マンガ大賞を受賞したことでも話題となった、大人気作家東村アキコさんの新たな代表作。
絵画教室の真面目で誠実、それでもちょっとバイオレンスな日高先生を中心とした自伝的作品は、絵を描く人のリアルな悩みを描き出しているとして、「現代のまんが道」と評されたことも。
美大に入るまでのスパルタ受験生時代~主人公が漫画家になるまでが、ギャグ&シリアスのコントラストとともに描かれています。
「孤独な女の子が描きたかったのです。ちょっと傷を抱えた、周りになじめなくていつもひとりでいる女の子。」
著者があとがきでこう語るように、主人公のりんこは愛想がなくクラスでは突っ伏して寝たふりをするばかりの女の子。
それでも、「好きなマイナーバンドのジャケットが描きたい」というひそかな夢のため、予備校に通って賢明に美大合格を目指します。
予備校でははじめて同じバンドのファンである男の子とであったり、人なつっこいギャル女子と仲良くなったりと、はじめてのコミュニケーションを経験していきます。
後半では大学生活がスタートしてからの、恋愛や新しい人間関係を中心としたストーリーへとシフトしていきますが、序盤のぶっきらぼうで生きにくそうなりんこの姿からすさまじい成長を見られます。
絵を描くこと、さらにそれを中心に付随するちょっとわずらわしい(?)人間関係をありのまま描き出した作品。
淡白な絵柄と、幼いころなどの「イタタタ」エピソードの相性も必見。
一巻完結のため、その読みやすさも魅力です。
こちらも「音楽と絵」を中心とした作品です。美大を目指すキャラクター・緑川は、主人公のみかこと同じバンドが好きであるという共通点を持っています。
著者の持ち味である、水彩絵の具をさっと滑らせたような華奢な作風で描かれる「絵を愛する気持ち」「憧れ」「共感」「嫉妬」など、複雑な感情の数々はストイックな印象を呼ぶでしょう。
全編カラーの作品のため、絵本のように美しい世界に浸ってみませんか?