哲也~雀聖と呼ばれた男~とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『哲也~雀聖と呼ばれた男~』(てつや じゃんせいとよばれたおとこ)とは、 原作:さいふうめい、作画:星野泰視による漫画。戦後間もない頃の日本を舞台にした賭け麻雀の世界と、その中で生きる玄人たちの姿を描いている。主人公と同じ名前で麻雀の修行と取材をしていた小説家の色川武大をモデルとしている。
戦時中に博奕を覚えた阿佐田哲也は、戦後仕事も無い中で賭け麻雀を生業とする玄人の世界に魅せられ、そこに飛び込む。天性の豪運と流れを読む力に長けた哲也は、やがて「雀聖」として玄人たちの間で恐れられていく。

『哲也~雀聖と呼ばれた男~』の概要

『哲也~雀聖と呼ばれた男~』(てつや じゃんせいとよばれたおとこ)とは、 原作:さいふうめい、作画:星野泰視による漫画。
1997年から2005年にかけて『少年マガジン』で連載され、2000年には『勝負師伝説 哲也』(ギャンブラーでんせつ てつや)のタイトルでアニメ化を果たす。パチスロやパチンコの題材としても採用されており、連載終了後もファンに愛されている作品である。

戦後間もない頃の日本を舞台にした賭け麻雀の世界と、その中で生きる玄人(バイニン)たちの姿を描いている。
主人公と同じ「阿佐田哲也」(あさだ てつや)の名前で麻雀の修行と取材をしていた、小説家の色川武大(いろかわ たけひろ)をモデルとしている。このため本作の主人公としての阿佐田哲也も、黒シャツやナルコレプシーなど色川の逸話を元にした設定を持っている。

戦時中に博奕(ばくち)を覚えた阿佐田哲也は、戦後の仕事も無い時期に「賭け麻雀」の世界を知る。賭け麻雀を生業とする玄人(バイニン)の存在を知った哲也は、新宿随一の玄人と呼ばれる房州(ぼうしゅう)に弟子入りし、麻雀の打ち方を学んでいく。
やがて独り立ちした哲也は、持ち前の豪運と流れを読む技術で様々な玄人を相手に勝利を重ね、一人前の玄人となっていく。哲也の実力派玄人たちの間で話題となり、いつしか「雀聖」の異名と共に恐れられるようになっていくのだった。

『哲也~雀聖と呼ばれた男~』のあらすじ・ストーリー

麻雀との出会い

対局する哲也(左)と印南(右)。

戦時中に博奕(ばくち)を覚えた阿佐田哲也(あさだ てつや)は、戦後の混乱期に印南善一(いんなみ ぜんいち)という博奕打ちと知り合い、彼から「賭け事で儲けるなら麻雀がいい」と教えられる。まともな仕事もほとんどない中、哲也は「これこそ自分の生きる道だ」と感じて賭け麻雀を繰り返すようになる。
新宿を拠点に勝利を重ねる哲也だったが、ある時房州(ぼうしゅう)という男に大負けする。房州は賭け麻雀を生業とする玄人(バイニン)と呼ばれる人物で、その中でも屈指の猛者であり、麻雀の深さも怖さも知らない哲也に灸を据えたのだった。哲也は房州の力量に驚き、同時にその強さに惹かれ、彼に接触を続ける。

やがて房州は哲也の才能を認め、弟子として徹底的に鍛えていく。哲也は見る見る内に頭角を現し、彼と房州のコンビは「新宿最強の玄人コンビ」として広く名を知られるようになる。
しかし房州は、「自分の運が永遠に続くことなどありえない」とも考えており、いつか運に見放される時が来るとも考えていた。ある時ついに「運に見放された」ことを実感する房州だったが、哲也が1人で奮戦して2人の大敗を防ぐ。その後房州は哲也を一人前の玄人になったと認め、自身は引退。哲也は玄人として独り立ちを果たし、新宿界隈で活動するようになる。

「死神」との対決

玄人として活躍していた哲也の下に、ある時「ダンチ」こと早見たつを(はやみ たつを)が現れる。ダンチは若手の玄人であり、哲也の腕に惚れ込んで「オヒキ(麻雀を打つ時の相棒もしくは補佐役のこと)にしてほしい」と言って頭を下げる。
ダンチはノリの軽いお調子者でトラブルを起こすことも少なくなかったが、哲也も認めるほどの麻雀の腕と真っ直ぐな気質の持ち主だった。哲也はダンチをオヒキとして迎え入れ、拠点である新宿を中心に勝利を重ねていく。

そんな中、哲也は印南と再会。もともと結核で麻雀を打ち続ける体力のなかった印南は、苦痛から逃れるためにヒロポンという覚醒剤を常用しながら玄人として活動するようになっており、「死神」の異名で恐れられていた。かつてその実力を認め合った男の変わり果てた姿に驚いた哲也は、玄人としての印南に引導を渡す(ヒロポンをやめさせて療養に専念させる)べく麻雀勝負を挑む。
印南は死の淵の極限状態の中で、麻雀牌の裏面の模様を記憶して相手の手を読む力を手に入れていた。哲也は裏面の模様が見えない特別製の麻雀牌を用意してこれに対抗し、それでもなお「麻雀牌についた指紋」で相手の手を読もうとする印南相手に玄人ならではのイカサマ技で勝利する。印南は敗北を認めるも「玄人はやめない、いつかまた勝負しよう」と嘯いて哲也の前から去るも、病の進行によって函館にて息を引き取る。

房州の最期

印南との苦い別れを経て、哲也はさらに玄人として場数を踏んでいく。そんな中、ダンチと共に千葉に向かった哲也は、ひょんなことからここで隠居していた房州と再会。久々に彼と麻雀を打つこととなる。
房州は「わざと相手の配牌に“良い手”を仕込む」という手法で哲也とダンチの打ち筋を誘導し、それを利用して自分が安全に上がり続け、「勝つことを諦めない限り自分には勝てない」と嘯く。途中で房州の作戦に気づいた哲也は、勝利そのものをブラフに利用する師の技に感嘆しつつ、当時の麻雀のルールを利用してこの罠から逃れる。

房州は自分の罠を見破った哲也の成長に驚き、同時にそれを心から喜び、以降は「かつての玄人として、あくまで勝つ」ためではなく「麻雀に人生を捧げた者として、麻雀を心から楽しむ」ために打ち始める。哲也もこれに付き合い、師弟は共に心行くまで麻雀を楽しむ。
最後の一局で、房州は自身の配牌にただ運だけで九連宝燈(上がるのがもっとも難しいとされる麻雀の技)をそろえ、その状態で力尽きる。房州の葬儀に最後まで参加した後、哲也はダンチと共に新宿へと戻っていった。

ダンチの過去とコンビ解消の危機

かつてダンチは、根津(ねず)という詐欺師夫婦に騙されて一家離散した過去を持っていた。その根津夫婦が玄人として活動していることを知ったダンチは、「両親の仇」とばかり哲也を巻き込んで勝負を挑むも、憎悪のあまりスタンドプレイを繰り返して敗北を招いてしまう。
哲也はダンチを叱責し、「お前は玄人ではないのか」と彼を諭す。根津への憎悪からこれを受け入れられないダンチは一時哲也とのコンビを解消するが、彼との直接対決で敗れたことで自分が間違っていたことをようやく悟る。

コンビを復活させた哲也とダンチは、改めて根津夫婦と対局。玄人としての、コンビとしての力を存分に発揮して根津夫婦に勝利し、ダンチの両親の仇を討つのだった。

全国麻雀勝負

新宿でほぼ敵無しの存在となった哲也は、まだ見ぬ強敵との対局を求めて全国を旅するようになる。そこには、賭け麻雀を取り締まろうとする警察、玄人の中でも名の知れた哲也を捕まえて手柄を挙げようとする刑事から逃げるという意味合いもあった。
最初に赴いた大阪では、「相手に何もさせないまま安い手で早く上がっていく」というこの地方特有の戦法に大苦戦。長丁場に持ち込むことで相手のリズムを崩して勝利するも、哲也は麻雀の奥深さを思い知ることとなった。

北は函館、南は知覧まで、全国津々浦々を旅しながら麻雀を打ち続けた哲也は、玄人としてさらなる力を身に付けていった。

ドサ健との決戦

新宿で勝利を重ねる哲也の前に、ドサ健(ドサけん)という男がやってくる。ドサ健は上野を中心として活動する玄人で、賭け麻雀の“カモ”を増やして新宿の玄人たちの弱体化を図っていた。当然この動きは新宿の玄人たちの間で問題視されるようになり、双方の玄人を代表する形で哲也とダンチはドサ健と対局する。
ドサ健は並外れた力量を持つ玄人で、死闘の末に哲也は敗北。新宿の玄人たちは苦境に立たされる。「もう1度ドサ健と戦い、これを倒す」ことを目的に、哲也は修行の旅に出る。

玄人としてさらなる境地に至った哲也が新宿に戻った頃には、この地で彼を待ち続けたダンチは「ダンチ新撰組」なるグループを作って活動するようになっていた。再び自身のオヒキとなったダンチと共に、哲也はドサ健と対局。ギリギリのところで勝負を制し、彼の計画を中止させる。
敗北したドサ健は海を渡り、ラスベガスに拠点を移す。哲也はダンチと共に新宿で玄人として活動を続けていき、やがて「雀聖」の異名で畏怖される存在となっていくのだった。

『哲也~雀聖と呼ばれた男~』の登場人物・キャラクター

阿佐田哲也(あさだ てつや)

CV:置鮎龍太郎

主人公。戦時中、少年だった頃に博奕の打ち方を学び、戦後の混乱期の中で賭け麻雀の存在を知ってこれに魅せられていく。やがて賭け麻雀を専門とする玄人(バイニン)を生業に選び、房州から技を学んでいった。
玄人としては、天性の運と並外れた流れを読む力を使って打つタイプ。積み込み系と握り込み系のイカサマ技をバランスよく使う技術もあり、その場その場で相手の技を見破って逆に利用するなど咄嗟の起点も働く。

物語中盤から突発的な眠気(ナルコレプシー)に襲われるようになり、対局中にたびたび意識を失うようになる。玄人としては致命的な病気で、この症状によってたびたび敗北することさえあったが、物語の最後まで戦い抜いた。

ダンチ/早見たつを(はやみ たつを)

CV:高木渉/疋田由香里(少年時代)

哲也のオヒキ(コンビで麻雀を打つ相棒、もしくは補佐役)。作中ではほぼ一貫して「ダンチ」と呼ばれているが、本名は「早見たつを」である。
明るいお調子者で、良くも悪くも感情的な面がある。哲也のことは純粋に尊敬しており、彼のオヒキを務めていることを自慢することも多い。かつて詐欺師にして玄人である根津夫婦に騙されて両親が破産し、一家離散した過去を持つ。

作中では「哲也の引き立て役」というイメージが強いが、彼とコンビを組むのに十分な実力を持つ。対局する相手が哲也をより警戒するあまり、意識されずに動けるダンチが先に相手の策略に気づくことも多かった。

房州(ぼうしゅう)

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