哲也~雀聖と呼ばれた男~の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『哲也~雀聖と呼ばれた男~』とは、1997年から2004年まで『週刊少年マガジン』にて連載された、原案:さいふうめい、漫画:星野泰視による麻雀漫画である。全339話でコミックス全41巻、文庫版全22巻が発行されている。戦後復興期の日本で哲也が玄人として成長していく姿や、数多の玄人たちとの麻雀勝負など、勝負師としての生き様を描く。 本作品の名言・名セリフはギャンブルする人たちのみならず、ギャンブルをできない年齢層までも広く評価を得ている。

『哲也~雀聖と呼ばれた男~』の概要

『哲也~雀聖と呼ばれた男~』とは、1997年から2004年まで『週刊少年マガジン』にて連載された、原案:さいふうめい・漫画:星野泰視による麻雀漫画である。戦後復興期を時代設定にした麻雀漫画であるが、花札(オイチョカブ)やチンチロリンなども時折登場する。『哲也~雀聖と呼ばれた男~』は人気が高く、アニメ・ゲーム・パチンコなどのメディアミックス作品が多数作成されたことも人気を証明している。原案:さいふうめい曰く「作中世界では、学歴と麻雀の能力は反比例関係にあるとされている」。
2000年度(平成12年)第24回講談社漫画賞少年部門受賞。

本作は、主人公が玄人(バイニン)として成長していく姿や、玄人たちとの手に汗握る麻雀勝負など、勝負師(ギャンブラー)としての生き様を描いている。
「勝負の世界でしか生きられない人々がいる。これは麻雀界において雀聖と呼ばれた伝説のギャンブラーの物語である!」というアニメ冒頭のナレーションが有名である。
主人公は実在した作家:阿佐田哲也がモデルであり、著書の『麻雀放浪記』や『ドサ健ばくち地獄』などを参考、再構成したもので、小説に登場した人物の名前をそのまま取っていたり、他の作品からのエピソードもある。
「阿佐田哲也」はもちろんペンネームであるが、本名は「色川武大」で他にもペンネームがあり、著書も多数ある。阿佐田哲也名義としては、ギャンブル小説やギャンブル、特に麻雀関連のエッセイを発表している。阿佐田哲也の作風は、ピカレスク小説というのが特徴である。
阿佐田哲也というと麻雀が有名だが、他にもチンチロリン、競艇、カジノなどのあらゆるギャンブルに精通している。競馬はあまり好みではなかったようである。そして、昭和の麻雀ブーム最大の功労者であり、麻雀をギャンブルから文化の一つとして広めた人物でもある。
本作のモチーフとなった『麻雀放浪記』は、青春編・風雲編・激闘編・番外編の4シリーズ発表され、麻雀小説というジャンルを確立。
麻雀エンターテイメント集団『麻雀新撰組』を小島武夫や古川凱章と共に結成し、伝説の深夜番組『11PM』の麻雀コーナーにも出演。
『週刊ポスト』誌では有名人による麻雀勝抜戦が開始され、阿佐田が観戦記を担当し、日本初の麻雀専門雑誌『月刊近代麻雀』以降次々と刊行された麻雀雑誌において精力的に執筆を行った。
そういった活動から、阿佐田哲也は”雀聖”として神格化され、麻雀界のビックネーム、麻雀界のドンといった存在になった。実際に、京都の伏見稲荷神社には「阿佐田哲也大神」が祀られている。
『麻雀放浪記』がヒットした際には、「玄人(バイニン)として生きる!」と夢見た読者がおり、身を滅ぼした話も阿佐田の耳にも届いたようで、そこは残念に感じていたようである。

『哲也~雀聖と呼ばれた男~』から麻雀に興味を持った読者も多く、ここからギャンブルを始めた読者もいるようである。本作の名言・名セリフを真似るギャンブラーもおり、麻雀だけにとどまらず”ギャンブル界”で本作の名言・名セリフを金言・格言とするなどの影響もあり、ギャンブラーだけではなく、少年マガジン連載当時のギャンブルができない読者、青年層にも高評価を得ている。

renote.net

『哲也~雀聖と呼ばれた男~』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

ドサ健「出会ったが最後― 喰うか喰われるかの「世界」だ 一瞬の交錯の後 その世界に残るのは 一人だ…」

新宿の玄人代表・哲也と上野の玄人代表・ドサ健の縄張りを賭けた真剣勝負。9万点差で分が悪い哲也は「より危険を冒さなければ勝ちは無えんだ!!」と”W役満”で逆転を狙う。”中鳴き”をするドサ健を「千点で逃げ切る気かよ!!」と卓を囲む新宿の玄人・ユウとダンチ。
残り二巡、哲也は”萬子の九連宝燈”をテンパイするのだが、ドサ健のアガリ牌も萬子濃厚である。
ドサ健のラスヅモは一萬。一萬ツモ切りなら三・七萬のシャボ待ち、三萬切りでもカンチャン待ちとなる。ドサ健は三萬を切った。哲也のアガリ牌は一萬なのだが、哲也もラスヅモで萬子を引くのだった。
新宿と上野、互いの縄張りと玄人、勝負師としてのプライドを賭けた真剣勝負は終わった。
ドサ健はかつての恋人、まゆみの店を訪ね、「出会ったが最後― 喰うか喰われるかの「世界」だ 一瞬の交錯の後 その世界に残るのは 一人だ…」との言葉を漏らす。まゆみに語った「勝負師の世界」は、ギャンブルに限らず”プロの世界の厳しさ”を表す名セリフとなる。

哲也のラスヅモは二萬であり、ツモギリするがこれはドサ健のアガリ牌であった。
縄張りを賭けた真剣勝負は、ドサ健に軍配が上がる。ドサ健は”中鳴き”で逃げ切れたのだが、アガリ手は大三元だった。
新宿と上野、玄人と玄人、漢と漢、勝負師としての互いのプライドを見せた名シーンでもある。

哲也「博奕打ちは 嘘をつくんだ…」

新宿vs上野の真剣勝負が終わり、以前のような活気に溢れた新宿に戻ったのだが、ドサ健に負けた哲也は一人で旅に出る。

箱根の芸者・千明に無賃乗車を助けられた哲也は、「博奕…やるの…?」と訊かれた哲也は「…いや やんねえ…」と嘘をつき、そのまま千明の勤める旅館で住み込みとして働くことになる。
千明は半玉(半人前)の芸者であったが、県会議員・五味のお気に入りで「愛人になれ」と迫られていた。断り続ける千明に五味は「芸者麻雀“特番”をやろう」と持ち掛けるが、千明は堪らずその場から逃げ出す。
女将は哲也に「特番」とは客は金を張り、芸者は体を張る裏名物であることを教える。

別の日、千明は哲也に「早く…一人前の芸者になることなんだ…」と夢を語り、同時に「今夜のお座敷 特番なんだ…」と聞かせるのだった。
五味は千明に逃げられないように、千明の父親が営む木工所の権利書を携えていた。権利書を賭けた特番となり、特番に強い姐さん芸者も加わり助けようとするのだが、五味は”赤池”と呼ばれる代打ちまで用意していた。箱根界隈では”無敗の博奕打ち”として有名な赤池の前に歯が立たない芸者たち。
千明は「風に当たる」と言い、場を離れ自殺を図るがそこを哲也が助け、「俺が代わりに打つ…」と代打ちを申し出る。「でも あなた博奕は…」と訊く千明に、「あれは嘘だ」と哲也が「勝負師の本質」を表現し「博奕打ちは 嘘をつくんだ…」と言ったセリフである。

哲也「勝ちたきゃな… たやすく人を 信じねえこった…」

九州のとある製鉄所。給料日だが暗い顔をした康平という若者がいた。
給料日になると”満鉄”という玄人が待ち伏せており、麻雀で給料を全部持っていくという。大善という同僚は「博奕は打たんと言えばいい」と助言するが、康平は「敵に後ろば見せたくなかと」と男の意地をのぞかせる。
大善が昔、東京で玄人してたという噂を信じ、康平は麻雀を教えてくれと頼み込む。
大善は”二の二の天和”(コンビイカサマのひとつ。サイコロ二度振りを利用する技)を教えるつもりだが、康平は「これ イカサマじゃなかとね」と訊ねる。大善は「敵にバレなきゃイカサマじゃなか 技ってんだ」と”積み込み”(手積み時に利用されるイカサマ技。主に自分の山に積む牌を自然に選んで積み上げていく)を教えるのだった。
積み込みの次に”サイの目「二」”を出せなきゃ無意味とサイコロの転がし方を教えるのだが、何度やっても康平は「二」が出せないでいた。
そんな康平を見かねた大善は「今のお前に足りないものがよくわかる。二年前の俺も今のお前と同じだったからな」と思い出話をするのだ。

大善が新宿で駆け出しの玄人していた頃、運に見放され負けが続いていた。そんな時、勝ちまくっていた人物を見かけ「麻雀を教えてくれ」と頼むのだが、それが坊や哲との出会いだった。当時の大善も「二」が出せずに悩んでいたが、坊や哲から”グラ賽”を譲り受ける。
”グラ賽”は、鉛が仕込まれており、決まった数字しかでないようになっている。
大善は坊や哲とともに賭場へ繰り出し、実戦となった。勝負所で大善は”二の二の天和”を繰り出す。成功したかに思えたのだが、怪しまれ「サイコロを検めさせてもらう」と手を掴まれる。
「終わりたい…」と諦めた大善だが、サイコロには何の細工もなかった。

大善が康平に伝えたかった事。それは自らを信じることだった。大善も坊や哲からそれを教わったんだと康平に聞かせる。
待ち伏せる満鉄に勝負を挑む康平は、最初から”二の二の天和”を仕掛け、成功させる。満鉄は怪しんで”山”を検めるが、何も証拠はなかった。
その後、順調に勝ちを重ねる康平だが、満鉄から「一局清算でレートを5倍に上げんね」と持ち掛けられる。さすがにたじろぐ康平に大善が「逃げて負けるか、受けて勝つか」と煽るのであった。
そこで一人が卓を降り、昼間稼いでいた兄さんに声を掛ける。
面子は揃い、康平は”二の二の天和”を再度仕掛けるも、サイコロの目は”三”。「サイ振りをしくじった」と思う康平だが、「ここはダマで待つ!!」と自信に溢れていた。
「ツモ 四暗刻単騎」という兄さんの声に驚く、康平・大善・満鉄。大善は兄さんにアヤをつけるのだが、「お前ら コンビ打ちだろ」と逆につつかれる。
康平は「(大善との)コンビ打ちがバレた!」と言うのだが、大善と満鉄のコンビ打ちを見抜き、「素人をカモる常套手段だ」と兄さんは康平に教えるのだった。
そこへ、これまでカモにされた被害者たちも押しかけ、追い詰められた大善は「俺は本当に坊や哲に麻雀ば教わったと!!」と釈明するのだが、「俺は… てめえに何かを教えた覚えは これっぽっちも無えぜ」と”四暗刻単騎”アガリをした兄さんは言った。
この兄さんこそ通り名”坊や哲”こと阿佐田哲也であった。
後を追いかけ、「麻雀の勝ち方教えてくれんね」と康平は頼むのだが、哲也は無視する。それでも食い下がる康平に言った哲也の名セリフが「勝ちたきゃな… たやすく人を 信じねえこった…」である。

ダンチ「男を磨く 磨き砂だ」

ドサ健との勝負に負け、一人旅に出た哲也が新宿に戻ってきた。
まゆみママから伝言を聞き、雀荘いけだやへ向かう。そこであくどい雀ゴロを排除してる新選組の面々を見かけるのだった。
そこへ伝言を残したオヒキ・ダンチと再会した。ダンチとの懐かしいやり取りの最中、「ダンチ新選組」であること、局長がダンチであることが判明する。
「サマ使って素人からカッパイだ」局員がおり、直属の上司が鉄拳制裁を加えようとするが「間違いは誰にでもある」とダンチが止めるのだった(「サマ使って素人からカッパイだ」とは、(イカ)サマを使い、搾り取るという意味)。
「よーく肝に銘じておけ 麻雀は小金を稼ぐ道具じゃねえ… 男を磨く 磨き砂だ」

いつもはオトボケ役・ダンチの珍しい名セリフである。
だが、「ってなことを 哲さんが言ってた」と言葉を続けたことで、どうにもしまらない名セリフとなってしまう。

房州「頂点(ピーク)を過ぎようが過ぎまいが 最後だろうが最初だろうが 玄人がやることは一つだろう… 違うか?坊や」

ナルコレプシーとなった哲也を師匠・房州の言葉が助ける

ナルコレプシーの診断をされた哲也。
戦後間もない当時の医学ではナルコレプシーは病名も定かではなく治療法も確立されていなかった。
”玄人廃業”がよぎる哲也は素人相手に”ただの早上がり”で勝負を決める。隣の卓で5倍のレートを持ち掛ける哲也だが、オーラスで煽られたために「見せてやるよ」と九連宝燈をテンパイするのだ。待ちは一・四・七萬。ラスヅモで海底タテチンでアガルのだが、そばで見ていたダンチは「いつもの哲さんなら高目一萬、九連を引いたはずだ…」と思うのだった。その時買ったお金をダンチに返した哲也はまゆみの店へ行く。
2人連れの客が「ツキも実力の内」と話しているのを横目に哲也は店を出ようとするが、まゆみは「懐があったかい時は金置いていくもんだよ」と初めて支払いを求めた。困惑する哲也だが素直に支払う。2人連れの客も店を出ようと会計を訊ねると「…いらないよ。出銭はゲンが悪いだろ」とまゆみは言うのだった。
そこで哲也は「俺はもう… 頂点(ピーク)を過ぎたんだな… 房州さん…」と気付く。
雨の降る中、傘もささず改札を見ている哲也に「前ン時みたいに一人で行っちまうのは御免だぜ」とダンチは察したようだった。

旅に出た哲也とダンチ。電車の中で死んだはずの師匠・房州と打ったと乗客が言っているのを耳にした。台風により電車は運航停止となり、ホームに降りた哲也の前に房州がいた。
しかし、それは房州ではなく、息子の中(あたる)だった。再会したこの日は房州の命日でもあったのだ。中は父の命日に哲也と麻雀を打ちたかったらしく、哲也に勝負を挑むも”頂点を過ぎた”と考えている哲也は逃げようとする。中は「親父は死ぬ間際でもあんたとの勝負 逃げなかったぞ」と煽り、勝負が決まる。
房州とは違う中の麻雀に翻弄される哲也。中は「人の十倍生きてきたんだ」と宣言する。
必ず”オープンリーチ一発ツモ”をアガる中の麻雀に哲也は負けを意識する。
房州とは違う中の積み込みを見抜いた哲也だが、中の技を見破り封じた事で勝負が長引き、皮肉にもそれでナルコプレシーの発作が出始めた。
そして、遂に哲也は居眠りをしてしまう。夢でも見たのだろうか。そこで亡くなった房州が出てきて「頂点(ピーク)を過ぎようが過ぎまいが 最後だろうが最初だろうが 玄人がやることは一つだろう… 違うか?坊や」と語る。哲也に“玄人とは何か”を語った名セリフだ。
哲也は九連宝燈を狙うが安アガリをする。中は「勝った」と思うが、哲也の目が死んでいないのに気付く。
安アガリを選んだはずの哲也だが裏ドラが乗り、数え役満で逆転勝ちを収めたのだった。

ドサ健「誰が和了(アガ)れるかなんてわかるもんか だからこそ博奕は面白えんだよ」

打ち合わせも通しもナシで見事なコンビ打ちを披露する哲也とドサ健

玄人であり、ドサ健の師匠・神保神父が亡くなった。世間は新しい娯楽”パチンコ”に飛びつき、玄人たちもパチンコに興じていたのだが、哲也の案で”玄人の弔い方”をする。それは「供養麻雀」であった。
これまでに登場した玄人たちが多く供養麻雀に参加している。哲也は1週間、供養麻雀を続けていた。ダンチは「哲さんはあいつを待ってる」とドサ健を待っていることに気付くのだった。
供養麻雀を終え、会場を片付けている所に男が二人訪ねて来た。哲也が眼を覚ますとダンチの叫び声が響く。訪ねて来た二人の男は警視庁の刑事で、その二人に潰され、ダンチは右手に大怪我を負っていた。
手術をするも、麻雀どころか指が動くようになるかもわからない状況であった。哲也は仇討ちに向かうが、この二人はプロファイリングで哲也の麻雀を解析していたのだ。
ピンチを迎える哲也の前にドサ健が現れる。「レートを10倍に上げろ」というドサ健の言葉に臆することなく、勝負を受ける二人組の刑事。
打ち出しからドラ4枚切りを見せるドサ健に「有り得ねえ」と動揺する刑事たちだが、哲也のアシストでドサ健は大三元を確定させる。
宿敵でありながら完璧なコンビになっている哲也とドサ健、有り得ない麻雀に動揺と驚愕する刑事に対し、哲也は「…その有り得ねえ場には有り得ねえことが起こるんだよ」と言う。
これに続くドサ健の語る「誰が和了(アガ)れるかなんてわかるもんか だからこそ博奕は面白えんだよ」という言葉は、”博奕の醍醐味”を言い表した名言となった。

ドサ健「「強くなったてめえの 運・力・その全てを 金もろとも喰らうんだ!!」

Akari2
Akari2
@Akari2

目次 - Contents