ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する(ルプなな)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する』とは、雨川透子によるライトノベル。「次にくるライトノベル大賞」など数々の賞を獲得し、2024年にはアニメ化を果たす。略称は「ルプなな」。
公爵令嬢リーシェは、20歳の時に死んでは15歳の自分に戻る運命を繰り返していた。商人、薬師、侍女、騎士などそれぞれの人生で様々な経験を積んだリーシェは、7回目のループで「今度こそ死の運命を覆そう」と意気込む中、自分の死因となる戦争を巻き起こした帝国皇太子のアルノルトから求婚される。

『ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する』の概要

『ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する』とは、雨川透子によるライトノベル。略称は「ルプなな」。
小説投稿サイト「小説家になろう」で公開され、「次にくるライトノベル大賞2021」で1位に選ばれ、「このライトノベルがすごい!2024」では5位になるなど高い評価を受ける人気作。2024年にはアニメ化を果たす。

エルミティ国の公爵令嬢リーシェ・イルムガルド・ヴェルツナーは、20歳の時に死んでは15歳の自分に戻る不思議な運命を繰り返していた。ある時は商人、ある時は薬師、ある時は男装騎士として生きるリーシェだったが、彼女の人生はいつもガルクハイン帝国が起こした大規模な戦争に巻き込まれる形で終焉を迎えていた。
帝国皇帝のアルノルト・ハインと戦場で立ち合い、彼に殺される形で7回目のループを経験したリーシェは、今度こそ死の運命を覆そうと意気込む。しかし「まずはヴェルツナー家から金目の私物を持ち出して今後の資金にしよう」と急ぐ中、たまたまエルミティ国を訪れていたアルノルトと出会い、彼からの唐突な求婚を受ける。

『ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する』のあらすじ・ストーリー

7回目のループの始まり

エルミティ国の公爵令嬢リーシェ・イルムガルド・ヴェルツナーは、「20歳の時に命を落とし、“エルミティ国の王太子ディートリヒから婚約破棄をと国外追放を申し渡される”15歳の自分に戻る」という、不思議な運命を繰り返していた。ループごとに商人、薬師、錬金術師、侍女、狩人、そして男装騎士としてそれぞれに懸命に生きたリーシェだったが、彼女の人生はいつもガルクハイン帝国が起こした大規模な戦争に巻き込まれる形で終焉を迎え続けた。
帝国皇帝のアルノルト・ハインと戦場で立ち合い、彼に殺される形で7回目のループを経験したリーシェは、今度こそ死の運命を覆そうと意気込む。しかし「まずはヴェルツナー家から金目の私物を持ち出して今後の資金にしよう」と急ぐ中、リーシェはたまたまエルミティ国を訪れていたアルノルトと遭遇。ショートカットしようと2階から鮮やかに飛び降りるリーシェを見たアルノルトは、彼女に興味を抱いて唐突に求婚する。

いったんはこれを断るリーシェだったが、エルミティ国の国王から「ガルクハイン帝国との関係を良好に保つためにも受け入れてほしい」と頼み込まれ、ならばとアルノルトにいくつかの条件を提示する。「結婚式の必要な品はアリア商会(リーシェが最初のループで世話になった組織)を通して購入する」、「皇太子妃になっても自分を決して働かせない」、「ついでに指一本触れるな」という無茶なものだったが、アルノルトはこの全てを承諾する。
こうなっては断ることもできず、「考えようによっては、今までの全てのループで自分を殺す原因を作ったアルノルトのことを探るチャンスだ」との想いもあり、リーシェはアルノルトの求婚を受け入れる。

初めてのガルクハイン帝国

花嫁としてガルクハイン帝国に向かうこととなったリーシェは、アルノルトが何を考えているのか分からず、移動中の馬車の中でひたすら警戒心を高めていた。そんな折、馬車が野党に襲われ、彼らの使っていた毒で護衛の騎士の何人かが動けなくなってしまう。放っておけず、リーシェは薬師としての知識で彼らを治療し、騎士たちから感謝と尊敬の念を向けられるようになる。
初めて訪れたガルクハイン帝国は大いに繁栄しており、リーシェはこれから始まる日々に胸躍らせる。彼女の立場は事実上の人質に等しいものだったが、「つまり働かなくてもいい理由があるわけだ」とリーシェは前向きに捉えていた。侍女としての知識と技能で、新たな家となる離宮の掃除をテキパキとすませたリーシェは、その様子を見ていたアルノルトから「お前は底が知れない、そこが気に入った」との言葉を告げられる。アルノルトに対して警戒するばかりだったリーシェだが、彼が純粋に自分に興味と好意を抱いているらしいことを知り、大いに驚く。

皇太子妃として振る舞いつつ、「アルノルトのことを知りたい、いざという時に備えて弱みをつかんでおきたい」と考えるリーシェは、パーティーで2人で踊った際にアルノルトが左肩になんらかの軽微な不調を抱えていることを見抜く。後にそれについて尋ねると、アルノルトは自身の左肩に刻まれた幾重もの古傷を見せる。リーシェの見立てた通り、これがわずかに左肩の肌を引きつらせ、アルノルトの左腕の動きを制限していたのだった。アルノルトは意に介した様子は見せなかったが、どう見ても幼い頃につけられた凄惨な古傷を前に、リーシェは「誰にどうしてそんな傷をつけられたのか」とはどうしても尋ねることができなかった。

アリア商会との商談

アルノルトに要求した通り、結婚式の準備に向けてアリア商会の者たちがガルクハイン帝国へとやってくる。この商会のリーダーであるケイン・タリーは、リーシェにとっては最初のループの中で世話になった恩人であり、信頼もできれば警戒も必要な優れた商人だった。しかしケインはリーシェが何か途方もないことを企てていることを見抜き、「迂闊に取引すれば火傷する」と穏便な形で商談を断ってくる。
実際にリーシェは「数年後に始まる帝国と各国との戦争を食い止める」ことを自身の最終的な目標としており、そのためにもアリア商会とのパイプを作っておきたいというのが彼女の本音だった。なんとかケインを説得したリーシェは、「帝都に滞在している1週間の間に、ケインが納得する商談を用意する」ことで取り引きを再開する約束を取り付ける。

一方、昔取った杵柄で王宮をスイスイと抜け出すリーシェを心配したアルノルトは、「次に街に行く時は自分も連れていけ」と釘を刺す。下手に自由を制限して出し抜かれるよりはその方が安心できるというロジックだったが、身近な存在として接するアルノルトが時折見せる優しさに、リーシェは「本当にこの男が数年後に世界中を戦争に巻き込むのか」と戸惑う。
そのアルノルトが唯一リーシェに厳命したのが、「弟には近づくな」ということだった。「そんなに兄弟仲が悪いのか」と首を傾げるリーシェの前に、アルノルトの弟であるテオドール・オーギュスト・ハインが現れ、好奇心なのか何かの意図があるのか接触を繰り返すようになる。

皇太子妃誘拐事件

リーシェの奔放でありながら「目的のためなら命を捨てることになっても構わない」という強い決意を秘めた振る舞いに惹かれたアルノルトは、次第に彼女を「得難い存在」だと認識するようになる。リーシェ自身もアルノルトを「思っていたほどの悪人ではないらしい」と評価するようになり、2人は少しずつ距離を縮めていく。
しかし、ケインを口説き落としてアリア商会を味方につけたある日、リーシェは過労からかめまいを起こしてしまう。すぐに侍女が呼ばれるも、彼女たちはテオドールに「リーシェの拉致」を命じられており、リーシェは王宮から連れ出されていずこかに監禁される。

その後テオドールはアルノルトに接触し、リーシェを誘拐した旨を告げて「自分の存在を認めろ」と迫る。しかしこの場に自力で脱出したリーシェが現れ、テオドールの目的が「あえて事件を起こすことで、自身を皇位継承の争いから排除させる」ことだと指摘する。テオドールはアルノルトのことを兄として敬愛していたが、あまりに冷然とした彼の態度に次第に「自分は兄にとって不要な存在なのではないか」との疑念に囚われるようになり、ついには「いないも同然の弟なら、本当に兄の前からいなくなった方がいい」とまで思い詰めるようになっていたのだった。
図星を突かれたテオドールは、「あれこれと策を弄するのではなく、もっと早くこうするべきだった」と自害しようとするが、アルノルトに止められる。兄が自分を不要な存在などとは思っていないことを知ったテオドールは泣きながら数々の非礼をリーシェたちに詫び、「何かあれば自分が力になる」と約束するのだった。

城下への外出

いつかアルノルトが起こす世界を巻き込む大きな戦を食い止めるため、リーシェは彼が大規模な侵略戦争を企てた理由の調査と、いざという時にむりやりにでも止めるための力を手に入れようと考えていた。手っ取り早く強くなるため、自身の知る中で最強の剣士であるアルノルトに稽古をつけてほしいと頼んだリーシェは、その見返りに「共に城下に行く」ことを約束させられる。一方、アルノルトの強さの秘密の一端が、彼や近衛兵たちが行っている特殊な修練にあると察したリーシェは、アリア商会を通して変装用のウィッグを手に入れて彼らの修練に密かに加わるようになる。
アルノルトの出した「共に城下に行く」というのは、結婚式に備えて宝石を購入するのが目的だった。どんな裏の目的があるのかと勘ぐっていたリーシェは拍子抜けするが、「俺の購入した宝石で着飾ったお前を見てみたい」というアルノルトの言葉にすっかり毒気を失い、彼の瞳の色と同じ青い宝石を購入する。

その翌日、コヨル国のカイル・モーガン・クレヴァリー王子がガルクハイン国に到着。友好国としてアルノルトの婚姻を祝いに来たという体裁だったが、アルノルトはこの訪問には裏の目的があると見ており、「宴の席で近衛兵の育成にも関わっている辺境伯ルドガー・ラルス・ローヴァインをカイルに接触させ、その観察眼と洞察力でコヨル国の真意を暴く」という計画を立てる。すでに新人騎士に変装した状態でローヴァインと顔を合わせていたリーシェは、「友好国の王子を招いての宴となれば、皇太子妃である自分も出席しないわけにはいかない。そこでローヴァインと出会ったら、自分が変装して修練に参加していることがバレる」と戦々恐々とする。なんとか誤魔化そうとするも、結局はアルノルト本人に悟られてしまい、訓練への参加こそ許されるものの罰の悪い思いをすることとなる。
一方、カイルは「国力の衰え始めたコヨルを守るため、ガルクハインとの同盟を結ぶ」という真の目的に向けて動き始めていた。これまでの人生での縁もあってカイルの力になろうとするリーシェだったが、彼女の錬金術師としての師でもあるミシェルが共にコヨルから来訪していることを知って驚く。ミシェルは知識の探求とその実践にしか興味が無く、自身が作り出した“火薬”を効果的に使ってくれる人物を探し求めていた。「アルノルトなら火薬を使って大きな戦争を起こしてくれる」と考え始めたミシェルを止めるため、リーシェは一計を案じる。

コヨルとの同盟

リーシェの入れ知恵で、カイルは「コヨルの持つ独自の技術力」を交渉材料にアルノルトに再度同盟を申し込む。ガルクハインは国力はともかく工業技術的な面では周辺国に後れを取っており、「これから発展していくだろう機械文明」について説かれたアルノルトは1度は蹴ったコヨルとの同盟を再考するようになる。
一方、ミシェルは「最高に劇的な形でアルノルトに火薬の存在を知らしめる」ために、予告上を送り付けた上でのテロを画策していた。リーシェはかつての師でもあるミシェルの性格や能力から彼がどこで事件を起こすかを先読みし、事前にこれを阻止した上で、自身で調合した「火薬を用いた花火」を打ち上げる。初めて見るその美しさに見惚れたミシェルは、「火薬であれ、毒物であれ、使い方次第で人を幸せにすることもできる」と知って衝撃を受け、危険な薬を生み出してしまった以上はそれによる被害を見届けなければならないという自身の思想が狭量なものだったことを悟る。

一連の出来事を見届けたアルノルトは、これがリーシェが裏で手を回した結果であることを薄々感づきながらも、「ガルクハインはコヨルと同盟を結ぶ。ミシェルの行動は、コヨルの技術力を示すためのやや過剰なパフォーマンスである」として事態を収める。「コヨルでも最高の技術者としてガルクハインとの同盟のために尽力する」ことを条件にミシェルは騒ぎを起こそうとしたことを不問にされ、主たるカイルと共に帰国の途に就くのだった。
大きな難題をクリアして胸を撫で下ろすリーシェだったが、アルノルトに「それが必要な状況になれば、俺はお前も斬り捨てる」と釘を刺される。それでもリーシェは「いくら殺されても、私は必ずあなたの下に戻ってくる」と言葉を返し、アルノルトを変えることで自身の運命を、多くの国を巻き込む戦争の始まりを回避することを改めて己に誓う。そのためにもアルノルトにもっと様々なことを、この世は生きるに値するほどに美しいことを教えてあげたいと考えるリーシェは、「あなたと旅がしたい、あなたが綺麗だと思えるものを増やしてあげたい」と彼に伝える。それこそが自分の人生の新しい目標だと内心で噛み締めるリーシェの前で、アルノルトは「綺麗だと思えるものなら、お前のおかげで1つ増えた」と答えるのだった。

『ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する』の登場人物・キャラクター

リーシェ・イルムガルド・ヴェルツナー

CV:長谷川育美

エルミティ国の公爵令嬢。物語開始時点で15歳。王太子ディートリヒの婚約者だったが、不貞の冤罪をかけられて婚約破棄と国外追放を言い渡される。その後商人や薬師、男装の騎士など様々な人生を歩み、5年後にガルクハイン帝国が起こした戦争に巻き込まれて死亡しては婚約破棄された場面の自分に戻ることを繰り返している。
これまでのループの中で様々な知識と技術を身に着けてはいるが、ループが始まった時点では肉体的にはただの少女であるため、「ずいぶん体がなまっている」と辟易することもしばしば。7回目のループでは、「とりあえずのんびり過ごして、死の運命を覆してみよう」と考えており、アルノルトの求婚を受けてガルクハイン帝国で暮らすこととなる。

アルノルト・ハイン

CV:島﨑信長

ガルクハイン帝国の皇太子。リーシェが婚約破棄されてから数年後に皇帝となり、近隣諸国を相手に大規模な戦争を開始。リーシェのループの中で、彼女の死因の遠因を作り続けてきた。
リーシェが婚約破棄された晩、たまたまエルミティ国を訪れており、7回目のループの際に彼女が見せたただならぬ身のこなしを見て興味を抱く。そのリーシェがエルミティ国王太子のディートリヒから婚約破棄されたことを知ると、彼女に求婚する。

テオドール・オーギュスト・ハイン

YAMAKUZIRA
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@YAMAKUZIRA

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