日本三國(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『日本三國』(にっぽんさんごく)とは、3つの勢力に分かたれた日本を統一することを目指す少年の苦難と戦いの日々を描いた、松木いっかによる漫画作品。
近未来。国家としての日本は衰退を重ねて崩壊し、大和、武凰、聖夷の3つの国に分かたれることとなった。大和に生まれた少年三角青輝(みすみ あおてる)は、権力者の横暴によって家族を奪われ、復讐のために腐敗した国の政治そのものを、そして果てしない争いが続く日本の現状をも変えてみせると決意。軍に入り、仲間を集め、やがてその並外れた才覚を表していく。

『日本三國』の概要

『日本三國』(にっぽんさんごく)とは、3つの勢力に分かたれた日本を統一することを目指す少年の苦難と戦いの日々を描いた、松木いっかによる漫画作品。
緻密な設定と壮大なスケールで描かれた架空戦記物として注目され、2022年にはPVが公開されるなどPRや話題作りも盛んに行われている。2023年のマンガ大賞では5位に輝き、その高いクオリティが改めて評価される形となった。

AI開発競争の惨敗、少子化による衰退、核戦争による大量の移民の流入と悪政、そして暴力革命によって国家としての日本は崩壊。それから1世紀ほどの時が流れ、日本は大和(やまと)、武凰(ぶおう)、聖夷(せいい)の3つの国に分かたれることとなった。
大和に生まれた少年三角青輝(みすみ あおてる)は、権力者の横暴によって最愛の妻の命を奪われる。その復讐のため、青輝は腐敗した大和の政治そのものを、そして果てしない争いが続く日本の現状をも変えてみせると決意。軍に入り、仲間を集め、戦場でその並外れた才覚を発揮して、三國を動かす大器へと成長していく。

『日本三國』のあらすじ・ストーリー

絶望と怒りと決意

AI開発競争の惨敗、少子化による衰退、核戦争による大量の移民の流入と悪政、そして暴力革命によって国家としての日本は崩壊。それから1世紀ほどの時が流れ、日本は大和(やまと)、武凰(ぶおう)、聖夷(せいい)の3つの国に分かたれることとなった。
そんな時代にあって、大和に生まれた少年三角青輝(みすみ あおてる)は、旧時代の知識や技術をこよなく愛する聡明な少年だった。しかしそれを何かを成すために活かすことについては及び腰で、1つ年上の幼馴染である東町小紀(ひがしまち さき)からは「お前には知恵はあるが勇気が足らない」とたびたび苦言を呈されていた。

15歳になった青輝は小紀と結婚し、地味ながら幸せに暮らしていたが、ある時彼らの住む街に大和の内務卿である平殿器(たいら でんき)がやってくる。殿器は「自分の気に障った」というだけの理由で人々を公開処刑し、これを見た小紀は義憤に怒り狂う。青輝はなんとか彼女を落ち着かせて、その場を立ち去る。
しかし翌日、青輝が目を覚ますと家の中に小紀の姿はなかった。慌てて外に飛び出した彼が見たのは、殿器の命令で処刑された小紀の姿だった。殿器は小紀が自分の悪口を言ったことを覚えており、見逃すつもりはなかったのだ。

最愛の妻を奪われた怒りに震える青輝だったが、「ここで自分が激昂して飛び掛かっても殿器の部下に取り押さえられて殺されるだけだ」と判断。“小紀が処刑されるほどの無礼を働いた”ことを認めて謝罪しつつ、弁舌を弄して妻の死のきっかけになった殿器の太鼓持ちを殿器自身の命によって処刑させる。
小紀の葬儀を済ませると、青輝は彼女と暮らした家を発つ。彼女を失った刹那、青輝は「大和の腐敗した政治を正し、殿器に然るべき裁きを降し、下らない戦いを続ける日本を自分の手で統一する」という途方もない夢を抱いていた。

仕官採用試験

政治家になるためのコネも権力も無い青輝は、立身出世のために軍に入ることを画策。そのために辺境将軍の龍門光英(りゅうもん みつひで)が行っている仕官採用試験に参加しようと考える。
その会場となる大阪で、青輝は阿佐馬芳経(あさま よしつね)という2つ年上の少年と出会う。彼もまた「大和を変えたい」という志の持ち主だったが、自身が主導してそれを成すことで阿佐馬家の名を挙げようと考えている芳経は青輝とは根っこのところで相容れず、友ともライバルとも敵ともつかぬ関係となる。

仕官採用試験の内容は、「龍門に膝をつかせる」というものだった。試験に臨んだ者たちが、龍門の化け物じみたフィジカルの前にことごとく諦めていく中、芳経は“真剣で斬りかかり、これを防いだ龍門の姿勢をさらに崩す”という方法で試験をクリアする。
一方、青輝は以前から考えていた農政改革のプランを龍門に差し出し、「これで大和を強くしてください」と訴える。「この改革案は素晴らしいが、膝をつかせていない以上全て私の手柄となる。君はそれでもいいのか」と尋ねられた青輝が「構わない」と答えると、龍門は彼の心意気を気に入って自ら膝をつく。こうして青輝と芳経という2人の合格者を出す形で、今回の仕官採用試験は終了するのだった。

聖夷の征西

聖夷で政変が起こり、輪島桜虎(わじま おうが)という軍人が全権を掌握。彼女は天災と失策で衰えた聖夷がかつての力を取り戻すには、他国の領地を奪い取るしかないと考えていた。聖夷は武凰と同盟中のため、その矛先は当然ながら大和に向けられる。
龍門はこの動きを察して大和の帝に出撃を要請するも、彼が手柄をあげて己の権力を脅かすことを嫌った殿器によってそれを却下される。殿器は「災害で国力の衰えた聖夷が大規模な軍事行動を起こすことはできない」と考えており、自分の息子の平殿継(たいら とのつぐ)を総大将に、龍門にはその補佐としてわずかな兵だけをつけて戦場へと送り出す。

この苦境の中、龍門はその智謀を頼みとする副官の賀来泰明(かく やすあき)ら側近と共に出撃。初めての大きな戦で手柄をあげようと考えていた青輝や芳経は肩透かしを食らうも、「龍門が自分たちを残していくのにはそれなりの意味があるのではないか」とも分析する。
決戦の地は北陸。桜虎はただこの地を侵略するだけでなく、“大和の要”ともいうべき龍門の首を獲ることも目的の1つとしていた。そのために、加賀の地を治める部下の長尾武兎惇(ながお むうとん)に偽りの降伏を指示する一方で、自身は別働隊を率いて大和の領地の深部に密かに進軍する。長尾と合流し加賀を丸ごと手に入れるために進軍してくる大和軍を、自身の別働隊も含めて四方から包囲し撃滅しようというのがその狙いだった。

軍師たちの戦い

長尾の策は賀来に見切られ、龍門の舞台は「わざわざ死地に赴く必要は無い」と加賀の手前で停止。彼らの制止も聞かずに殿継は加賀に乗り込み、壊滅的な損害を受けるも、龍門の手の者たちに救出されてなんとか脱出する。
降伏が偽りだと見抜かれた聖夷軍が一気に大和領内に雪崩れ込んでくることを予想した龍門は、籠城した上で本国からの応援を待つ策に出る。それは政敵でもある殿器に手柄を譲ることにもなりかねなかったが、彼が青輝や芳経を残してきたのはこの時に備えたためだった。

龍門たちの計算では、それでも籠城の体制が整うよりも桜虎たちが進軍してくる方が少しだけ早い。そこで龍門はあえで堂々と桜虎率いる部隊の前に姿を晒し、“伏兵がいるかのように見せかけて撤退させる”空城の計を仕掛ける。かつて父を龍門に殺された桜虎は「仇を討つ好機」と意気込むも、あまりに堂々とした龍門の態度に伏兵がいる可能性を否定できず、やむなく撤退する。
桜虎の放った矢で深手を負うも、龍門は無事に生還。この失態により桜虎の権威は失墜し、聖夷軍を率いる統率力さえ失いかけるも、軍師の閉伊弥々吉(へい ややきち)が「桜虎を排除して聖夷を我が物にするために、全ては自分が裏で画策していたことである」という芝居と共に自らを処刑させたことでこの危機を回避。自分を救うために勝手に事を進め、汚名を抱えたまま果てた弥々吉に感謝と怒りを抱きながらも、桜虎は彼が授けた最後の策である「聖夷の領内に大和軍を誘いこんでの焦土作戦」の準備を進める。

『日本三國』の登場人物・キャラクター

大和

三角青輝(みすみ あおてる)

主人公。頭脳明晰で、15歳にして司農官を任される。崩壊前の日本の知識と技術に強い憧れを持つ。
幼馴染の小紀と結婚するも、「気に食わない」というだけの理由から殿器によって彼女を処刑されてしまう。これに怒り狂う一方、「殿器を殺してもそこまでの話、小紀を死なせたこの世界そのものを変えなければ意味が無い」として、日本統一を目指して軍に身を投じる。

東町小紀(ひがしまち さき)

青輝の1つ年上の幼馴染。感覚と感情で物事を進める少女で、理詰めで物事を考える青輝に対して常々「お前に勇気があれば日本だって変えられる」と期待する言葉をかけていた。
16歳の時に青輝と結婚するも、殿器の横暴を目の前で見てこれを批難した結果、「気に障った」という理由から彼の命令で処刑されてしまう。

阿佐馬芳経(あさま よしつね)

大和建国の功労者の血筋にある少年。年齢は青輝の2つ上。平家に乗っ取られた大和の権力を自分の家に取り戻すことを目的に軍に志願する。
若いながらも剣術と体術に優れ、清濁併せ呑む器の大きさを持つ。一方で極度のマザコンな上にプライドの高さから視野が狭くなりがちなところがあり、人間的にはまだまだ隙が多い。青輝とは軍に入隊する直前に出会い、「大和を変えたい、自分の手で日本を統一したい」という最終的な目的を同じくするも、「自分はエリートである」との意識から完全には受け入れず同志というより競争相手と見なしている。

龍門光英(りゅうもん みつひで)

YAMAKUZIRA
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@YAMAKUZIRA

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