アルスの巨獣(アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ
『アルスの巨獣』とは、ただ動き回るだけで大きな被害を生み出す巨獣が存在する世界で、大国の思惑に利用される少女を救うために戦う主人公と仲間たちの活躍を描いたオリジナルアニメ作品。
「死に損ない」を自称し、凄腕の巨獣狩りでもあるジイロは、ある時クウミと名乗る少女と出会う。彼女が人知を超えた力を持つカンナギであること、人類帝国に追われていることを知ったジイロは、かつて己が守るべきカンナギを失った時に負った心の傷に促されるまま、クウミを守らんとする仲間たちと共に人類帝国に立ち向かう。
『アルスの巨獣』の概要
『アルスの巨獣』とは、ただ動き回るだけで大きな被害を生み出す巨獣が存在する世界で、大国の思惑に利用される少女を救うために戦う主人公と仲間たちの活躍を描いたオリジナルアニメ作品。
勇者シリーズなどで知られるアニメーターのオグロアキラが監督、人気ライトノベル作家の海法紀光が脚本を務めており、実力派スタッフによるオリジナルアニメということで注目を集めた。
多種多様な姿をした、文字通りの“巨獣”が存在する世界。人々はたびたび発生する巨獣の被害に苦しみつつ、これを討伐して得られる物資によって豊かな生活を送っていた。
「死に損ない」を自称し、凄腕の巨獣狩りでもあるジイロは、ある時クウミと名乗る少女と出会う。彼女が人知を超えた力を持つカンナギであること、人類帝国に追われていることを知ったジイロは、かつて己が守るべきカンナギを失った時に負った心の傷に促されるまま、クウミを守らんと人類帝国に立ち向かう。2人の旅路には次第に仲間が集まり、やがて巨獣と世界の秘密を暴いていく。
『アルスの巨獣』のあらすじ・ストーリー
実験体の少女と死に損ないの男
多種多様な姿をした、文字通りの“巨獣”が存在する世界。人々はたびたび発生する巨獣の被害に苦しみつつ、これを討伐して得られる物資によって豊かな生活を送っていた。
ある時、世界屈指の大国である人類帝国の研究所から、「22番目の実験体」と呼称される少女が脱走。近くの街へと逃げ込み、そこで親切な女将に保護される。あまり長居して迷惑をかけるわけにもいかないと少女は早々に立ち去るが、女将が「クウミ」という名前であることを知り、それを自身の名前としても使い始める。
この頃、同じ街にジイロという男が来訪していた。ジイロは「死に損ない」を自称する巨獣狩人で、ここで巨獣を狩って日銭を得ようと考えていたのだった。行商人のミャアから巨獣狩りの人手を募集している場所を聞いたジイロはそちらに向かい、見事に巨獣を狩猟する。一方そのミャアはクウミと出会い、自分の商品の「世界を救う者だけが身に着けられる指輪」が勝手に嵌まって取れなくなってしまった彼女に金の臭いを感じ取って同行を申し出る。
その夜、昼間ジイロたちが倒したものよりはるかに大型の巨獣が街を襲撃。同じタイミングでクウミは人類帝国の兵士に見つかってしまい、ジイロは成り行きで彼女を守り、兵士たちと大型の巨獣を相手に大立ち回りを演じる。クウミは人知を超えた力を持つ「カンナギ」と呼ばれる存在だったが、これは一歩間違えば暴走する可能性のある危険なもので、「ナギモリ」というそれを抑える存在とコンビで動くのが常だった。かつてナギモリとして活躍していたジイロは、済し崩し的にクウミの逃避行に付き合うこととなり、ミャアも合わせた3人で街を脱出する。
錯綜する思惑
人類帝国の追ってから逃れてあちこちの村や街を移動する中、ジイロたちは「早とちり」の異名を持つケモビトの少年メランや、同じくケモビトでナギモリを忌み嫌う女医のロマーナといった者たちを旅の仲間に加えていく。彼らの目的は修行であったり、カンナギの保護であったりと様々だったが、いくつもの苦難を乗り越えていく中でジイロたちは強い絆で結ばれていった。
一方、人類帝国の側も様々な動きを見せる。クウミが囚われていた研究所の所長であるメザミは、彼女がカンナギとして安定した力を発揮していることに強い興味を抱き、執拗にこれを追跡。彼らと政治的に敵対する立場にある帝国の若き女将軍ツルギもまた、クウミの存在に注目していく。高名な巨獣狩りにして歴戦のナギモリでもあるゼンという老人も何が目的か一行の前にたびたび現れるようになり、ジイロに期待を寄せる。
そのジイロは、恋人でもあったトオカというカンナギと共に幾多の敵を討ち取るも、人類帝国の兵士として参加したある作戦で無数かつ強力な巨獣の群れに敗れて彼女を失うという過去を持っていた。旅のパートナーとして、あるいはそれ以上の存在としてジイロを意識するようになっていたクウミがこれを知って驚く一方、ジイロはジイロで旅の中でトオカの故郷を訪れ「いつまでも過去に縛られたままでは前に進めない」と踏ん切りをつけ、かつて守れなかった大切な人の分まで今の仲間を守ろうと決意する。
そんな彼らの前に、ファザードというナギモリが現れる。彼はジイロがトオカを失った作戦で共に戦ったかつての仲間だったが、どういうわけか過去の記憶の全てを失っていた。さらにファザードはクウミそっくりのカンナギを連れており、一行を幾度となく襲撃。その都度なんとかこれを退け、あるいは逃げることを繰り返すジイロたちだったが、クウミは自分と瓜二つのカンナギに「なぜ死ななかった」と追及されて困惑。さらに彼女がカンナギとしての力を暴走させて息絶えるところを見てしまい、恐怖と混乱に戦慄する。
研究所の壊滅
人類帝国の研究所では、人工的にカンナギを作り出す研究が進められていた。ファザードが連れていたカンナギがクウミそっくりだったのもこのためで、メザミが彼女をしつこく追うのも「極めて安定性の高い実験体」であることをジイロたちとの旅で証明してしまったことが理由だった。
研究所の中しか知らなかったクウミは、自分が何者なのか、どういうことをされているのかもよく分かっていなかったが、外の世界で様々なことを学んでこの事実を認識。「自分と同じ実験体の少女たちを救いたい」と考えるようになる。メザミが健在である限りは追っ手が無くなることもないと判断したジイロたちもこれに協力し、一行は研究所の攻略を計画する。一方ミャアは、自分と瓜二つの少女たちと念話のような形で交信し、実験体の暴走を目の当たりにした際にクウミが救世主の指輪を作動させたことを報告。なんらかの事態に向けて独自の準備を進めていく。
旅の始まりの地へと舞い戻ったジイロたちは、クウミを作り出した研究所を襲撃。ファザードを退け、実験体の少女たちを保護していく。そのファザードはジイロとの戦いの中で「メザミに記憶を消されて利用されていた」ことを悟り、激昂してメザミに襲い掛かるも、突如巨獣のごとく目を赤く輝かせた彼に返り討ちにされる。
研究所の最深部に辿り着いたジイロとクウミは、そこでメザミから「アルスの神の降臨が近い」との話を聞かされる。この世界に生きる全ての人は神への供物として作られたものであり、赤い目の巨獣はそれらが十分に育ったかどうかを見極めるための先兵。メザミは自らが巨獣の力を手に入れることで、神に成り代わろうと考えていた。
巨獣と同等の力をその身に備えたメザミにジイロも追い詰められ、クウミは「完全に力を制御する実験体の成功例」として連れ去られそうになる。しかしメザミが仲間たちを愚弄する言葉を口にした途端、クウミは「私の仲間をバカにしないで」と激怒し、彼女の怒りに呼応するように研究所に囚われていた巨獣が動き出す。メザミは逃げる間もなく巨獣に殺害され、彼らの大暴れによって施設も崩壊し、研究所は壊滅するのだった。
審判の時の始まり
その後一行の前にツルギが現れ、救出した実験体の少女たちごとモリビトと呼ばれる亜人種の里に案内することを提案される。ツルギは「いずれメザミと対決し、彼の野望と研究を闇に葬ろう」と考えており、ジイロたちが代わりにメザミを討ってくれたのは渡りに船の話だった。ジイロたちがツルギの提案を受けようと決めたところで、突如クウミが吐血。ツルギによれば、メザミによって過度に強大な力を与えられた実験体たちは寿命が極端に短く、モリビトの里で力を封印したとしても余命は1年が限界だという。それが己の運命に抗い、戦争を食い止め、同胞たちを救う奇跡を果たしたクウミに与えられる結末なのかと、ジイロは絶望する。
クウミの体調のことについて知られるまいとするジイロだったが、彼女の誘導に引っかかってうっかりこれを口にしてしまう。自分の余命が残りわずかなことを知ったクウミは、それでも自分は仲間に恵まれて幸せだと言い切り、叶うならずっと今のまま旅を続けたいと語る。
モリビトの里で、一行はメザミがクウミたち実験体を生み出す際に使っていたものに似た装置を見せられる。繁殖力の低いモリビトたちは、この装置で人工的に子孫を増やすことを長いこと続けており、メザミはこれに目をつけて技術を盗んだらしい。自分たちの作った技術のせいでクウミたち実験台が苦しむことになったと、里長のクリュネスはクウミに謝罪する。そのクリュネスたちは、クウミが身に着けていた指輪を確認し、「審判の時が近い」と警戒を露にする。“審判の時”とはメザミも語っていたアルスの神の降臨のことであり、ツルギやクリュネスはこれに対抗するために力を合わせて様々な準備を進めていたのだった。
その後、クウミの体調を改善するための儀式が執り行われる。しかしその最中、赤目の巨獣の群れが里を襲撃。恐れていた“審判”が始まったと、ツルギたちは顔色を変える。ジイロが迎撃に向かい、ゼンも応援に駆け付けるが、多勢に無勢で苦戦を強いられる。これを知ったクウミは、「仲間を失ってしまったら、私の夢は叶わない。独りぼっちの未来と仲間を守れる今なら、私は後者を選ぶ」との主張でクリュネスやロマーナを説き伏せ、2度と再開することはできないと知りつつ儀式を中断してジイロの下に向かう。
救世の指輪の真価
里の前で熾烈な戦いを繰り広げるジイロと合流したクウミは、「私がいないとまともに戦えないのに、子供みたいな意地を張るな」と彼を一喝。クウミを守りたい一心でジイロがこれに反論し、それこそ子供じみた口論が交わされる中、今度はファザードがその場に現れる。自分を利用したメザミへの復讐に猛るファザードは、彼の技術によって生まれたクウミを亡き者にせんとしていた。彼を迎え撃つため、やむなくジイロがクウミの力を借り受ける一方、ミャアはまたも瓜二つの少女たちと交信しつつ「いよいよ大仕事だ」と気合を入れていた。
巨獣はモリビトの里だけでなく、ジイロたちがこれまでに立ち寄った村や街、帝国の都までをも襲撃していた。モリビトたちはなんとか防戦を続けていたが、ツルギは「伝説に謳われた“審判”とは、自分たちが力を合わせれば普通に対抗できる程度のものなのか」と訝しむ。果たして彼女の懸念は当たっており、暴れ狂う無数の巨獣の向こうには、無尽蔵に巨獣を生み出す「巨獣の母」が立ち尽くしていたのだった。
ファザード相手に苦戦していたジイロは、駆け付けたゼンに彼の相手を任せて巨獣の母の討伐に向かう。「俺の記憶を返せ」と狂乱するファザードによってゼンは深手を負わされるが、相打ちに近い形でファザードも倒れる。
巨獣の母の下に辿り着いたジイロだったが、クウミと融合した状態ですらまったく攻撃が効かず、万策尽きて倒れ込む。クウミは自爆してでも巨獣の母を討とうとするも、ここに“成長した姿のミャア”が突如現れ、クリュネスたちが調査のためといって外した彼女の指輪を差し出す。
ミャア曰く、巨獣の母は通常の攻撃では倒すことができず、それを成せるのは指輪の真の力を解放できる者のみなのだという。彼女に促されるままクウミは指輪の力を解放し、巨獣の母を撃破。これにより各地を襲っていた巨獣たちも力尽き、全ては解決したかに見えた。しかし、「巨獣の母を倒すこと」こそがツルギたちが恐れていた“審判”が始まるトリガーであり、一行の頭上には巨大なモノリスが出現。ジイロたちの最後の戦いが始まる。
『アルスの巨獣』の登場人物・キャラクター
クウミ
CV:羊宮妃那
人知を超えた力を持つカンナギの少女。人類帝国に捕獲され実験材料扱いされていたが、隙を見て脱出する。並外れた身体能力の持ち主で、食べることが大好き。
人類帝国に捕まっていた期間がかなり長かったらしく、世間知らずなところがある。超常の力を内に秘めたカンナギという存在で、矢で射かけられても血が出ず、傷口から人体を一瞬で消し炭にする業火が噴き出すなど謎多き人物。
ジイロ
CV:森川智之
巨獣を狩って生計を立てている男。かつてはナギモリとして戦っていたが、その際にトオカという守るべきカンナギの女性を死なせてしまい、以降「死に損ない」を自称するようになる。
成り行きからクウミのナギモリとなり、彼女やミャアと共に逃避行を続けていく。
ミャア
CV:芹澤優
見た目は幼いが、各地を回って物を売り歩くケモビトの行商人。語尾に「ニャ」をつける独特の口調が特徴。
常に頭に猫を乗せており、一般の人間からは“被り”と呼称されている。見た目がまったく同じ存在が何人か存在しているらしく、それぞれが各地で活動している。