キララ(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『キララ』とは、原作者・平松伸二による高校野球とバイオレンスをテーマにした漫画作品で、集英社の『週刊少年ジャンプ』上にて1986年から1987年まで連載された。銀行強盗犯の凶弾を受けて余命わずかとなってしまった天才投手キララが、自分自身の生きた証を残すため、関東一の不良高校・柴虎高校に転校して甲子園出場を目指すバイオレンスな展開が満載の破天荒な野球漫画。連載当時は全14話で打ち切りとなってしまったが、リイド社より2021年3月に『新装版 キララ』が刊行されている。

『キララ』の概要

『キララ』とは、原作者・平松伸二による高校野球とバイオレンスをテーマにした破天荒な漫画作品で、集英社の『週刊少年ジャンプ』上にて1986年47号から1987年11号まで連載された。ジャンプコミックス単行本は全1巻。平松伸二最後の『週刊少年ジャンプ』連載作品でもある。
夏の甲子園出場を賭けた東東京大会予選決勝で、帝城高校のエース生沢輝良々(いくさわきらら)は、銀行強盗から恋人の奈美(なみ)を助けようとして彼女と共に犯人の銃弾に打たれてしまう。銃弾が脊髄を傷つけたため下半身不随となってしまった奈美。しかしキララの状態はもっと深刻だった。強盗の撃った弾丸が摘出できないまま心臓の近くに残ってしまい、その影響で彼は余命数年の身となってしまったのである。自身の命が残りわずかと悟ったキララは自身が生きた証を残すため関東一の不良高・柴虎高校に転入して最底辺から甲子園優勝を目指すことを誓う。
高校野球がテーマになっているが、凶悪な悪党が多数登場して残虐に暴れまくるという平松伸二らしいバイオレンスな描写が多く、野球というよりも破天荒なケンカがメインとなっている。わずか14話で打ち切りとなってしまったため、試合は宿敵竜国高校との対抗試合1試合のみとなっている。
この作品を最後に、平松伸二は黄金時代に突入していた『週刊少年ジャンプ』を離れる事になったが、その後は青年誌に移籍して持ち味を最大限に活かした名作『マーダーライセンス牙』をヒットさせた。
連載から30年以上を経て、リイド社より2021年3月に『新装版 キララ』が刊行されている。

『キララ』のあらすじ・ストーリー

銀行強盗事件発生

類まれなる才能を持つ高校生、剛腕投手生沢 輝良々(いくさわ きらら)は、恋人である斉藤奈美(さいとうなみ)が見守る中、甲子園出場をかけて東東京大会の予選を戦っていた。今すぐプロに通用するとまで言われる天才投手キララは、相手打線を全て三振で0点に抑えたまま9回を迎えていた。圧倒的な実力を誇りつつも勝負に対するこだわりが薄く、肝心な場面で手を抜いてしまうという性格が災いして、27者連続奪三振がかかっていながら気を抜いてその大記録を逃してしまう。
そこに大久保という銀行強盗が警察に追われてその球場へと逃げ込んでくる。捕まれば死刑は確実とばかりに暴れ回る大久保。観客席に乱入して来た大久保はなんと奈美を人質に取って国外逃亡を要求した。
そこに森田刑事が登場し、投降の説得を続けるが応じる様子のない犯人。すると試合終了後のキララが奈美を救うために飛び出し、得意の豪速球を犯人に投げつける。そのボールは森田刑事の上着をぶち破って犯人を強襲する。その隙に奈美を助け出そうとするキララだったが犯人がとっさに発砲し、2人とも撃たれてしまう。犯人は逮捕され、すぐさま病院に運ばれた2人。
何とか一命を取り留めたキララと奈美であったが、奈美は脊髄損傷という重傷のため、下半身の自由を失って車椅子生活となってしまいテニスでトッププレイヤーを目指すことはできなくなった。一方のキララは、体内に残った弾丸の摘出が出来ずにそこから漏れ出した毒素に冒され、余命あと数年という悲劇的状況に追い込まれてしまうのであった。医師から容態を聞き「やつの命はあと数年だというのかー!?」と驚く森田刑事。
しかし車椅子生活になりながらもテニスに対する情熱を絶やさない奈美に感化され、キララも必ず甲子園で優勝すると決意する。奈美はリハビリから開始するというゼロではなくマイナスからの出発ならば、自分もマイナスからの出発とすることを宣言し、野球の名門帝城(ていじょう)高校から関東一の不良高校柴虎(しばとら)高校へ転入して甲子園を目指すこととなる。

柴虎高校への転入

天才投手キララは関東一の不良高校柴虎高校へ転校するが、その底辺ぶりは想像以上で、校舎のガラスはほぼすべて割られており、授業を聞く生徒もいないという状況である。さらに野球部の惨状は凄まじく、筋金入りのワルな部員たちが博打や麻雀、花札に明け暮れていて野球をしている様子はない。
そんなある日、この状況に愛想を尽かして退部しようとする山田一郎(やまだいちろう)を、部員たちが磔にしてリンチを加えている場面に出くわしたキララは、黙っていられず得意の豪速球で山田を拘束していた縄を引きちぎる。
これに怒り心頭の不良たちは、入部テストと称してキララの立つ位置から球を投げて全員を空振りにすることを要求する。キララが振りかぶって球を投げると、その豪速球は難なく不良野球部員全員を空振りにしとめ、キララは無事入部することになった。この結果に不良野球部員がキレてバットに仕込んであった日本刀でキララに斬りかかる。そこにこの一部始終を見ていた森田刑事が現れ、不良が構えた日本刀に向けて発砲すると不良たちは逃げ出してしまう。ひとまず不良部員たちとの勝負はついたが、今は野球部員が山田しかいないためキララはまずは野球部のメンバーを集めなくてはならない。「いざとなったら対抗試合はふたりだけで戦うさ!」と強がるキララ。
ある日、森田刑事の元に凶悪事件発生の電話が入る。現場に急行するとそこに1人の男が現れて強盗を蹴散らす。この男は実は柴虎高校2年の赤木(あかぎ)という3年生も一目置く存在である野球部員なのであった。キララとの勝負を経て、この頼もしい赤木が野球部員としてキララに協力することになった。真剣に打ち込むことを探していた赤木は、キララとの勝負でついに野球に本気で取り組むことを決めたのであった。

竜国高校との試合

山田、赤木、そして野球部主将の座門(ざもん)、さらにかつて帝城野球部員だったが退部してバンドを組んでいた4人の選手たち、マネージャーの本田今日子(ほんだきょうこ)を仲間に加えたキララは、ようやく9人揃い竜国(りゅうこく)高校との練習試合に挑む。
竜国高校は全員バイクを乗り回し、高校生離れしているワルばかり。試合開始早々まともな試合になるはずもなく、バットを投げつけて来たり、ビーンボールを投げたり、包帯を使って走塁妨害したりと勝利のために汚い手を使ってくる竜国高校の野球部。これにキレたキララも負けじとラフプレーで応戦するという泥仕合いの様相を呈して来た。
ここで竜国高校のリーダーはキララに向けて毒針を吹き、それがかつて銃弾を受けた胸に突き刺さってしまう。その毒は容赦なくキララの体を蝕み始め、ボールもまともに投げられない体になってしまう。自分が投げ続けるしかないキララは誰にも毒のことを言えないが、しびれる体に鞭打って投げたボールは簡単にホームランされてしまう。
本来の力が出せなくなってしまったキララの失われたパワーは回復せず、まったくアウトを取ることができなくなってしまうが、次第に少しずつ相手の打った球の飛距離が落ちてくる。本来の力が出せないこの状況で、実はキララは命を球に込めて投げていたのだった。重い命のパワーがこもったボールは重い球に変化しており、命を削ることで何とか竜国高校相手に投げ続けるキララ。
するとキララは「おかしなもんだぜ…毒をもって毒を制すってやつかな…おれの体の中の毒が針の毒をだんだん消してきやがった…」と言う。何と毒針の毒が身体の中に埋まっていた銃弾の毒を打ち消して完全体となったのであった。
復活したキララは投げる方はもちろん、打つ方でもあっさりとホームラン。こうなると手がつけられない。竜国高校をコテンパンにして圧勝してしまうのであった。そしてこの試合を見ていた森田刑事はキララの投球を見ながら柴虎高校野球部の監督になることを決意するのであった。
そして場面は1987年の夏、甲子園出場を決めたキララたち柴虎高校野球部の元には松葉杖を使って歩行できるまでに回復した奈美が応援に駆けつける。キララと奈美は2人とも夢を実現させ、見つめ合うのであった。

『キララ』の登場人物・キャラクター

生沢 輝良々 (いくさわ きらら)

本作の主人公で、今でもプロに通用すると言われるほど才能あふれる投手の高校一年生。甲子園予選の東東京大会で26人連続三振という記録を作った。その試合中に球場に突然乱入した銀行強盗、大久保が発砲した銃弾を恋人の奈美とともに受けてしまい、余命数年という身体になってしまった。車椅子生活になってしまった奈美と同じように、自分もマイナスからの再スタートを切るため、野球の名門校である帝城高校を去って、あえて関東一の不良校である柴虎高等学校に転校して甲子園優勝を目指すこととなる。山田や赤木をはじめとする野球部メンバー集めから始めて、竜国高校との対抗戦に臨んだ。

斉藤 奈美 (さいとう なみ)

キララの恋人で、天才テニスプレイヤー。ウィンブルドンで優勝することを目標としていたが、銀行強盗の凶弾を脊髄に受けて下半身不随となってしまう。テニスへの未練を断とうとするが、事件後に執念を見せるようになったキララに影響されて、リハビリを経て再びプロテニス選手になる夢を追いかけようと決意する。

森田 (もりた)

キララと奈美を撃った銀行強盗・大久保を追っている刑事。外見はサングラスに角刈りという特徴的なスタイルで、なにかとすぐに発砲する。被弾してしまったキララと奈美のことを気にかけていて、頻繁に世話を焼くために登場する。最後は2人を見守るだけでなく刑事を辞職して、キララの転校した柴虎高等学校の野球部の監督として就任して甲子園を目指すという破天荒な男である。

赤木 純 (あかぎ じゅん)

柴虎高等学校野球部の2年生でポジションはサード。年上の女性・ヒロ子と同棲していて、高校生ながら子供ができた。ケンカが強く、圧倒的な運動能力と野球センスの持ち主である。真剣に打ち込むものがない荒れた生活でケンカに明け暮れていたが、キララと出会ってから本気で野球に取り組むようになり、野球部メンバー集めに奔走することとなる。

山田 一郎 (やまだ いちろう)

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