江戸前エルフ(漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『江戸前エルフ』(えどまえエルフ)とは、月島にある神社でご神体として崇められる引きこもりのエルフと、彼女に仕える高校生の巫女の交流を描いた、樋口彰彦の漫画作品。日常系の漫画に非日常感溢れる設定が組み込まれた作風が好評を博し、2023年にアニメ化された。
高校生で高耳神社の巫女でもある小金井小糸は、本物のエルフにして神社の祭神で引きこもりのエルダリエ・イルマ・ファノメタルとの交流に手を焼いていた。東京は変わってしまったと嘆くエルダリエに、小糸は「一緒に東京見物しよう」と持ち掛ける。

『江戸前エルフ』の概要

『江戸前エルフ』(えどまえエルフ)とは、月島にある神社でご神体として崇められる引きこもりのエルフと、彼女に仕える高校生の巫女の交流を描いた、樋口彰彦の漫画作品。
2019年7月号より連載が始まり、日常系の漫画に「エルフ」や「神社」といった非日常感溢れる設定が組み込まれた作風が好評を博す。2023年の4月よりアニメ化され、丁寧な作画と構成が話題となった。

高校生で高耳神社の巫女でもある小金井小糸(こがねい こいと)は、本物のエルフにして神社の祭神のエルダことエルダリエ・イルマ・ファノメタルとの交流に手を焼いていた。60年ほど前に近所の子供にからかわれて以来、エルダは外に出るのを怖がってすっかり引きこもるようになり、1日中ゲームをしたり漫画を読んで時間を潰すようになってしまったのだった。
しかし日常の何気ない会話の中から、小糸はエルダが引きこもる一因が人間とエルフの寿命の違いにあること、かつて江戸と呼ばれていた頃の東京とはすっかり変わってしまった街並みへの恐れがその根底にあることを察する。自分たちを見守りつつ、あくまで外に出たがらないエルダに、小糸は「自分が今の東京を教える、一緒に東京見物しよう」と持ち掛けるのだった。

『江戸前エルフ』のあらすじ・ストーリー

神様の東京見物

高校生で実家の高耳神社の巫女をしている小金井小糸(こがねい こいと)は、400年前に日本に召喚された本物のエルフにして神社の祭神でもあるエルダことエルダリエ・イルマ・ファノメタルとの交流に手を焼いていた。60年ほど前に近所の子供にからかわれて以来、エルダは外に出るのを嫌がってすっかり引きこもるようになり、1日中ゲームをしたり漫画を読んで時間を潰すようになってしまったのだった。
しかし日常の何気ない会話の中から、小糸はエルダが引きこもる一因が人間とエルフの寿命の違いにあること、かつて江戸と呼ばれていた頃の東京とはすっかり変わってしまった街並みへの恐れがその根底にあることを察する。自分たちを見守りつつ、あくまで外に出たがらないエルダに、小糸は「自分が今の東京を教える、一緒に東京見物しよう」と持ち掛ける。

エルダがハマっている珍しいオモチャが月島の玩具店にあると聞いた小糸は、これ幸いと彼女を外に連れ出そうとする。人見知りの激しいエルダはこれを嫌がるが、「今風のもんじゃ焼き」に釣られて結局出かけることとなる。江戸時代のものとはまったく異なるもんじゃ焼きに舌鼓を打ちつつ、すっかり変わった東京の風景を眺めて感嘆するエルダを見て、小糸は「誘ってよかった」と感じる。
やがて小糸は、エルダの巫女となって初めての本格的な神事を迎える。「先代から巫女の役目を継承したことを、氏子たちに報告する」というのがその主旨だったが、“夜泣き蕎麦を食べたいとだだをこねたエルダを、新任の巫女が夜更けにこっそり連れ出した”のがこの儀式の始まりで、現在は巫女とエルダが夜に出掛けて2人でラーメンを食べるという形に落ち着いていた。儀式が始まってからそのことを知った小糸は、「エルダを甘やかし過ぎだ」と呆れつつ、彼女と一緒にラーメンを味わうのだった。

東西エルフ対決

高耳神社に、ヨルデというエルフと彼女に仕える巫女の小日向向日葵(こひなた ひまわり)がやってくる。ヨルデはエルダより1つ年上だったが見た目も言動も子供っぽく、何かにつけては「エルダより自分の方が上」と証明しようと躍起になっていた。小糸はエルダと一緒にわざわざ大阪の廣耳神社から東京まで出向いてきたヨルデを歓迎するが、彼女たちが上京してきたのは推しのライヴが東京ドームで開催されるからだったらしく、「そろそろ行かないと間に合わない」と大急ぎで去っていく。
小糸が向日葵と意気投合してラインをやり取りするようになった一方、エルダはヨルデから風邪をもらってしまい、それからしばらく寝込むこととなる。体調不良で気弱になったエルダからいつも以上に甘えられ、小糸は慌ただしい1日を過ごすのだった。

エルダとスマホ

精霊を使ってあれこれ訪ねてきたり、買い物のお願いをしてくるエルダに辟易した小糸は、彼女に使い古しのスマホを渡す。これを使ってメッセージでやり取りした方が早いと考えてのことだったが、初めてのスマホにエルダはハマりにハマり、時間を考えずにメッセージを送っては「返信してくれ」とせがむようになる。とんでもないスマホモンスターを生み出してしまったと小糸は頭を抱えるが、これまで尽くしてきたのに急に呼ばれなくなった精霊たちもすっかりグレてしまい、反省したエルダは自分のスマホを封印することを決意。小糸は静かに胸を撫で下ろす。
その小糸は、お小遣いを溜めてついに念願の大人っぽいトレンチコートを購入する。しかし子供っぽい彼女にはまるで似合わず、高麗の提案でエルダに着せてみるとびっくりするほど似合っていて、小糸は大いに悔しがる。その流れで江戸のお洒落事情についてエルダから教わる中、彼女は高耳神社の巫女が代々受け継いできたという江戸小紋の着物を持ち出し、これを小糸に着せる。着方次第で様々な魅力を出す着物は顔立ちの幼い小糸にもバッチリ似合い、彼女がこれを喜ぶ一方、エルダは「あまり早く大人にならないでくれ」と言って自分と人間の生きる時間の違いについて想いを馳せるのだった。

50年ぶりの平和祈願

テスト勉強で忙しい小糸が遊んでくれず、エルダは不満を溜めていく。小糸としては「巫女の仕事ばかりしているせいで成績が悪化した」と思われたくないためにがんばっているのだが、エルダがあまりに寂しそうにしているのを見た彼女は、「江戸の生き証人であるエルダに歴史を教えてもらおう」と考える。エルダはこれを快諾するも、話は脱線してばかりでなかなか勉強がはかどらない。
このままではテストの結果が思いやられると嘆く小糸を見たエルダは、思わず「良い点を取ったら美味しいお寿司を御馳走する」と言ってしまう。これに一念発起した小糸はすさまじい集中力で勉強を始め、エルダは「迂闊なことを言ってしまった」と青ざめる。結果、小糸はテストで好成績を収めてエルダの財布に大きなダメージを与えるのだった。

小糸がテスト勉強をがんばっていたのは、「江戸の平和と民の安寧を祈る」という50年周期の神事が近いせいもあった。毎回“江戸でもっとも高い場所”で行われるのが常のこの神事は、今回は東京スカイツリーで開催されることとなり、小糸は「高いところは怖い」と嫌がるエルダの手を取って展望回廊を目指していく。
無事に神事も終わり、ちゃんと巫女としての務めを果たせてよかったと小糸が喜んでいると、エルダが江戸(東京)の平和だけでなく「お小遣いが上がりますように、小糸が怒りませんように」と私的な祈りを捧げ始める。負けじと小糸も「エルダが真面目になりますように」と祈り始め、2人はしばし当てつけのようにお互いの要求を言い合う。

金沢から来たエルフ

小柚子と遊んだり、スタンプラリーに興じながら氏子と交流したりと、エルダと小糸がいつも通りの日常を送る中、金沢からハイラというエルフがやってくる。彼女は前田利家に召喚されたエルフで、エルダより100歳ほど年上であることから「お姉ちゃん」を自称していた。
その洗練された物腰にすっかり魅了される小糸だったが、ハイラが賭け事に目がないこと、エルダへのお土産代も宝くじに使ってしまったことが判明。遅れてやってきたネットで有名なインフルエンサーにしてハイラの巫女の小伊万里いすず(こいまり いすず)は、ハイラが「やめる」と約束したはずの賭け事をしていることを知って激怒する。

宿泊費も賭スッてしまったハイラは、その日は高耳神社に泊まっていくこととなる。出立の際、いすずから「自分たちはどうしたってエルフより先に死ぬ。それでも仲良くなって、彼女たちの心の傷になることが正しいのだろうか」と問われた小糸は、自身も同じことでよく悩むと正直に打ち明けた上で、「それでも仲良くしたいし、そうするべきだ」と伝える。これを聞いたいすずは、吹っ切れた様子でハイラと共に金沢へと帰っていくのだった。

雨の日の出来事

引きこもり気質のエルダは、雨が降ると「外に出なくてよくなった」と喜ぶ。これに呆れながらも小糸が片づけを手伝っていると、押し入れの奥に奇妙なものを発見する。エルダによれば、これは今ではすっかり見なくなったビデオテープというもので、20年以上前に録画した内容がそのままになっているという。
好奇心に駆られた小糸が、近所の電気屋でビデオデッキを借りてこれを見てみると、そこに映っていたのは今の自分と同年代の頃の亡き母の姿だった。「エルダのお陰でお母さんに会えた」と感慨ひとしおの小糸だったが、神社に戻ればエルダは相変わらず自堕落な生活を送っており、お礼を言う気持ちもさっぱり吹き飛んでしまう。

向日葵やいすずと連絡し合うようになっていた小糸は、「あんまり自堕落なままだったら、いつか3人でエルフたちをぎゃふんと言わせよう」と盛り上がる。そんなある日、エルダは「大切なプラモが無くなった、泥棒が入った」と小糸と高麗を巻き込んで大騒ぎを始める。実はこのプラモは雨の日に片づけを手伝う中で小糸が踏んづけて壊したもので、責任を感じた彼女はこっそり直そうとはしたものの、かえって無残な状態にしてしまっていた。
部屋を散らかしっぱなしにしていたエルダも悪いのではという声もあり、小糸への罰は「エルダと一緒にプラモの原作のアニメを視聴する」という軽めのもので決まる。エルダは「自分の好きなアニメだから、小糸もきっと好きになってくれる」と1人で盛り上がるが、当の小糸はその手のものにはまったく興味がなく、早口で解説してくれるエルダの横で居眠りを始めるのだった。

弓耳祭

高耳神社の神事の中でも特に重要なものの1つである、弓耳祭が近づいてくる。これは船の上で的を構えたエルダに、先端が吸盤になった矢を放って吉兆を占うというもので、豊漁と航海の安全を祈願する祭でもあった。泳ぎが苦手で、以前川に落ちた時のことを思い出して「船に乗りたくない」と泣きごとばかり口にするエルダを、小糸は「みんな楽しみにしてるんだから」と懸命に励ます。
弓耳祭では、エルダに向かって矢を射るのは宮司の役目となっていた。当代の場合は小糸の祖父がそれを務めるのが常だったが、その彼が祭の準備中に手首を捻挫してしまったため、急遽小糸が役目を引き継ぐこととなる。弓なんて扱ったことのない小糸が「自信がない」と青ざめれば、エルダもエルダで「小糸にヘッドショットを狙われる」と情けない声をあげる。

かくしてやってきた弓耳祭当日。特訓も虚しく、小糸は矢を外しまくる。自分にはエルダの持つ的に矢を命中させるのは無理だと悟った小糸は、せめて彼女には当てまいと、最後の一矢をわざと大きく外して射る。そんな小糸の思惑を察したエルダは、咄嗟に船から飛び出して自ら的に矢を当てるも、そのまま川の中に落ちて大騒ぎする。それでも、そんな彼女の活躍により、今回の弓耳祭は「命中1本」という形で無事に終わるのだった。
その後エルダは「最近運が悪すぎる」と言ってはよその神社にお払いしてもらおうとしたり、おみくじで自身の運を試そうとしたり、祭神としての自覚が足らない日々を送る。小糸はそんな彼女に時には呆れ、時には一緒になって遊びながら、巫女として側に在り続ける。周囲の人々に優しく見守られながら、永遠の命を持つエルフと人間の少女の一瞬の邂逅は続いていく。

『江戸前エルフ』の登場人物・キャラクター

高耳神社の関係者

小金井小糸(こがねい こいと)

CV:尾崎由香

主人公。明朗快活な女子高生。実家は400年の伝統を持つ高耳神社で、ここで巫女としても働いている。大人っぽいファッションを好むが、童顔の自分には合わないことを悩んでいる。
10年前、母が死んだ時にエルダに慰められたことがあり、この時から彼女に憧れていた。しかしこの時のエルダは服装も違えば風邪気味で声も若干低く、巫女として日常的に顔を合わせるようになってからもしばらく気付かないままだった。

エルダリエ・イルマ・ファノメタル/高耳毘売命(たかみみひめのみこと)

YAMAKUZIRA
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