【The 100 Best Books of All Time】本好きのための「世界最高の小説」BEST100!
2002年、ノルウェー・ブック・クラブによって企画された「The 100 Best Books of All Time」が公開。世界54カ国の著名作家100人の投票で選ばれたもので、世界中の本好きの間で話題となった。
順位は1位のドン・キホーテ以外非公開となっている。ネタバレ無しのあらすじ付きで、年代の新しい作品から順に紹介する。
ムージル 『特性のない男』 1930~32年
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ムージルの名を世界的なものにしたのは、唯一の長編にして未完の大作『特性のない男』である。第一次世界大戦直前のウィーンを舞台にしたこの小説の執筆し、1930年には「特性のない男」第一巻(第一部、第二部)がローヴォルト社から五千部出版された。ムージルは1931年に再びベルリンに移るものの、1933年ナチスの政権奪取後はウィーンに戻り、1938年にはスイスに亡命、この時彼の書物は発禁処分を受ける。最後はジュネーヴでこの大作の完成に心血を注ぐが、1942年シャワー室の中で脳卒中のため急死した。
ウィリアム・フォークナー 『響きと怒り』 1929年
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アメリカ南部の名門コンプソン家が、古い伝統と因襲のなかで没落してゆく姿を、生命感あふれる文体と斬新な手法で描いた、連作「ヨクナパトーファ・サーガ」中の最高傑作。ノーベル賞作家フォークナーが“自分の臓腑をすっかり書きこんだ”この作品は、アメリカのみならず、二十世紀の世界文学にはかり知れない影響を与えた。
フェルナンド・ペソア 『不安の書』 1928年
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終生、リスボンの貿易会社の仕事にたずさわりながら、もっとも先鋭的な作品をのこしたフェルナンド・ペソアは、生前ごく少数の理解者を得たにとどまり、1935年、ほとんど無名のまま47歳の生涯を終えた。没後、膨大な遺稿が徐々に刊行されるに及んで、その現代性が高く評価され、ペソアは20世紀前半の代表的な詩人のひとりと目されるようになった。
1982年に刊行された『不安の書』は、ヨーロッパの各国語に翻訳され、今なお多くの読者を魅了してやまない。存在の不安、自己のアイデンティティの危うさ、生の倦怠、夢と現実の対立と交錯が、リスボン在住の帳簿係補佐の手記という形式を借りて語られた。現代世界文学の傑作とされる。
フェデリコ・ガルシーア・ロルカ 『ジプシー歌集』 1928年
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大地のように古く、森の木の切り口のように新鮮な、独特なことばの響き―。〈ロマンセ〉という抒情風物語詩の様式を用い、ジプシーの生活を主題とした、史上、もっともスペインの民衆の心をとらえたといわれる詩集。
ヴァージニア・ウルフ 『灯台へ』 1927年
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スコットランドの孤島の別荘。哲学者ラムジー氏の妻と末息子は、闇夜に神秘的に明滅する灯台への旅を夢に描き、若い女性画家はそんな母子の姿をキャンバスに捉えようとするのだが―第一次大戦を背景に、微妙な意識の交錯と澄明なリリシズムを湛えた文体によって繊細に織り上げられた、去りゆく時代への清冽なレクイエム。
ヴァージニア・ウルフ 『ダロウェイ夫人』 1925年
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1923年のロンドン、クラリッサはかつての輝くような青春をふと振り返り、自問し始める――波乱の恋を捨てて堅実な結婚を選んだこの人生は正しかったのか。老いの不安と孤独を乗り越え、真の人生美を捉える傑作。
トーマス・マン 『魔の山』 1924年
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平凡無垢な青年ハンス・カストルプははからずもスイス高原のサナトリウムで療養生活を送ることとになった。日常世界から隔離され病気と死が支配することの「魔の山」で、カストルプはそれぞれの時代精神や思想を体現する数々の特異な人物に出会い、精神的成長を遂げてゆく。
『ファウスト』と並んでドイツが世界に贈った人生の書。
カフカ 『城』 1924年
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フランツ・カフカはプラハのユダヤ人の家庭に生まれ、法律を学んだのち保険局に勤めながら作品を執筆、常に不安と孤独の漂う、夢の世界を思わせるような独特の小説作品を残した。その著作は数編の長編小説と多数の短編、日記および恋人などに宛てた膨大な量の手紙から成る。
死後に友人マックス・ブロートによって未完の長編『城』『審判』を始めとする遺稿が発表されてから再評価を受け、特に実存主義から注目されたことによって世界的なブームとなった。
カフカ 『審判』
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Kについてはごく平凡なサラリーマンとしか説明のしようがない。なぜ裁判に巻きこまれることになったのか、何の裁判かも彼には全く訳がわからない。そして次第に彼はどうしようもない窮地に追いこまれてゆく。
全体をおおう得体の知れない不安。カフカはこの作品によって現代人の孤独と不安と絶望の形而上学を提示したものと言えよう。
カフカ 『短篇集』
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実存主義、ユダヤ教、精神分析―。カフカは様々な視点から論じられてきた。だが、意味を求めて解釈を急ぐ前に作品そのものに目を戻してみよう。難解とされるカフカの文学は何よりもまず、たぐい稀な想像力が生んだ読んで楽しい「現代のお伽噺」なのだ。語りの面白さを十二分にひきだした訳文でおくる短篇集。
ジェイムズ・ジョイス 『ユリシーズ』 1922年
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ダブリン、1904年6月16日。私立学校の臨時教師スティーヴンは、22歳、作家を志している。浜辺を散策した後、新聞社へ。同じ頃、新聞の広告を取る外交員ブルームの一日も始まる。38歳、ユダヤ人。妻モリーの朝食を準備した後、知人の葬儀に参列し、新聞社へ。二人はまだ出会わない。スティーヴンは酒場へ繰り出し、ブルームは広告の資料を調べるため国立図書館へ向かう。
20世紀最高の文学「ユリシーズ」。新しい文体を創始し、表現の可能性の極限に迫ったといわれる傑作。最高の訳者たちによる達意の完訳は、世界にも類のない作品。
魯迅 『狂人日記』 1918年
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魯迅が中国社会の救い難い病根と感じたもの、それは儒教を媒介とする封建社会であった。狂人の異常心理を通してその力を描く「狂人日記」。阿Qはその病根を作りまたその中で殺される人間である。こうしたやりきれない暗さの自覚から中国の新しい歩みは始まった。
プルースト 『失われた時を求めて』 1913~27年
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色彩感あふれる自然描写、深みと立体感に満ちた人物造型、連鎖する譬喩…深い思索と感覚的表現のみごとさで20世紀最高の文学と評される本作。第1巻では、語り手の幼年時代が夢幻的な記憶とともに語られる。豊潤な訳文で、プルーストのみずみずしい世界が甦る。
トーマス・マン 『ブッデンブローク家の人々』 1901年
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マン自身の一族をモデルに、北ドイツ、リューベックの商家の4代に渡る歴史とその衰退を描いている。戦前のヨーロッパにおいてベストセラーとなり、1929年にマンがノーベル文学賞を受賞した際にはこの作品が受賞理由として挙げられた。全体は11の章からなり、副題として「ある一家の没落(Verfall einer Familie)」が付されている。
チェーホフ 『かもめ・ワーニャ伯父さん』 1886年
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『かもめ』はチェーホフの劇作家としての名声を揺るぎないものにした代表作であり、世界の演劇史の画期をなす記念碑的な作品である。
後の『ワーニャ伯父さん』、『三人姉妹』、『桜の園』とともにチェーホフの四大戯曲と呼ばれる。
チェーホフ 『桜の園・三人姉妹』 1886年
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『桜の園』はチェーホフによる最晩年の戯曲である。
トルストイ 『イワン・イリッチの死』 1886年
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一官吏が不治の病にかかって肉体的にも精神的にも恐ろしい苦痛をなめ、死の恐怖と孤独にさいなまれながらやがて諦観に達するまでの経過を描く。題材は何の変哲もないが、トルストイ(1828‐1910)の透徹した人間観察と生きて鼓動するような感覚描写は、非凡な英雄偉人の生涯にもましてこの一凡人の小さな生活にずしりとした存在感をあたえている。
マーク・トウェイン 『ハックルベリー・フィン』 1884年
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洋々たるミシシッピーの流れに乗って筏の旅を続ける陽気な浮浪児ハックと逃亡奴隷ジム。辺境時代のアメリカの雄大な自然と活力溢れる社会をバックに、何ものにもとらわれずに生きようとする少年と、必死に自由の境涯を求める黒人の姿をユーモラスに描く。
ヘミングウェイをして「現代アメリカ文学の源泉」とまで言わせた傑作。
ドストエフスキー 『カラマーゾフの兄弟』 1880年
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世界最高の小説は何か。候補の筆頭につねに上げられるのが、この作品だ。
物欲の権化のような父フョードル・カラマーゾフの血を、それぞれ相異なりながらも色濃く引いた三人の兄弟。放蕩無頼な情熱漢ドミートリイ、冷徹な知性人イワン、敬虔な修道者で物語の主人公であるアリョーシャ。そして、フョードルの私生児と噂されるスメルジャコフ。これらの人物の交錯が作り出す愛憎の地獄図絵の中に、神と人間という根本問題を据え置いたドストエフスキー最後の長編小説。
イプセン 『人形の家』 1879年
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「あたしは、何よりもまず人間よ」ノーラは夫にそう言いおいて家を出る。ノルウェーの戯曲家イプセン(1828-1906)は、この愛と結婚についての物語のなかで、自分自身が何者なのかをまず確かめるのが人間の務めではないか、と問いかける。清新な台詞と緻密な舞台構成がノルウェー語原典からの新訳でいきいきと再現される。
トルストイ 『アンナ・カレーニナ』 1877年
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青年将校ヴロンスキーと激しい恋に落ちた美貌の人妻アンナ。だが、夫カレーニンに二人の関係を正直に打ち明けてしまう。一方、地主貴族リョーヴィンのプロポーズを断った公爵令嬢キティは、ヴロンスキーに裏切られたことを知り、傷心のまま保養先のドイツに向かう。
『戦争と平和』と並ぶ作者の代表作であり、現代に至るまで極めて高い評価を受けている。
ドストエフスキー 『悪霊』 1872年
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最近わたしたちの町で、奇怪きわまりない事件が続発した。町の名士ヴェルホヴェンスキー氏とワルワーラ夫人の奇妙な「友情」がすべての発端だった…。やがて、夫人の息子ニコライ・スタヴローギンが戻ってきて、呼び寄せられるように暗い波乱の気配が立ちこめはじめる。無政府主義、無神論、ニヒリズム、信仰、社会主義革命などをテーマにもつ深遠な作品であり著者の代表作。
晩年のニーチェがこの本を読み、とりわけキリーロフの人神思想に注目して抜書きなどをしていたことも知られている。
ジョージ・エリオット 『ミドルマーチ』 1871年
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美しいドロシアとその妹シーリアは両親をうしない、伯父のブルック氏のもとに身を寄せている。宗教的理想に燃えるドロシアは、大地主の青年チェッタム卿を退け、二十七歳年上のカソーボン牧師との結婚をえらぶ。イングランド中部の商業都市ミドルマーチを舞台に多彩な人間模様を描写した、ヴィクトリア朝を代表する女流作家ジョージ・エリオットの代表作。
ドストエフスキー 『白痴』 1869年
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冬のペテルブルグに姿を現した外国帰りの青年ムイシュキン公爵。莫大な遺産を相続した彼をめぐり、高慢な美女ナスターシヤ、誇り高き令嬢アグラーヤ、血気盛んな商人ロゴージンなどが織りなす人間模様。ドストエフスキー五大長篇中もっともロマンとサスペンスに満ちた傑作。
レフ・トルストイは本作について、「これはダイヤモンドだ。その値打ちを知っているものにとっては何千というダイヤモンドに匹敵する」と評したといわれる。