリージュとストックライダで総攻撃するのだ。

警戒する中、ミストリージュとストックライダを探しに行ったビスショットは、2人がナインによって殺されている現場に居合わせる。命からがらビスショットはナインを撒くことに成功する。ナインはオークション会場へと足を運び、ナターリアの魔法具によって見せられていた母の幻覚に釘づになっいた。なんとか追いついたビスショットはナインの体内に魔法薬を打ち込んだ。それでも力を振るうナインが暴れ出す。ナインの攻撃を受けたエリオットは痛みの中強く繋がったナインの心の中を見て、彼女の中に素直なナインと欲望に忠実なナインの2つの人格があることが分かった。ナターリアの協力を得て、限界まで怪物化を進めてナインとの繋がりを強め、ナインの心の中へと入り素直なナインと対峙した。素直なナインは「外へ出ても理解されず、何もいいことはない」と外へ出ることを拒む。エリオットは「人間でさえも、相手のことがわからないのは当たり前で、それでも一緒に手を取り合うことはできる」と諭す。続けてエリオットは「魔女ミランダだってありのままの君で生きて欲しいと望んでる…!!」と畳み掛ける。ナインは、母であるミランダが「私のもとに生まれてきてくれてありがとう」と言っていた言葉を思い出す。素直なナインは外へと出て、欲望に忠実なナインと対決し、魔法薬の効果もあり欲望に忠実なナインを消滅させることができた。ナインはエリオットとの契約も解除する。ビスショットがナインを始末しようとしたその時、ナターリアが執行人の法のもとにナインを魔女裁判として提訴する。これによって、判決が下るまではその間の安全が保障されるのだ。

魔女裁判とその後

ナインに対する魔女裁判が始まった。
ビスショットは被告人ナインの勾留中の管理者として、魔女を殺し人間も多く殺めたナインの罪は重いと出廷し主張する。
次にナターリアの番だったが自分は代理人にすぎないと言い、エリオットへ主張の順番を譲った。エリオットは被害者で、その正当な要求は魔女の国でも一考の価値があり、人間でもあったので要求を跳ね返せば人間界との交流関係に大きな影響を及ぼす。エリオットは、被告人ナインの討伐対象の取り下げと、彼女に新たな研究責務を求めた。研究とは使い魔の呪いで後遺症を患った人たちのための治療法の研究だ。裁判官は「研究はすでに進めており、あと数十年もすればそれなりの治療法は確立するだろう」と言う。エリオットは「人間にとって数十年という月日は甚大な損失です」と訴える。さらにナターリアは魔女の中には抑えられた本能があり、誰しも暴走する危険性を持つので、それを克服したナインは貴重な存在であることを主張する。
ビスショットは、ナインにとって今後生き続けるということは常に罪の意識を背負いながら暮らすということ、それは討伐よりもずっと苦しい道かもしれないと思い当たる。そして、取り下げではなく、「監視監禁のもと研究に従事する限りという条件下での討伐の無期限停止」を提案した。
これをエリオットも認め、裁判官たちの多数の賛成も得た。こうして、ビスショットの提案通りの判決が下ったのだった。

魔女の国の機密を知りすぎたとして、エリオットの記憶はナターリアの手によって消される。代わりの者モノシスの手によってエリオットは回復していった。エリオットが回復するとモノシスは去っていく。
成長したエリオットは小さな出版社に勤める傍ら新人小説家として活動していた。

ある日、本棚を整理していたところ日記を見つけ、それまでのナターリアとの日々を思い出す。記憶はナターリアの配慮で完全には消されず、きっかけがあれば蘇るようにされていた。傷つき、悩みを伴うものだったけれどエリオットにとっては痛みだけにとどまらない大切な記憶だ。エリオットは、もう会うことはできないナターリアへ伝えるため、その思いを小説に込めた。
45年後、ナターリアはその小説を読み、ファンレターという形で思いを伝えることにした。
小説の最後にはこう書かれてある。
「僕はあなたに出会えてよかった」

こうしてナターリアとエリオットの物語は幕を閉じたのだった。

『魔女の執行人』の登場人物・キャラクター

主要人物

ナターリア

魔法具をいじっているナターリア。

月から来た魔女の1人。魔法具研究の天才と呼ばれていた。長髪にほくろが特徴でぶっきらぼうな性格。普段はダラダラした生活を送っていて、役に立つのかわからない魔法具を作っている。エリオットには「ナタさん」と呼ばれている。
ナターリアは、魔女の中から選ばれた「執行人」である。執行人の役割は、悪質な魔女を裁くこと。ある日、見知らぬ魔女に呪いをかけられた少年と出会い、ナターリアの生活は大きく変化していく。呪いをかけられた少年と生活していくうちに、ナターリアは自身の信念や価値観について深く考えるようになる。魔女と人間が共存する世界で、ナターリアは自身の役割と向き合い始める。

エリオット

料理をしているエリオット。

ナターリアの助手兼雑用をしているしっかり者の少年。呪いをかけられていて、背中に小さな翼が生え、右目に眼帯をしているのが特徴。ナターリアからは「エリー」と呼ばれている。
エリオットは、呪いに苦しみながらも、自身の力を信じ、前に進もうとする強い意志を持っている。ナターリアとともに、魔女と人間が共存する世界の中で、自身の存在意義を見出しながら魔女にまつわる真実である呪枷魔力等を探っていく。

重要な魔女

ナイン

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