うるわしの宵の月(漫画・小説)のネタバレ解説・考察まとめ
『うるわしの宵の月』とは2020年よりやまもり三香が『デザート』にて連載している、高校で「王子」と呼ばれているクールなイケメン系の女子・滝口宵と同じく「王子」と呼ばれているお金持ちかつ見た目が派手な男子・市村琥珀の恋愛模様を描いた学園ラブコメディ漫画で、「青い鳥文庫」でノベライズ化もされている。他の少女漫画では見られない「王子」同士の恋愛を主軸に置いており、高い画力と画面構成をもってロマンティックな世界観を構成しているクオリティの高い作品である。
『うるわしの宵の月』の概要
『うるわしの宵の月』とは2020年よりやまもり美香が『デザート』にて連載している学園ラブコメディ漫画、およびそれらを原作とした小説である。
作者のやまもり三香は2006年に集英社の『ザ マーガレット』にてデビュー。2011年から『マーガレット』にて『ひるなかの流星』、『椿町ロンリープラネット』を連載し、それぞれのヒット作になっている。その後『デザート』にて連載3作目となる『うるわしの宵の月』を執筆している。
第5回「みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞」でブックライブ賞を受賞。さらには「このマンガがすごい!2022」オンナ編で第4位を獲得するなど、大人気少女マンガ作品である。また「青い鳥文庫」にて小説化もされている。
滝口宵(たきぐち よい)は背が高く、整った美男子の風貌を持った高校1年の女の子。ただ品行方正、文武両道であったことから学園では「王子」のあだ名で多くの女子から憧れの存在になっている。しかし当の本人は自分が女の子であるのに、周りが王子扱いしてくる現状にどこか複雑な心持を抱いていた。そんなある日、ひょんなことから偶然、2年生の市村琥珀(いちむら こはく)と出会う。琥珀は宵とは対照的にお金持ちで派手な風貌をしている人物で、学園で同じく「王子」と呼ばれている人物であった。最初は宵のことを男と勘違いしていた琥珀であったが、後日宵が女子であることを知る。そして宵の持つ美しさに惹かれた彼は宵に好意を持ち始める。
2人の「王子」同士の恋愛模様が本作の大きな魅力であり、宵の次第に芽生えていく乙女心と、初めて明確な恋愛を持った琥珀の葛藤を描いたストーリー展開は多くの人に好評を得ている。また漫画の絵柄も非常に美麗であり、特に宵のイケメンな風貌からふとした瞬間露わにする恋する乙女の表情のギャップや、二人の関係のロマンティックさを表すトーン使いや構図などの見事な演出は本作の見所の一つである。
『うるわしの宵の月』のあらすじ・ストーリー
宵と琥珀の出会い
学園で「王子」と呼ばれている高校1年生の女の子・滝口宵(たきぐち よい)。容姿端麗な男顔で品行方正のため王子として扱われ、女の子として見られない日々に複雑な気持ちを抱えていた。そしてある日偶然にも、お金持ちかつ派手な見た目から同じく学園で「王子」と呼ばれている、高校2年生の市村琥珀(いちむら こはく)とぶつかってしまう。琥珀は謝りながらもあまりにも美しい宵に見とれてしまうが、宵のことを男と勘違いしその場を後にする。そのあと宵と再会した時に、周りの友人に女の子であることを聞かされ、琥珀は宵に興味を持ち始める。
一方、宵は琥珀の失礼な態度や派手な見た目から悪い印象を持っていた。その後ある日の夜に宵はコンビニで酔っ払いの男性客が女子客にしつこく話しかけているところを目撃する。宵は持ち前の正義感からその女の子の助けに入るため酔っ払いの男性客に言い寄るのを辞めるように言う。しかし酔っ払いの客がエスカレートし宵に言いかかろうとした瞬間、再び琥珀と出会う。その際、絶体絶命の危機が迫っていた宵の手を琥珀が取りコンビニから一緒に逃げ、琥珀が宵のことを助けたのであった。その後、夜の公園で話の流れで王子として扱われる悩みを宵は琥珀に打ち明ける。そんな宵に対し琥珀は宵をお姫様抱っこをし、自分はヒロインとして宵のことを見ていたと胸の内を明かす。その出来事を境に琥珀の印象を改め、宵の気持ちに王子としてではなく、一人の恋する乙女としての心の機微が生まれる。
その後、琥珀が宵のことを気にしていたこともあり、二人は幾度となく出会い、そのたびに距離感が近くなっていくのであった。そんな日々を過ごしていたある日、宵が熱で保健室で寝込んでいた際、琥珀がお見舞いに来てそのまま宵の隣で寝てしまうことがあった。その居心地の良さから琥珀は宵が運命の相手だと軽口を言うが、宵は運命の相手という存在に懐疑的であった。そこで琥珀は運命の相手が本当にいるかどうか確かめるために「試しに付き合ってみる?」と言った。その提案を機に二人の関係は大きく変わり始めた。
お試しお付き合い
「試しに付き合ってみる?」という琥珀の発言に対して、宵はお試しであればとその提案を受け入れてしまう。しかし、どうしてお試しでも付き合う提案を受け入れてしまったのか、と自身の決断に宵は混乱する。かくして自分の気持ちに整理が付かないまま琥珀と宵のお試しのお付き合いがスタートする。
初めは宵が琥珀に対して警戒していたこともあり、ぎこちない態度で琥珀に接してしまう。ただ何回かデートを重ねるたびに口が悪い物言いとは裏腹に、宵に対してきちんと適切な距離感を保つ心遣いを見せる琥珀の意外な一面や、宵に真摯に向き合う姿勢を見て次第に宵は琥珀に惹かれ始める。そしてあるデートの帰り道、宵と琥珀はキスをする距離まで近づくも、琥珀が宵を気づかいキスをしないでその場を別れる出来事が発生する。その時に宵は初めて琥珀にキスをしてほしかった感情を抱いていたことに気付くのだった。「王子」としての自分とは全くかけ離れた感情を持ち始めた宵は、琥珀のことが好きという事実を認めつつあるのであった。
夏祭り
琥珀に対して気を許し始めた宵は恥ずかしながらも普段「王子」としては絶対に見せないような、素の自分を琥珀に対して見せるようになった。そんな宵をみて琥珀の気持ちにも徐々に変化が現れる。琥珀はお金持ちかつ派手な見た目ということもあり、今まで多くの女の子と付き合ってきた。だがそのたびにその女の子にとって自分はカーストを上げるステータスの一部でしかないと気付き、異性の人間関係に対しては執着心を持たなくなっていた。しかし不器用ながらも琥珀の素の一面を見てくれる宵に対して、琥珀はかつてないほどの恋心を抱き始める。そんな形で宵と琥珀はきちんと相思相愛になりつつあった。もっと宵と過ごしたい琥珀は夏祭りデートを宵に提案するのでだった。
琥珀と夏祭りデートに行くことになった宵であったが、ある日バイトとして働いているカレー屋さんに、大路拓人(おおじ たくと)という宵と同い年の男がアルバイトとして加わることになる。彼も端正な見た目から別の高校で「王子」と呼ばれた。同じ王子としての多くの女の子の憧れとなっている境遇を抱えており、性格も似ていた宵と拓人はすぐに意気投合し、アルバイト先で仲良くなり始める。そんなある日何度か宵のアルバイト先に来ていた琥珀が、宵と拓人が仲良くいる場面を目撃してしまう。今まで嫉妬心を持ったことがなかった琥珀は、その感情をうまく処理することができず、宵に対して少し険悪な雰囲気を出してしまう。そうして夏祭りデートの前に宵と琥珀の間に溝ができてしまい、結局夏祭りデートに行くか否かがうやむやになったまま、祭りの日を迎えてしまう。
自分の気持ちに正直になれないまま祭りの日を迎えてしまった宵。琥珀からの連絡が返ってこず、自分の気持ちを紛らわすため急遽カレー屋のバイトに入っていた。しかしアルバイトの同僚である拓人との「王子としてではなくて等身大の女の子として接すればいい」という会話をきっかけに、明確に琥珀の好きであると再確認した宵は、勇気を振り絞って琥珀に会いに行くためにお祭りに向かう。宵はお祭りにて琥珀と無事会うことが出来た。その後琥珀が他の女の人といたこともあり、宵がそのまま立ち去ろうとするなどひと悶着起きるが、お互いの気持ちを確認しあえた二人は正式にお付き合いをスタートするのであった。
神戸旅行
夏祭りデートを終え、以前よりさらに仲良く恋人として付き合う琥珀と宵。夏休みを迎えた二人は宵の友達である利根のばら(とね のばら)、日比谷寿(ひびや ことぶき)、琥珀の友達である茜仙太郎(あかね せんたろう)、桑畑春(くわはたけ しゅん)の計6人で、琥珀の別邸がある神戸へ2泊3日の旅行することになった。
友人に囲まれつつ楽しく旅行する2人だが、琥珀はもっと宵と二人きりで時間を過ごしたいという思いが強くなってしまう。そんな思いを琥珀の別邸にてこっそりと聞かされた宵は、琥珀への感情が変化したことを遂に琥珀に向かって吐露する。一方琥珀ももっと触れ合いたいけど、宵のことを大切にしたいという気持ちの矛盾を抱えていることを宵に伝える。お互い正直な気持ちを伝えあったところで、最終日にそれぞれの友人話して、二人きりで水族館デートに向かう。
水族館デートをしている中、宵は誰でも優しくしてしまう琥珀に対して嫉妬心が生まれてしまう。また琥珀も兄が音信不通になっているなど家族の関係に問題を抱えており、自分のことをどこか他人事にとらえてしまう節があるなど、それぞれまた新たな問題点が見つかる。しかしお互いに今の関係が心地いいことも事実であり、付き合うことに関してまた一歩前進できる時間を過ごしたのである。
そして琥珀との神戸旅行を終えてから、私生活でも琥珀に対して自ら会いに行くなど積極的な行動を見せるなど変化が出てきた宵。そんな宵を見て、同じバイト先で働いている拓人はある決心を固める。
『うるわしの宵の月』の登場人物・キャラクター
主要人物
滝口宵(たきぐち よい)
身長165cm、体重55kgのA型。9月1日生まれで好きな食べ物はこしあん、チョコ、餅など甘いものが好きな甘党である。
容姿は親譲りの整った男顔で、髪型は前髪を真ん中で分けている黒髪のショートカットをしており、また声も少し低めであるため男とよく間違えられる。性格は品行方正で困った人は自然に助けてしまう正義感が強い人物。学校でも成績は極めて優秀、またかつて空手をやっていたなど運動神経も抜群のためまさに非の打ち所がない人物である。そのため学園では「王子」と女子に憧れを込めて呼ばれ、男子と間違えられることがあっても、女子として扱われた経験がほとんどない。
父が下北沢でカレー屋を営んでおり、そこの店員としてお店も手伝っている。ただ小さいころ「カレーの王子さま」とあだ名をつけられたこともあり、現在の学園ではカレー屋で働いていることは隠している。
女の子らしい見た目の姉がおり関係は至って良好だが、過去に意中の男子に姉と比べられたことがあり、その記憶が少しトラウマになっている。
恋愛観に関しては意中の人に「好意をもたれるなら姉の方が良かった」と言われた過去があり、その過去の影響でかなり奥手である。さらには「王子」としての自分が皆に受け入れられていることもあり、女の子らしい立ち振る舞いをして恋愛をする自分に対してかなり自己肯定感が低い。また異性のボディタッチも極端に苦手で、琥珀と付き合う際にはボディタッチに関するルールを細かく決めるほどである。なお琥珀に心を許してからは苦手意識はだいぶ薄れている。
市村琥珀(いちむら こはく)
身長183cm、体重68kgのAB型。12月18日生まれで好きな食べ物はからあげやカレーなど小学生男子が好きなものと卵料理が好き。
容姿はとても美形であるが、明るい髪色に耳にピアスを開けているなど宵とは違いかなりチャラついた風貌をしている。性格は思ったことをすぐに口に出し、人間関係に執着心がないためかなり軽薄。学校生活でも授業をさぼることに対して何も思ってないなど、素行が悪い。祖父が会社の社長で大金持ちのため、派手な見た目と相まって学園では「王子」とあだ名をつけられている。
家族間に少し問題を抱えており、品行方正の兄がいたが両親とのトラブルがあったこともあり、現在音信不通。琥珀にもあまり家族の描写がない。家はかなりの豪邸でさらに、そんな家が高校の周りの人にばれないように祖父名義のマンションがいくつもある。琥珀自身も祖父のマンションを自由に使用しており、実家にいることはあまりない。
恋愛に関しては過去に何人もの女の子と付き合っているが、「王子」としての自分にしか興味がなかった女の子ばかりであったため、どこか本気になりきれないままの関係で終わり思い入れは特にない。そのため宵を好きになる前はかなり恋愛にドライな考え方を持っていた。ただ宵と出会ったことで初めてきちんと人を好きになることができ、自分の心境の変化に戸惑いつつも、懸命に宵とお付き合いしている。
大路拓人(おおじ たくと)
宵の父が経営しているカレー屋でアルバイトとして働いている男子高校生。見た目は清潔感あふれる容姿端麗な美男子。宵と同じく、自分が通う高校では「王子」のあだ名で呼ばれている。性格は実直で真面目。サッカーとカレーが大好きで、それがきっかけで偶然宵の父が開いているカレー屋さんに訪れる。そこで働いている宵に一目惚れをし、アルバイトとして働き始める。
中学2年生までは身長が低かったこともあり、そこまで目立つこともなかったが中学3年生から身長が伸びたことで「王子」として呼ばれるようになった。ただ本人は今までサッカー一筋だったが故に異性に苦手意識があり、「王子」としての自分に戸惑っている。
宵の家族
タグ - Tags
目次 - Contents
- 『うるわしの宵の月』の概要
- 『うるわしの宵の月』のあらすじ・ストーリー
- 宵と琥珀の出会い
- お試しお付き合い
- 夏祭り
- 神戸旅行
- 『うるわしの宵の月』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- 滝口宵(たきぐち よい)
- 市村琥珀(いちむら こはく)
- 大路拓人(おおじ たくと)
- 宵の家族
- 宵の父
- 宵の姉
- 学友
- 利根のばら(とね のばら)
- 日比谷寿(ひびや ことぶき)
- 茜仙太郎(あかね せんたろう)
- 桑畑春(くわばたけ しゅん)
- 『うるわしの宵の月』の用語
- なすおやじ
- 神戸別邸
- 『うるわしの宵の月』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 琥珀「あんためちゃくちゃ美しいな」
- 琥珀「じゃあ 付き合ってみる?」
- 宵が琥珀を引き留めるシーン
- 拓人「ふつうに綺麗な女の子だと思いました」
- 『うるわしの宵の月』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 作中に登場する施設のモチーフ
- 最終回は構想済み