ブスに花束を。(ブス花)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ブスに花束を。』(ブス花)とは、作楽ロクによる少女漫画。2016年から2022年まで『ヤングエース』(KADOKAWA)にて連載された。自らをブスと自虐する高校生の田端花(たばたはな)が、憧れのヒロイン気取りで浮かれていたところを、スクールカースト上位でイケメンと評されている上野陽介(うえのようすけ)に目撃されたことから距離が縮まっていく学園ラブコメディである。ラブコメディでありながらも、主人公は自虐系喪女の高校生という斬新な設定が話題を呼んでいる。

『ブスに花束を。』の概要

『ブスに花束を。』(ブス花)とは、作楽ロクによる少女漫画である。
副題はApril showers bring forth May flowersで、直訳すると「4月の雨は5月の花を咲かせる」、ことわざだと「不幸の後に幸福が訪れる」という意味になっている。略称はブス花。
2016年5月号から2022年10月号まで『ヤングエース』(KADOKAWA)にて連載され、2017年pixivコミック恋愛部門1位、2019年次にくるマンガ大賞コミック部門5位に選ばれる。
2022年11月、コミックス最終巻とヤングエース12月号にて本作のテレビアニメ化が発表された。
冴えない容姿や、ネガティブ思考でオタクな喪女の田端花(たばたはな)と、クラスで1番の人気者の上野陽介(うえのようすけ)による、2人の恋愛模様をコミカルに描いた学園ラブコメディ作品。
誰もいない早朝に登校し、花瓶の花をこっそり髪につけてヒロイン気分に浸っていた花は、その姿を陽介に目撃されてしまうことから物語は始まる。
ブスに花は似合わないと笑い者にされるかと思いきや、口止めしたいという花の気持ちを「二人の秘密な!」と少女漫画のような台詞を言いながら受け止める陽介に、ときめきを隠せない花。
それから秘密の共有をきっかけに、対極的な2人が徐々に距離を縮めていく様子を、ギャグ要素や胸キュンシーンを交えながら描かれる。
また、物語を通して、スクールカースト底辺のモブキャラだからと自虐しながら他者との交流を避け、目立つことを嫌って生きてきた花が、恋や友情を通して様々な感情を経験し、大きく成長する姿も見られる。

『ブスに花束を。』のあらすじ・ストーリー

花と陽介の出会い

クラスのイケメン・上野陽介(右)と「モブキャラ」と自虐している田端花(左)

本作の主人公は高校1年生の田端花(たばたはな)。自らをブスで喪女と自虐し、学校でも1人でいることが多い。
日課として美化委員の仕事をしており、教室に活けている花の世話をしている。
しかし、こんなブスが花をいじってるところを見られて下手に目立ちたくないと、早朝に登校していた。
花に触れている時間の楽しさに浸るあまり、余った生花を髪に挿してヒロイン気取りで浮かれていたところ、たまたま早く登校してきたクラスで1番の人気者の上野陽介(うえのようすけ)にその姿を目撃されてしまう。
花は自分とは正反対で一番見られたくないタイプの人に見られたと落ち込み、何とかして浮かれている自分を見なかったことにしてほしいと陽介に口止めを試みるが、コミュニケーション下手なこともあり、なかなかうまく伝えられない。
昼休みに靴箱で陽介と出くわし、少し会話をすることはできたが、陽介の友人の五反田鉄男(ごたんだてつお)が現われたため、結局口止めをすることは出来なかった。
そのまま放課後になってしまい、イケメンに話しかけるなんてブスにはハードルが高すぎたのだと自虐をしながら、美化委員の仕事をするため、重い足取りで花壇ヘ向かう。
花に水をやっていると、そこへ「良かった。やっぱり田端だ!」と陽介が駆けてくる。
陽介は昼休みに花との話が途中だったのを気にしており、ずっと花を探していた。
花は自分を気遣ってくれた陽介のことを嬉しく思いつつ、ようやく今朝見たことを内緒にしてほしいと話すことができた。
すると、陽介は驚いた表情で花を見つめる。
陽介は教室の花を変えていたのは誰なのだろうとずっと気にしており、「ずっと会ってみたいと思ってたんだ。田端だったんだな」と満面笑みで答えた。
そしてこの事は二人だけの秘密にしようと陽介は言い、まるで少女漫画のようなその台詞に花は胸をときめかせていた。

花とすみれ

二人で初めて会話した日から、陽介が頻繁に話しかけてくれるようになり、嫌ではないが戸惑ってしまう花。
美化委員の仕事を押しつけられた花の手伝いをしてくれたり、帰り際に一緒にコンビニに寄ったりする陽介の行動は、クラスでひとりぼっちだった花にとって未知の体験の連続だった。
そして、陽介があまりにも自然に近寄ってくれるため、花は友達に見える距離で歩いても迷惑ではないのかな、と思い始めていた。

ある日、クラス1の美少女と評されている鶯谷すみれ(うぐいすだにすみれ)の発案によりクラスの皆でボウリングへ行くことが決定し、何故か花も誘いを受ける。
実は陽介に好意を抱いているすみれは、陽介と地味な容姿の花が親しくしている様子が気に入っておらず、何か裏があるのではないかと友達を装い花に近づこうとしていた。
一方、運動神経が壊滅的な花はガーター続きで落ち込んでいたが、陽介のアドバイスの元見事なストライクを取ることができ、また2人の距離が縮まっていく。
花と陽介の距離の近さにやきもきするすみれは、もっと花に探りを入れる必要があると決意する。
そのため、すみれは学校にいる間も花と行動を共に過ごし、放課後の美化委員の仕事までも手伝うことになった。
その中で、陽介が花の前では時々特別な顔を見せることに気づくすみれ。
陽介の様子を見て焦るすみれは、自分自身の女子力を見せつけて花に陽介を諦めてもらおうという打算的な気持ちから、次の日の放課後に花をショッピングに誘う。
そんなすみれの思惑を知らない花は、自分のような喪女がすみれと2人で遊ぶことに、申し訳なさと同時に小さな喜びを感じる。
買い物の合間にフードコートで休憩することになり、花が席を外している間にすみれはしつこいナンパに出くわしてしまう。
花は無理強いをされて嫌がっているすみれを見つけ「連れて行かないで下さい。この子はっとっ友達なので」と声を強めて言い放ち、ナンパを追い払うことができた。
緊張しながらも自分を助けてくれた花の行動を見たすみれは、陽介と親しくしている真相は結局わからなかったものの、花の人柄を認めざるを得なくなった。
この出来事がきっかけですみれとの交流が深まっていき、徐々にクラスメイトとも話す機会が増えていく。

すみれの告白

夏休みに入り、花と陽介はバーベキューや花火大会など一緒に過ごすことが増え、少しずつ距離を縮めていった。
花は日々陽介と交流を深めていくうちに、人として尊敬する気持ちだけではなく、無意識の恋愛感情も寄せていくようになる。

季節は変わり文化祭の準備が進む中、花の事を想う陽介の姿に動揺し焦ったすみれは、勢いで陽介に告白する。
しかし陽介は、すみれの告白によって花への想いが友達ではないとハッキリ自覚することができ、すみれの告白を断ってしまう。
落ち込むすみれだったが、事情を知らない花が自分を一生懸命に励ます真摯な姿や、今まで花が自分に優しくしてくれた思い出を振り返り、「ライバルが田端でよかった」と素直に失恋を受け入れる。
鉄男も失恋した後のすみれの事を気にかけており、以後、すみれと一緒に過ごす時間が増えていく。

陽介の告白

文化祭も無事に終わりもうすぐ冬休みを迎える頃、打ち上げと称して花と陽介はクラスメイトとカラオケを訪れた。
すみれや、新橋努(しんばしつとむ)、大塚彩華 (おおつかさやか)など賑やかな友達に囲まれ楽しい時間を過ごす。
そこで一時的にカラオケルームを退室した花は、同じく部屋の外にいた陽介が知らない女子から告白されている場面を目の当たりにする。
陽介が自分に恋愛感情を抱いていることを知らない花は、彼が「俺、好きな人がいるから」と告白を断っている姿にショックを受け、思わず涙をこぼしてしまう。
ここで花は、陽介にただ憧れているのではなく、恋をしているのだとハッキリと認識する。
泣いた顔が戻るまでと外階段でうずくまっていると、自分を探しにきた陽介に見つかってしまう。
泣き顔を何とか誤魔化そうとする花を陽介はそっと抱き寄せて、もっと自分に頼って欲しいと想いの内をこぼし、「好きだから」と花の目をまっすぐ見つめる。
そこへすみれと彩華が現れる。花と陽介の気まずそうな空気を読んだすみれ達は、花の具合が悪そうだと指摘し、早退するように促すのだった。そして、花は帰路に着く。

次の日、陽介は答えも聞けず、上手く伝えられなかった昨日の告白を後悔していた。
ちゃんと話したい陽介は花に電話をかける。そこで花が、友人として泣いている自分をただ慰めてくれただけだと受け取っていることが分かり、陽介は昨日の告白で何も伝わっていないことにショックを受ける。
行き詰まった陽介は、鉄男に相談しようと家に出向くと、そこにはすみれの姿もあった。
事情を知ったすみれは、「わかってくれるまで好きって言いなよ」と陽介を勇気づける。
その言葉に背中を押された陽介は、花に会いに行くことを決意する。
一方、花は花で昨日の事を気にしており、無心になろうと部屋の掃除や雪かきに身を入れるが、気を抜くと陽介の事ばかりを考えていた。
そこへ陽介が現われて、2人は公園へ向かい並んで腰をかける。
昨日の事を口外するなと言いに来たんだと悟った花は、「昨日のことなら誰にも言いません」と泣きたい気持ちを堪えながら話し出す。
陽介が花のことを抱きしめたなんて知れたら彼も困るだろうと気遣いをしたが、そんな花に陽介は「俺の話を聞いて!」と、語気を強めて遮る。
そして花のことは友人としてではなく「田端だけだよ そういう好きだ」と、真っ直ぐ想いを伝えることができた。
その告白を聞いた花は嬉しさと驚きのあまり倒れ込んでしまう。
また返事をもらえなかった陽介だが、伝わった分前進したと前向きになっていた。

2度目の告白

告白の返事をしようと決意した花だが、学校では陽介に好きな女子がいると噂されていることに加え、自分に自信が持てない性格のせいでなかなか行動に移せないでいた。
ある日、花と陽介は映画館で花の中学の同級生で自分のバイト先の仲間でもある赤羽慎弥(あかばね しんや)と出くわす。
花は陽介に気遣って、赤羽に陽介とデートだと思われないように必死に誤魔化すが、その様子を見た陽介は花が赤羽に好意を抱いていると誤解する。
その後も、タイミングの問題や花の消極的な性格が強めに出てしまい2人はすれ違ってしまう。

そのような状況にありながらも、花屋の律子(りつこ)のアシストもあり花は陽介に胸の内を明かすことができた。
今まで返事を燻っていたのは、全部自分がブスなせいだと涙ながらに訴える。
しかし、陽介はそれを遮り「誰がなにを言っても田端が好きだ」と再度想いを伝え、花もそれに応える。
晴れて恋人同士になった2人だが、花の提案もありしばらく内緒で付き合うことが決まる。
ところが、デート中にテレビの取材を受けた事により大々的に2人の交際が公になったり、互いの家族と仲良くなっていく事で、学校内・家族ともに公認の仲になっていく。

それぞれの道

陽介や花だけでなく、すみれは素の自分を見せられる鉄男と付き合うことになり、彩華はさり気ない優しさを見せてくれる新橋に心惹かれたりなど、クラスメイトの恋愛模様も丁寧に描かれている。
それからまた月日は流れ、ついに受験を意識する高校三年生を迎える。
花は進路で悩んでいた時に、陽介が図書室で海外留学の本を探している様子や、英語を熱心に勉強している姿を見かける。
花は陽介が海外へ行きたいのだと勘違いをし、1人遠距離恋愛を覚悟するようになる。

新橋が提案したクリスマスパーティーに、クラスメイト達と参加した花と陽介。
その帰り道、花は植物関係の大学を志すことにしたと陽介に報告をし、続けて陽介の海外留学の夢を応援すると意気込んだ。
それを聞いた陽介は慌てて海外留学を否定するが、距離が離れたとしても信頼してくれる花の気持ちが嬉しいと言い、花の夢も応援すると微笑む。
花はそれぞれ夢を追った先でも繋いだ手が離れてしまわないように、2人で乗り越えていきたいと強く思った。

結婚式とプロポーズ

高校生活から数年後、新橋と彩華の結婚式に呼ばれた花。
陽介は海外でスポーツライターとして活躍しており、飛行機の到着時間が少し遅れるとという連絡を受ける。
会場には高校生活の友人達が多く集まり、すみれや鉄男の姿も見えた。
その後、無事に陽介も到着し、友人達の余興や、花お手製のブーケを使った結婚式は大いに盛り上がった。

結婚式の帰り道、陽介は律子の花屋で用意していた花束を花に差し出し「花 俺と結婚してください」とプロポーズをする。
花も「ずっと一緒がいいです」と涙を流しながら快諾した。

それから2人は結婚し、幸せそうに庭の花の手入れをしている場面で幕を閉じた。

『ブスに花束を。』の登場人物・キャラクター

田端花(たばたはな)

本作の主人公。高校1年生。
性格は大人しく心優しいが、自らを「ブス」や「スクールカースト底辺のモブキャラ」と自虐しながら生活している。
少女漫画や乙女ゲームを好むオタクでもあり、クラスメイトにバレないように隠れて楽しんでいる。
少女漫画のヒロインへの憧れが高じて花の世話をすることが好きになり、学校ではクラスの美化委員を務めている。
ある日、気まぐれで余った花を髪に挿してヒロイン気分に浸っているところを陽介に目撃されてしまうが、これがきっかけで陽介と話す仲となる。
入学直後は彼氏どころか友人もおらず、「ぼっち」を自称するほどクラスで浮いていたが、陽介を通して他のクラスメイトとの交流が増えていった。
次第に、陽介を憧れから異性として意識するようになるが、自分に自信を持てず消極的になる。

上野陽介(うえのようすけ)

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