サイバネ飯(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『サイバネ飯』とは窓口基によるサイボーグ食が題材のSF漫画である。2017年にpixivにて1話目が公開。後に数話ずつまとめた本がAmazon Kindleにて無料公開されている。舞台は未来、人体をサイボーグ化するのが普通となっている世界。人工内臓に換わったことで普通の食事が摂れないサイボーグのための食事が作られるようになった。その中で外見だけではなく内臓までサイボーグ化している主人公・宮地が様々な食を楽しんでいくストーリーとなっている。細部にわたって作り込まれた世界観に深く浸れる作品である。

『サイバネ飯』の概要

『サイバネ飯』とは窓口基によるSF漫画である。2017年にpixivにて1話目が公開され、その後はイベントや作者のTwitterなどで不定期に発表されている。2017年には同人誌として刊行。Amazon Kindleにて無料公開されている。作者が趣味で描いているものであり、作者曰く「好きな映画と漫画の好きな要素を好きに描いたもの」とのこと。作者は世界観を細部にわたって作り込むことが得意であり、本作も細かい設定が多数存在しているため個性的な世界観が広がっている。

舞台は未来、人体をサイボーグ化する技術が発展した世界。サイボーグ化すると、内臓も人工物に変わってしまった者は普通の食物を消化できなくなっていた。そこで、生身の頃と変わらない食生活をおくれるようにサイボーグ用の食事が開発された。そのなかで、人工内臓を持つ主人公・宮地が様々なサイボーグ用の食事や、時には一風変わった電脳食などを楽しんでいくストーリーとなっている。

サイバネとは「サイバネティクス」の略称である。サイバネティクスとは通信工学と制御工学を合わせ、生理学と機械工学、システム工学、人間と機械のコミュニケーションを扱う学問のことを指す。本作はサイボーグと呼ばれる人体を機械化する技術をメインに取り扱っており、そこに食事という生命現象、生理学を取り込んだものが題材であるため、サイバネティクスという用語が使われている。

『サイバネ飯』のあらすじ・ストーリー

サイボーグの食事風景

サイボーグ化技術が普及している近未来。外見だけではなく内臓の一部までもサイボーグ化している主人公・宮地(みやじ)は人工内臓の調子を整えるために透析クリニックを訪れた。そこには、知り合いのサイボーグであるタケも透析を受けに来ていた。透析を済ませた宮地とタケは一緒に食事に行くことになり、ヌードル屋を訪れる。宮地とタケは内臓が人工のものに変わっているため生身の人間と同じ食べ物を消化することができない。そのため、2人はサイボーグ用に作られた合成肉や人工消化器対応麺などで構成されたサイボーグ用ヌードルを注文した。サイボーグ用ヌードルを堪能した2人は次の透析の日にも一緒に食事に行くことを約束した。

ある時、宮地はサイボーグ用の食事と間違えて、生の内蔵用のサンドウィッチを買ってしまった。自分では食べることのできない宮地は誰か食べられるだろうと、知り合いのサイボーグが集まる場所へと持っていったが、みんな外見は人型でも内臓が人工のものに置き換わっていたため、誰も食べることができなかった。しかし、普段食べている合成サンドウィッチと呼ばれるサイボーグ用の物とは違う、みずみずしく美味しそうなサンドウィッチにサイボーグたちはテンションを上げていた。中にはサンドウィッチを見ながら、合成サンドウィッチを食べていつもと違う雰囲気を味わうものまで出るほどであった。そんなサイボーグたちのところに、掃除機型サイボーグ・土井(どい)がやって来て、「いらないならもらうよ」と言い、サンドウィッチを食べた。外見が人型ではない土井がサンドウィッチを食べたことに周りのサイボーグは驚く。土井は見た目は掃除機だが、その中身は生の内臓が残っているため人間用の食事を摂ることが可能だったのだ。その光景を見ていた宮地は「人は見かけによらんなぁ」と呟いた。

電脳街観光

電脳街と呼ばれるネット上に存在する街に、宮地は観光に来ていた。電脳街には宮地の古い友人である木ノ内がいたため、宮地は彼に観光案内を頼んだ。電脳街はある種の観光スポットであるが、中には肉体を捨てて脳だけとなり電脳街に繋ぐことで生活している者たちも存在している。木ノ内がそれに該当しており、電脳街で生活している木ノ内は街に詳しいためどんどん観光スポットを案内していく。現在、電脳街では現実にはあり得ない「無い飯」と呼ばれるものが流行していた。無い飯とは絵画、毒物、空想生物の肉などがあり、ほかにも超巨大なご飯「巨大飯」や、フィクション作品に登場するご飯を再現した「再現飯」などのことを指す。木ノ内の案内のもと、宮地はそれらを堪能していった。そして、宮地は電脳街銘菓「お土産ケーキ」という、街で食べたケーキを現実世界で再現してもらい、それを購入できるサービスの利用を決めた。最後に木ノ内がまだ一般客で試していないものを宮地に体験してほしいと、あるものを食べさせた。それは、電脳街の構築情報をすべて味覚に変換したもので、電脳街そのものを味わえるものとなっていたが、複雑な感覚に宮地は酔ってふら付いてしまう。その姿に木ノ内は「要調整だな」と言いながら、宮地から食べさせたデータを取り出した。宮地は木ノ内の行為に呆れていたが、木ノ内は気にしていない様子であった。
後日、宮地はお土産ケーキを持ってタケの元を訪れた。2人でケーキを食べたが、電脳街で食べたことのないタケは再現率にどう評価したらいいか迷い、宮地は「思い出補正を自主ハックしているようだ」と溢した。

サイボーグたちの身体事情

身体の調子を見てもらうために病院にやって来ていた宮地は、診察が終わると自販機でサイボーグ用のカツサンドを買った。ふと、リハビリ施設でリハビリを頑張る、サイボーグになりたての若者に宮地は気づいた。サイバネリハビリテーション士が声掛けをする姿を見ながら、宮地はカツサンドを食べる。なんらかの事情でいきなり全身サイボーグになってしまった者のリハビリは壮絶で、それに付き合うサイバネリハビリテーション士の声掛けも強いものとなっていたが、宮地がサイボーグ化した頃はもっと苛烈であったため、宮地は「優しいな」と言い、内心で若者を応援した。

宮地は手の調整をしてもらうために、金城整備を訪れた。宮地の手は骨董品と呼ばれるほどに古い物であるため、調整できる技師が限られているため金城整備を贔屓していた。店主の金城(かねしろ)は宮地の手の調整のついでに、手に張ってある感染症予防のための人工皮膚を張り替える提案をしてきた。さらに、その作業を孫娘のカネシロにやらせるという。宮地はカネシロが若いことから心配していたが、任せることになった。金城から電脳にプライベート通話で「孫娘を褒めてやってくれ」と言われて、宮地は孫娘を褒めつつ関節の調整を頼んだ。

カネシロは運送会社を営むトドロキの元を訪れる。トドロキも昔は人間だったが、様々な事情で乗っていたステルス機のような形をした機体と脳神経が癒着してしまったことでサイボーグとなっており、カネシロはその整備にやって来たのだ。すると、先に透析クリニックのナースがやってきていて透析作業をしていた。丁度ナースは作業が終わったところで、お弁当として持ってきていたスムージーを取り出した。そのスムージーを見たトドロキは、過去にいた姉妹機に乗っていた人間たちが実験の結果スムージー状になってしまったことを断片的に思い出してしまう、電脳フラッシュバックを起こす。長く生きたことや脳の萎縮に伴って、記憶領域があやふやになってしまうことがあるトドロキだが、公的には存在しないことにされてしまった姉妹機たちのことを覚えている。そのことを自覚したトドロキは、上機嫌に体を揺らした。

『サイバネ飯』の登場人物・キャラクター

主人公

宮地(みやじ)

主人公のサイボーグの男性。フランクな性格で、他のサイボーグや、電脳街に住む木ノ内とも仲が良い様子。年齢は明かされていないが、タケが「頑固ジジイ」と呼んでいることからそれなりの年齢である模様。全身サイボーグ化しているが、人工筋肉の維持や、一部の生体部品および脳を生かすために食事が必要なタイプのボディである。作中では頭部パーツにトラブルが起きてしまい修理中であるため、毎回頭部が変わっている。ボディの重量は重いが、元々軍用であるため運動能力が高いものとなっている。しかし、日常生活においては高出力過ぎるため、普段はリミッターをかけて生活をしている。本来であれば、軍用のボディであるため返却しなければならないが、宮地自身が気に入っているためにローンで買い取り契約を結んでいる。そのため、現在はローン返済を行っている。
定期的にクリニックで透析治療を受けている。同じサイボーグであるタケとは仲が良く、透析治療の帰りに一緒に食事をしていくほどである。普段は食事に対して大きくテンションを上げることはないが、ARで再現された米を食べたときは、テンションが上がっていた。公共電脳ARの影響で眼前に広告が表示されてしまうのを防ぐ広告ブロッカーの更新をせず、眼前を広告だらけにしてしまうなど面倒くさがりな一面を持つ。
通信時の着信音は「ジリリリリ…ガチャッ」という古いタイプの電話の音を採用している。

宮地の友人

タケ

サイボーグの男性。宮地の知り合いでよく一緒に食事をしている。宮地よりは若いが、若者という年齢ではない模様。フランクでとっつきやすい性格と口調をしている。食事は胸についた口で摂る。口が顔にないことに対して宮地から突っ込まれると、「喋りながら食べられるから楽だ」と答えた。口の構造が肛門と同じ人口括約筋であるため、宮地からは微妙な目で見られることもある。

木ノ内(きのうち)

宮地の友人の男性。肉体を売ったお金と年金を使い電脳街で生活をしている。見た目は青年だが、実年齢は宮地と同じ。電脳街で暮らしていく資金を稼ぐために、外から電脳街に来た観光客のガイドをしている。飄々とした性格をしており、平気で嘘を吐くこともある。肉体があった頃は喫煙者であったが、電脳街で暮らすようになってからは「身体に悪くない煙草は嫌だ」という理由でやめている。友人の葬式など現実世界で用事がある時は、専用の機械とモニターを使って外部と繋がることが可能となっている。

トドロキ

運送会社で配達を担当する大型サイボーグ。ステルス機のような姿の内部に人間の脳が入っている。元々は普通の人間であった模様。昔は姉妹機が沢山いたが、トドロキ以外はすべて死亡している。トドロキは技術の実証実験用戦闘機体に乗っていた際の無茶な負荷が原因で脳神経が機体と癒着してしまい、現在の姿となった。さらに、機体に元々搭載されていた機体制御補助AIと人格が融合してたことが原因で、実年齢よりも幼い喋り方をする。時折、電脳フラッシュバックを起こしては、かつていた姉妹機のことを思い出している。

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