ホテル・メッツァペウラへようこそ(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ホテル・メッツァぺウラへようこそ』とは、漫画家・福田 星良によって2020年より『KASOKAWA ハルタ』にて連載しているヒューマンドラマ漫画である。フィンランドのラップランド地方にある1軒の小さなホテル・メッツァペウラを営む2人の老紳士たち・クスタとアードルフ、ホテルに突然訪れた1人の青年・ジュンとの心温まる物ストーリーが描かれている。孤独な青年ジュンが真冬のフィンランドでの暮らしやホテルに訪れる宿泊客たちとの交流によって、感情を取り戻しゆっくり変化する彼の心情が繊細に描かれている。

フィンランドのクリスマスの定番である、ジンジャーブレッドの味をしたケーキ。
生姜を使いスパイスの効いたアクセントのある味。
クスタが娘・ファビーのために作ったが、アードルフに手土産にと渡した。

『ホテル・メッツァぺウラへようこそ』の名言・名台詞/名シーン・名場面

アードルフがジュンに、フィンランドでの生き方を教える

アードルフ(左)がジュン(右)に教えを諭す

フィンランドに来て、心を閉ざし1人で我慢しがちだったジュンに向けて、アードルフはフィンランドでの生き方を諭すように語った。
フィンランドの冬は過酷で、12月の1日の日照時間は2時間ほどしかなくほぼ暗い毎日がつづく。雪が降ればそのわずかな光さえ届かなくなり、閉鎖的な灰色の空に下で暮らしていると、だんだんと気分が滅入っていく人が多いのだという。そのため心が不安定になる人も多く、フィンランドの冬の自殺率は高い。
アードルフは仕事を教えるとともに「この国で生き残っていくためには学び続けなければいけない。そしてお互いに助け合わなければ冬は越せない。それがこの国の人間の生き方です」と、ジュンにフィンランドでの生き方も教えた。ジュンはここでは自分1人では生きていけないこと、クスタとアードルフが見ず知らずの自分に温かい手を差し伸べてくれたのは特別なことではないことに気づく名シーンである。

ファビー「新しい家族には椅子が必要でしょ?」

ファビー(右)の言葉に、昔を思い出すクスタ(左)

ファビーは自らが作った椅子を新郎新婦に贈る前に「新しい家族には椅子が必要でしょ?」とクスタに言った。
椅子を贈ることはフィンランドの昔からの風習で、男性が女性のために椅子を作って贈ることで「家に妻になる女性の居場所をつくりましたよ」という意味がある。ファビーはクスタ夫婦の養子に引き取られたとき、クスタが家に自分専用の椅子を用意してくれたことがとても嬉しかった。そのため幼馴染である花嫁に向けて、彼女の新しい居場所を祝うために椅子を贈ることを決めたのだった。
ファビーの「新しい家族には椅子が必要でしょ?」という言葉に、クスタは昔ファビーを養子に迎え入れたことを思い出す、家族の絆が垣間見える名台詞である。

教えを守り、着古した服を修復するジュン

昔の教えの通り、自分の服を繕うジュン

ジュンの服を買いに出かけた時に、ジュンは新しい服を良しとせず「服は直せる限り直して着るって決めてるんです」とアードルフに語った。
ジュンは施設育ちのため、服は基本的にお下がりで新品をもらうことがなかった。成長し彼は悪い仲間とつるむようになってからは喧嘩で服をよく破いており、物を大切にするという考えを持っていなかった。しかし恩師である先生が「自分で直せるようになれ」と生活の知恵の1つとして裁縫を教えてくれた。そしてジュンは先生から“物を大事にする”という精神を教わり、今もその教えを守り続け、服は直せる限り直して切ると決めていたのだった。
そしてジュンはアードルフから、フィンランドにも日本と同じように物を大切にする文化があると教わる。フィンランドはもともと物が少ない国で、かつ経済が不安定な時期もあったことから、物を捨てない文化が育った。そのため街中には不用品が寄付できる中古品屋があり「捨てるより他の必要な人の手に渡ったほうがいい」と物を捨てずに寄付する人が多い。
ジュンの素直で真面目な人柄が伝わり、またフィンランドと日本の共通点を知ることができる名シーンである。

エルッキ「クリスマスってね、感謝する日なの」

ジュン(右)にクリスマスについて教えるエルッキ(左)

クリスマスプレゼントに悩むジュンに、エルッキは「クリスマスってね、感謝する日なの」と教えた。
ジュンはクスタとアードルフにクリスマスプレゼントを贈りたいと考えていたが、何を贈ればいいか悩んでいた。日本にいたころクリスマスを祝ったことがなかったため、クリスマスの一般常識が分からなかったのだ。またテムから届いたプレゼントがすべて高価で大量だったため、自分にはこのようなプレゼントが用意できないと落ち込んでもいた。
しかしエンマがジュンをクリスマスマーケットに連れて行ってくれて、そしてエルッキはクリスマスプレゼント用に編み物を教えてくれた。クリスマスプレゼントを用意できないと悩んでいたジュンに、エルッキは「クリスマスは豪華な贈り物をするためのものではなく、感謝をする日。恋人や友人や家族、そういう人たちを想う時間が大事だよ」と教えてくれる。ジュンはその言葉を聞き、高価さよりも彼らを想う心が大事だと気づく。そしてエルッキに教わりながら、編み物でクリスマスプレゼントを作ったのだった。
フィンランドのクリスマスでは何が大切とされているのかが分かり、そしてジュンがクスタとアードルフのためを思って動き出すきっかけとなる名台詞である。

『ホテル・メッツァぺウラへようこそ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

ホテル・メッツァペウラの意味は「森のトナカイ」

表紙や別紙に掲載されているトナカイをかたどった模様

『ホテル・メッツァペウラにようこそ』の題名にもなっている「metsäpeura(メッツァペウラ)」はフィンランド語であり、「森のトナカイ」の意味がある。
日本語直訳は「森の鹿(メッツァ=森、ペウラ=鹿)」となるが、フィンランドの森に住む珍しいトナカイの亜種の名が「metsäpeura(メッツァペウラ)」のため「森のトナカイ」の意味が妥当である。その証拠に、本作の表紙にはトナカイをかたどった模様が印刷されている。

池袋駅にピールオフ広告が登場

池袋駅に登場したピールオフ広告の様子

『ホテル・メッツァペウラへようこそ』第3巻の発売記念として、2022年10月17日に東京・東武池袋駅改札外コンコースオレンジロード沿いにて、本作の「ピールオフ広告」が登場した。
ピールオフ広告は名の通り、壁に張り付いている広告を自由にはぎとって持ち帰ることができる広告キャンペーンである。キャンペーンには本作のフルカラー描き下ろしエピソードなどが収録された小冊子が広告としてずらりと並び、ボリュームある広告として宣伝された。

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