続テルマエ・ロマエ(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『続テルマエ・ロマエ』とは、ヤマザキマリによる漫画。同作者の出世作にしてローマ時代の風俗の正確な描写で世界的に高い評価を受けた『テルマエ・ロマエ』の続編である。前作終了から11年後となる2024年に『ジャンプ+』で連載が開始された。
前作から20年。妻の小達さつきが失踪して以来、ローマ人のルシウス・モデストゥスは建築技師としての情熱を失っていた。しかし久し振りに大きな仕事を任された時、彼は再び現代日本にタイムスリップ。未来の温泉システムをあれこれ調べては刺激を受け、往年の気力を取り戻していく。

『続テルマエ・ロマエ』の概要

『続テルマエ・ロマエ』とは、ヤマザキマリによる漫画。タイムスリップしては現代日本の温泉システムに驚嘆し、それを自分の時代に持ち帰っていく古代ローマの建築技師の活躍を描いた『テルマエ・ロマエ』の続編である。
前作はその奇想天外な展開とローマ時代の正確な描写で高い評価を受け、ヤマザキマリの出世作として名高い。前作の連載終了から11年後となる2024年に、『ジャンプ+』で連載が開始した。出版社を変えて続編が執筆されることは珍しく、往年のファンを中心に話題となった。

前作『テルマエ・ロマエ』から20年。現代日本から嫁いできた妻の小達さつき(おだて さつき)が失踪して以来、ローマ人のルシウス・モデストゥスは建築技師としての名声も情熱も失い干されかけていた。しかし久し振りに大きな仕事を任された時、彼は再び「平たい顔族」と呼んでいた者たちの住む世界、つまりは現代日本へとタイムスリップする。
未来の温泉システムをあれこれと調べては刺激を受け、「この仕組みをローマに持ち帰れば大評判になる」と喜ぶ一方で「平たい顔族の温泉への発想と情熱はローマ人を超える、これを知らずに一人前のような顔をしていたとは」と悔やむルシウス。再び建築技師として活躍していく中で、ルシウスは往年の気力を取り戻していく。

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『続テルマエ・ロマエ』のあらすじ・ストーリー

20年ぶりのタイムスリップ

小達さつき(おだて さつき)と結婚してから20年後。老境に差し掛かったルシウス・モデストゥスは、ローマの民が享楽的になっていく様を嘆かわしい気持ちで眺めていた。気に入らない仕事を断り続けた結果建築技師としての名声も過去のものとなり、立派な青年へと成長した一人息子のマリウスからも「勝手すぎる」と呆れられていた。最愛の妻であるさつきも数年前に唐突に失踪してしまい、ルシウスは気力も体力も失いかけていた。
そんなある日、ルシウスは皇帝アントニヌス・ピウスから「自分の故郷のラティニウムに、良い浴場を作ってほしい」と依頼される。この頃ピウスは病によって体が弱り始めており、自分の死期が近いことを悟った上での依頼だった。ルシウスは早速これを引き受け、ラティニウムで温質の調査を始める

しかしその途中で温泉の中で引っ繰り返って溺れかけたルシウスは、20年前にたびたび経験したように再び現代日本へとタイムスリップ。そこで個人用の蒸し風呂や打たせ湯、木製の浴場の仕組みと長所を学んだルシウスは、ローマに戻るなり早速これを実現しようと動き出す。「父がかつての情熱を取り戻した」と喜んだマリウスもこれを手伝い、新しい浴場は無事に完成する。
ピウスは新しい浴場の出来栄えにすっかり満足し、「温泉はローマの宝だ、それを思う存分楽しめる浴場をこれからもたくさん作ってほしい」との言葉をルシウスに送る。ピウスの補佐を務め、次期皇帝の有力候補とも目されるマルクス・アウレリウスは、この話を聞いて「温泉を用いた周辺国との外交」というアイデアを閃くのだった。

若きライバルの登場

マルクスは人口増加への対策として新たな都市作りに励んでおり、その目玉として斬新な浴場を作ろうと考えていた。そのために招聘されたのがコルネリウス・バッラという今のローマでもっとも評価される浴場技師だったが、彼は新たな都市部に湧いている温泉が“ぬるぬるしていて臭い”と知ると「こんな湯ではとても人を呼べる浴場は作れない」と仕事を放棄してしまう。
困ったマルクスは、代わりにルシウスを派遣。改めて温泉を調べたルシウスは、またも現代日本へとタイムスリップし、そこで“ぬるぬるしていて臭い”この温泉が美肌効果を持つことを知る。「温泉の湯が持つ固有の薬効」こと“泉質”という概念を理解したルシウスは、これを活用した浴場を作り上げ、新たな都市の目玉として大いに注目される。マルクスが「さすがはルシウスだ」と喜ぶ一方、面目を潰されたコルネリウスは「余計なことを」と苛立ちを覚えるのだった。

泉質のことを理解したルシウスは、湯の花を利用した温泉の楽しみ方もローマに伝え、浴場技師としてさらに名を上げていく。一方、「サツキは元の世界(現代日本)にいるのではないか」とも考えるようになり、タイムスリップした際に彼女を探すことも考え始める。
マリウスから多少の日本語を学んだことで、ルシウスが現代日本から持ち帰る知識と情報もより詳しいものとなっていく。寂れた温泉宿を「新しい劇の舞台」として再生させた時は、“弘法大師が温泉を掘り当てた”という伝説を少々拡大解釈を交えて学び、「QUOBODAISI(弘法大師)に会えば平たい顔族の温泉に関する知識をさらに知ることができるのでは」との期待を抱く。

目指すは「QUOBODAISI」

日本の温泉と弘法大師の関係を学ぶたびに、ルシウスは彼への興味を強くしていく。それは「平たい顔族の温泉文化に多大な寄与をした偉大な先人」に対する敬意と、「温泉大国ローマの浴場技師として負けられない」という対抗心が合わさったものだった。ある時はその伝説に驚嘆し、ある時は敗北感に打ちのめされながら、ルシウスは「温泉のお湯そのものの輸送」などといった日本の温泉文化をローマへと持ち帰っては喝采を浴びていく。
青森の温泉にタイムスリップした際、ルシウスはイタコの口寄せという形で自分を取り立ててくれた先帝ハドリアヌスと再会。「お前の作る浴場にローマの平和がかかっている。今後もがんばってくれ」との言葉を受けて、浴場建設にさらに邁進していく。一方、ここでも現代日本の温泉の作り方を学んでローマに持ち帰り、喝采を浴びながらも「自分で考えたものではないのだが」と複雑な心境を抱くのだった。

ゆるキャラとのツーショット写真

かつてルシウスがローマに持ち込んだ日本の文化は、ローマの職人たちによって洗練され、優れたものへと進化を遂げていた。自分の成したローマの変化と己の老いを同時に感じるルシウスは、「温泉が急に高温を帯びて入れなくなった」との相談を受けて、この解決に乗り出す。水を足して薄めることは現地の技師も思いついていたが、これによって泉質が薄まり温泉の効能が弱くなってしまう。他の方法で温泉を覚ます方法はないかと考えていた矢先、ルシウスはまたもタイムスリップして現代日本に向かう。
そこでルシウスは、「高温の温泉を汲み上げて、幾重にも重ね広げた枝の上に流し、小さな雫として空中を落下させることで温度を下げる」という仕組みを目撃。ローマの技術や道具でも簡単に実行できるこの仕組みを見て、久々に「平たい顔族(日本人)たちに完全に負けた」と打ちのめされる。ルシウスがローマの持ち帰ったこの仕組みは、温泉の温度を適温にまで下げることにも成功して喝采を浴びるが、本人は「自分の知恵ではない」と敗北感を持て余すのだった。

この時、ルシウスは現地の温泉のゆるキャラとのツーショット写真を撮られることとなり、この写真が温泉のHPにも掲載されることとなる。

『続テルマエ・ロマエ』の登場人物・キャラクター

ルシウス・モデストゥス

本作の主人公。ローマ人の建築技師で、特に浴場の建設を得意としている。
20年前、新しい浴場の建築のアイデアに悩むたびに現代日本へとタイムスリップする不思議な現象にたびたび見舞われ、そこが遥か未来であることも知らないまま日本の温泉の工夫や仕組みをローマへと持ち帰った。この際にさつきと出会い、自分を追ってタイムスリップしてきた彼女と結婚するが、彼女が失踪して以来気力を失っている。

マリウス

ルシウスとさつきの間に生まれた長男。父がさつきたちの一族(現代の日本人)のことを「平たい顔族」と呼んでいたため、自身のことを「ローマ人と属州人の混血」と認識している。
建築技師としてレベルの高い教育を受けているが、母の失踪以来腑抜けてしまった父に呆れ、小馬鹿にしたような態度で接している。ルシウスのことを嫌っているわけではなく、久し振りにタイムスリップして現代日本の温泉技術を学んで帰ってきた父を見た時は「昔の情熱を取り戻したようで嬉しい」と言って積極的に仕事を手伝っていた。

小達さつき(おだて さつき)

現代日本出身の女性。前作のラストでルシウスと結婚し、幸せな家庭を作っていた。本作が始まる5年ほど前に突然失踪する。
ルシウスとはオシドリ夫婦として有名で、さつきの失踪は彼が仕事への情熱を失う大きなきっかけでもあった。浴場に向かったところで行方を断ったらしく、ルシウスは「元の世界(現代日本)にいるのではないか」と推測している。

弘法大師(こうぼうだいし)/QUOBODAISI(コーボーダイシ)

真言宗の開祖である空海(くうかい)の別名。「各地を旅する中で様々な温泉を発見し、地元の人々の生活を豊かにした」という伝説の持ち主で、“彼が見つけた”とされる温泉は日本全国で5000以上もあるとされている。
日本語を多少話せるようになったルシウスは、日本で弘法大師の温泉に関する伝説を学び、「平たい顔族の温泉文化に多大な貢献を果たした先人」として畏怖と敬意を抱くようになる。なお漢字を知らないルシウスは、弘法大師のことを「QUOBODAISI」と呼んでいる。

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