甘いお菓子とほろ苦ドラマ
藤田貴美さんにより、2002年に発売された短編集・『ご主人様に甘いりんごのお菓子』。穏やかながらも心をグッとつかんで離さない、珠玉の作品の数々が収録されています。
ご主人様に甘いりんごのお菓子
〈あらすじ〉
家計を助けるため、片田舎のお屋敷に奉公に出たアップルビー。さっそく訪れてみてビックリ、そこのご主人は荒れ放題荒らしてしまう上に甘いものしか口にしない気難し屋だったのだ…
とにかくアップルビーの作るお菓子が魅力的。最初はパンケーキと簡素だったのが、クレープ、アップルパイ、と心のひだに触れるごとに凝ったお菓子になるのが印象的です。
ムゲンウイルス
〈あらすじ〉
近未来のとある国、"刑期"を破って外に出た二人の少年のひとときを描きます
無鉄砲だけれどカラっとした行動派の少年と、賢いけれどちょっぴり臆病な少年。互いが互いを補うかのような相反する性質を持った少年たちの未来に、思わず想いををはせたくなります。
651のブルー
〈あらすじ〉
死刑制度の無い国の監獄にて。過激派テロリストの少女と"卑怯者"の青年将校が、勉強を通して交流を深めていく物語。
自罰的で殻にこもってしまった青年将校とそんなものモノともせずに変革を起こす囚人の少女。ムゲンウイルスと趣は同じでありながらも、どこかビターな印象があります。
温室舞踏会
〈あらすじ〉
背が高いばかりに社交ダンスで"男役"ばかりを演じてきた恵庭。そんな彼女へ、先輩から贈る小粋な計らいを描く。
女子校において普段は"男役"ばかりの子たちがつかのま"少女の瞬間"を味わう物語。いわゆる百合よりもドライめな、淡くも甘いひと時を描く。
いかがでしたか?
烈しくは無いけれど穏やかで心に染みるような印象があるこの作品。興味のある方は、お手に取ってみることをオススメします。
