運動会の手つなぎゴールは都市伝説?噂の内容や広まった理由をまとめてみた
運動会の「手つなぎゴール」についてまとめました。運動会の徒競走で足の遅い子が嫌な思いをしないよう、足の早い子らがゴール手前で立ち止まり全員揃ったら手をつないで一斉にゴールするというもの。言葉は認知されているものの実際に行っている学校が見つからず、都市伝説ではと囁かれていました。ここではラジオ番組『たまむすび』で調査された内容や、新聞記事やネットで見つけた情報を紹介していきます。
「手つなぎゴール」とは、運動会の徒競走で、足の遅い子がビリになって嫌な思いをしないように、足の早い子らがゴール手前で立ち止まり足の遅い子が来るまで待ち、全員揃ったら全員で手をつないで一斉にゴールする、という指導。
少し前の時代、「悪しき平等教育」だとして学校教育改革の理由付けの一つとして頻繁に引用されていた。また、近年は、いわゆる「ゆとり教育」が批判される時などに「手つなぎゴール」が「ゆとり」の象徴の一つとして批判・揶揄されることがあるという。
しかし、広く認知されている一方で「手つなぎゴール」を実際に行っている(いた)という学校が見つからず、都市伝説の一つともされていた。
*「手つなぎゴール」は「順位をつけない運動会」問題における一つの例示ではあるが、「手つなぎゴール」=「順位をつけない運動会」という話ではない。「順位をつけない運動会」は事実として存在し報道されている(徒競走で等旗を使わない、など)。NHK「クローズアップ現代」「競争のない運動会 ~順位をつけない教育改革の波紋~」(http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/585/index.html)は1996年の放送。
**2016年6月13日放送の『たまむすび』内容を2ページ目に追加
TBSラジオの『たまむすび』で、運動会の「手つなぎゴール」は本当にある(あった)のかが調査される
2016年5月2日(月)「たまむすび」ポッドキャスト 竹山、ガム買ってきて! | TBSラジオ AM954 + FM90.5~聞けば、見えてくる~
www.tbsradio.jp
TBSラジオの午後1時からのワイド番組『たまむすび』 5月2日「竹山、ガム買ってきて!」のポッドキャストがアップされました! 月曜2時台は「竹山、ガム買ってきて!」 リスナーのみなさまからの依頼を受け、 たまむすび月曜チームがそれに答える「リスナーお助け調査企画」です。 今日はゆと
2016年5月2日(月)のTBSラジオ「たまむすび」では、番組内コーナーの一つで「手つなぎゴール」の検証調査放送がされた。
ゆとりの象徴 徒競走「手つなぎゴール」が存在しなかった!!! - 健康ジャーナ
www.jarna.jp
(^^)/フェイスブック経由で第1報を聞き耳を疑いました。ゆとり教育の象徴とされ、批判派のメルクマール(目印)となっていた「徒競走手つなぎゴール」が全国どこにも存在しなかったことが判明したのです。 TBSのラジオ番組が調査した結果「存在せず」 5月2日放送のTBSのラジオ番組「たまむすび」が、ゆとり教育の象徴とされる「…
「たまむすび」の放送内容まとめ記事。
『たまむすび』では1997年の朝日記事や小林よしのりの『ゴーマニズム宣言』原因論が。
『たまむすび』では、スタッフが探した「手つなぎゴール」に言及した過去の出版物の記事が紹介され、この話がいつから存在していたか調べていたが、時系列が順不同で流れが分かりにくい、ということで時系列順に整理。
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『たまむすび』調べ「手つなぎゴール」の歴史
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1994年 愛知県豊川市の33歳女性の体験談メール「小学生の時、校長先生の方針で競争はほぼ禁止になり、『手をつないで』ではないものの、ゴール直前でストップし、全員が揃ったところで『せーのっ』でゴールさせられた記憶があります」
1997年2月17日 朝日新聞朝刊「教育会で広く読まれている専門誌の最近号で、ある大手企業の会長が人から聞いた話として、~全員手をつないでゴールインさせた」
2001年7月号 雑誌『ミセス』 重松清コラム「今どきの運動会は、~みんなで手をつないで走るかけっこ」
2002年2月26日 日本経済新聞朝刊 ソニー副会長森尾稔氏のコラム
2002年8月22日9月4日合併号 雑誌「sapio」 小林よしのり『新・ゴーマニズム宣言 12』第173章 「反米という作法」「運動会のかけっこは、横一列 手をつないでゴール」
2003年10月2日 日本経済新聞夕刊 サントリー相談役津田和明氏のコラム「一部の小学校では、ゴール直前でもう一度横一列に並ばせてからゴールさせていた」
2004年 雑誌『エコノミスト』 和田秀樹氏「酷い時は運動会の徒競走でさえ手をつないでゴールインさせる」
2005年 小林よしのり『新・ゴーマニズム宣言 15』第225章「格差社会とは何か?」「運動会で横一列でゴールさせられる」
2005年10月 雑誌『エコノミスト』 和田秀樹氏「手をつないでゴールイン~その現場を見たものはいない」
2006年10月15日 朝日新聞コラム高橋庄太郎「順位つけぬ運動会」風聞の先に「伝聞の形でかなり広まったらしい」http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/sava95/20061123/p2
2006年11月17日号 週刊朝日 内館牧子コラム「昨今の手をつないでゴールという運動会」
2006年11月21日 第一次安倍内閣での国会質疑。安倍総理らの答弁。「よく結果平等の典型的な例として、例えば徒競走をして、最後は全員が手をつないでゴールするということが実際に行われていたということでございますが、」「今のその徒競走の例については、私はたしか新聞等で読んだ記憶がありますが、現場でそれを目撃したということではございません」参議院会議録情報 第165回国会 教育基本法に関する特別委員会 第1号http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/165/0091/16511220091001c.html
実は以前にも「手つなぎゴール」検証記事が書かれていて話題になったことがあった
この運動会での「手つなぎゴール」の指導というものは、実は随分前から疑われていた。はてなブックマーク等で調べると、検証記事が人気エントリにもなっている。
また、教育評論家の森口朗氏は、東京都での教育現場経験から、「手つなぎゴール」は都市伝説である、と2005年の著書に書いている。Amazon.co.jp: 戦後教育で失われたもの (新潮新書)の BCKTさんのレビューhttp://www.amazon.co.jp/review/R1CMBA8AEDMNMD/
「手をつないで一斉にゴール」が全国各地で大流行している!? - Imaginary Lines
d.hatena.ne.jp
ようこそゲストさん ブログトップ 記事一覧 ログイン 無料ブログ開設 Imaginary Lines 2006-09-28 ■ 「手をつないで一斉にゴール」が全国各地で大流行している!? 昨日のエントリ に関しまして、高市氏の公式サイトの中にある「手をつないでゴールインする徒競争が全国各地の運動会で大流行」とい…
2006年9月28日の記事。「誰も見たと言う人がいない」として懐疑的。2003年の読売新聞記事で、実在を肯定しているような書き方がされているとする。
運動会の手つなぎゴールメモ(※結局不明のまま): nisimura | メモ
nisimura.txt-nifty.com
nisimura | メモ 間欠的にあるいは突発的にあるいは忘れた頃に更新していることがあります。 « もっふる試したい。 | トップページ | 「妖精じゃない森ガール」良い意味じゃなく森に溶け込む。 » 2009.12.16 運動会の手つなぎゴールメモ(※結局不明のまま) メールログを見ていて、やっぱり書いておくかと思ったメモ。 友人との会話の中で、運動会の手つなぎゴールについての話題になった…
2009年12月16日の記事。懐疑的見地から、2003年の読売新聞記事の内容を精査。「手つなぎゴール」について図書館のリファレンスを利用して調査する。↓に引用。
実は、運動会でリボンなどを与えて順位を明確にする学校は少数派だ。東京都小学校体育連盟の調査(1997年)では、都内の小学校の約8割は、運動会で子どもたちの順位をつけないようにしている。ゴール前で手をつないで一緒にテープを切らせたり、足の遅い子には距離の短いコースを走らせるなどの工夫もしている。
2003年10月13日の読売新聞記事。ネット掲載もされ『教育新世紀 / YOMIURI ON-LINE 「順位づけ」継続求める声多く』反響を呼んだ。
この1997年の東京都小学校体育連盟の調査は他でも引用されていたという。
もっと前には共産党が部落解放同盟と絡めて「手つなぎゴール」について国会で委員会質問したことも
「手つなぎゴール」は国会質問でもたびたび取り上げられているが、最初に取り上げたのは何と日本共産党だった。
1998年9月24日の第143回国会・文教科学委員会で、日本共産党の林紀子参院議員(当時)が、部落解放同盟による教育への介入について問題提起として、広島県の学校では「運動会で順位を付けるのは差別だから、皆で手をつないでゴールしようなんてことが行われている」という事例を批判的に挙げていた。
参議院会議録情報 第143回国会 文教・科学委員会 第3号
kokkai.ndl.go.jp
第143回国会 文教・科学委員会 第3号 平成十年九月二十四日(木曜日) 午前十時開会 ————————————— 出席者は左のとおり。 委員長 南野知惠子君 理 事 狩野 安君 馳 浩君 江本 孟紀君 松 あきら君 日下部禧代子君 委 員 亀井 郁夫君 北岡 秀二君 仲道 俊哉君 橋本 聖子君 石田 美栄君 佐藤 泰介君 本岡 昭次君 山下 栄一君 畑野 君枝君 林 紀子君 扇 千景君 奥村 …
○林紀子君
この要覧とか書いてあるものだけではなくて、この書いてあることが実際の教育に移される、実践されるとどういうことになるのか。私が知り得ている部分というのはまだほんの一部だと思うんですけれども、こんなことがあるというのも、ついでにと言ってはなんですが、御紹介させていただきたいと思うんです。
まず、運動会なんですけれども、これは三次、庄原、福山といった市の小学校。徒競走、駆けっこというのがありますよね。あれでは一等、二等と順番をつけるのは差別だ、みんなが一緒に手をつないでゴールしましょう。こんなばかばかしいことが大まじめで行われているんです。この問題だったらまだばかばかしいで済むかなと思うんですけれども、それよりもっと深刻なことが行われているわけなんです。
出典: kokkai.ndl.go.jp
部落問題雑誌と「手つなぎゴール」
この「手つなぎゴール」の話。共産党が部落解放同盟に絡めて質疑しているように、同和問題とも関わっているのだろうか。
さらに検索してみたら、1990年出版の部落問題研究所が発行してる『部落』第42巻に、「手つなぎゴール」の話が。ただし「実際にあった」という話ではないが。
部落・, 第 42 巻 部落問題硏究所, 1990 - Google ブックス
books.google.co.jp
部落・, 第 42 巻 部落問題硏究所, 1990
部落 (部落問題研究所出版部): 1990|書誌詳細|国立国会図書館サーチ
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I051159525-00
44 ページ
だつたら運動会はどうすればよいのでしょうか。ゴ—ルに手をつないで横一列で入るのでしようか。日常の保育にもこれらのことで支障のあった町職労保育部は、本来の保育ができるようになり今、元気づいています。学校用務員についても、事務、用務貝部会で ...
これは、まさに「手つなぎゴール」の話。
実際に運動会で行われているという文章ではなく、被差別部落団体による要求に対し、「だったら手を繋いで横一列にゴールすれば満足なのか」と主張するもののようだ。小学校ではなく保育園の話のようだが。
『部落』第42巻は、近所の図書館にもなく前後の文脈は未確認。
ただ、Googleブック検索で可能な限り、前段を調べてみると、以下のような文章があり、そこから「だつたら運動会はどうすればよいのでしょうか。ゴ—ルに手をつないで横一列で入るのでしようか」の前段の内容を類推。
44 ページ
ていた保育所等は平常どおりの保育になり、父母への負担もかからなくなりました。町職労保育部は町同敉加入時に随分泣かされてきたようです。各種学習会等の報告書作成のため日常保育ができないとか、小学校に入学してもおしっこをもらす子がいるのは ...
この『部落』を出版した部落問題研究所は、Wikipediaによると、部落解放同盟とは対立関係にあり、日本共産党と協力関係にある団体とのこと。
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目次 - Contents
- TBSラジオの『たまむすび』で、運動会の「手つなぎゴール」は本当にある(あった)のかが調査される
- 『たまむすび』では1997年の朝日記事や小林よしのりの『ゴーマニズム宣言』原因論が。
- 実は以前にも「手つなぎゴール」検証記事が書かれていて話題になったことがあった
- もっと前には共産党が部落解放同盟と絡めて「手つなぎゴール」について国会で委員会質問したことも
- 部落問題雑誌と「手つなぎゴール」
- 九州では1990年前後に「手つなぎゴール」が行われていたという新聞記事
- 2000年前後の保守系雑誌・機関誌に「手つなぎゴール」批判
- 国会で2001年から頻繁に批判された「手つなぎゴール」
- 2000年辺りに活発化した「手つなぎゴール」批判
- 追記:一ヶ月後、『たまむすび』で「手つなぎゴール」検証の続編が放送される。その内容追加
- これを踏まえて手つなぎゴールの歴史年表を更新(2016.6.26)