【The 100 Best Books of All Time】本好きのための「世界最高の小説」BEST100!
2002年、ノルウェー・ブック・クラブによって企画された「The 100 Best Books of All Time」が公開。世界54カ国の著名作家100人の投票で選ばれたもので、世界中の本好きの間で話題となった。
順位は1位のドン・キホーテ以外非公開となっている。ネタバレ無しのあらすじ付きで、年代の新しい作品から順に紹介する。
ジョゼ・サラマーゴ 『白の闇』 1995年
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それは、ある日突然始まった。ある男性が、視界が真っ白になる原因不明の病にかかったのだ。「白い病」はつぎつぎと国じゅうの人に感染していった。
「なにも見えない」「だれにも見られていない」ことが、人間の本性をむき出しにし、秩序は崩壊する。世界は瞬く間に生き地獄と化していった。しかし、ただひとり目の見える女性がいたことで意外な展開を迎える…。
ノーベル賞作家の世界に衝撃を与えた哲学的寓話。
トニ・モリスン 『ビラヴド』 1987年
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『ビラヴド』―忽然と現れた謎の若い女はそう名乗った。女の名は逃亡奴隷のセテが、自らの手で殺した娘の墓碑銘「ビラヴド(愛されし者)」と同じだった…。
南北戦争前後の時代を背景に、黒人女性の半生を通して、黒人奴隷が自由の意味を知り、自由を獲得するためになめた辛酸を壮大なスケールで描いた愛と告白の物語。
93年度ノーベル文学賞受賞作家の代表作。
ガルシア=マルケス 『コレラの時代の愛』 1985年
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夫を不慮の事故で亡くしたばかりの女は72歳。彼女への思いを胸に、独身を守ってきたという男は76歳。ついにその夜、男は女に愛を告げた。困惑と不安、記憶と期待がさまざまに交錯する二人を乗せた蒸気船が、コロンビアの大河をただよい始めた時…。
内戦が疫病のように猖獗した時代を背景に、悠然とくり広げられる、愛の真実の物語。
サルマン・ラシュディ 『真夜中の子供たち』 1981年
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虚構と幻想を現実におりまぜる彼の物語手法は魔術的リアリズムのそれに近いとされる。『真夜中の子供たち』で名声を博し、インド系作家による英語文学の新潮流の端緒となった。
現在までの彼の代表作と目されている同書は1981年のブッカー賞を受賞、1993年には同賞25周年の最優秀作品に選ばれている。
ガルシア=マルケス 『百年の孤独』 1967年
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愛の欠如のなかに生きる孤独な人間の生と死、相つぐ奇想天外な事件、奇態な人々の神話的物語世界――
マコンド村の創設から百年、はじめて愛によって生を授かった者が出現したとき、メルキアデスの羊皮紙の謎が解読され、ブエンディア一族の波瀾に満ちた歴史が終る。
世界的ベストセラーとなった傑作長篇。ノーベル文学賞受賞。
ドリス・レッシング 『黄金のノート』 1962年
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『黄金のノート』初版は1962年。 著者40代の作品である。 ドリス・レッシングは1980年代にノーベル賞候補になったが、以後、候補からはずれていたかのように見えていた時期が長い。欧米では2007年の受賞は遅すぎるとのコメントも出ている。
だが、代表作『黄金のノート』は今日読んでも遅すぎはしない。作品には、執筆当時の社会背景が描かれ、その多くはすでに大きな変貌をとげてしまっている。そこから逆に、レッシングの視点は、その時代だけに通用する一時的なものに動かされてはいないということがわかる。執筆から50年後の今だからこそ彼女の眼力がいっそう鮮明になる。
ギュンター・グラス 『ブリキの太鼓』 1959年
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3歳の時から成長のとまった小男のオスカルの半生を太鼓にのせて語る、死者のためのレクイエム。猥雑、怪奇、偏執のイメージの奔流の中で悪のビートがなり響く。
ノーベル文学賞受賞作家の出世作。
チヌア・アチェベ 『崩れゆく絆』 1958年
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アチェベは英語でのアフリカ文学の父と考えられている作家であり、世界的に賞賛される作家の一人でもある。1958年に発表した『崩れゆく絆』は世界で一千万部以上売れ、50以上の言語に訳され、ノルウェー、イギリス、米国、アフリカなどで小説100選の1つに選ばれた。
フアン・ルルフォ 『ペドロ・パラモ』 1955年
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ペドロ・パラモという名の、顔も知らぬ父親を探して「おれ」はコマラに辿りつく。しかしそこは、ひそかなささめきに包まれた死者ばかりの町だった……。
生者と死者が混交し、現在と過去が交錯する前衛的な手法によって紛れもないメキシコの現実を描き出し、ラテンアメリカ文学ブームの先駆けとなった古典的名作。
ウラジーミル・ナボコフ 『ロリータ』 1955年
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「ロリータ、我が命の光、我が腰の炎。我が罪、我が魂。ロ・リー・タ。…」世界文学の最高傑作と呼ばれながら、ここまで誤解多き作品も数少ない。中年男の少女への倒錯した恋を描く恋愛小説であると同時に、ミステリでありロード・ノヴェルであり、今も論争が続く文学的謎を孕む至高の存在でもある。多様な読みを可能とする「真の古典」の、ときに爆笑を、ときに涙を誘う決定版新訳。
川端 康成 『山の音』 1954年
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敗戦直後の荒廃した世情のなかで、深い倦怠と疲労に自身の老いを自覚する信吾。老妻や息子夫婦と起居をともにしながら孤独を感じさせられる家庭にあって、外に女をもつ長男の嫁菊子に対する信吾の哀憐の情は、いつしかほのかな恋にも似た感情に変わってゆく。その微妙な心のひだをとらえた戦後川端文学の傑作。
ヘミングウェイ 『老人と海』 1952年
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キューバの老漁夫サンチャゴは、長い不漁にもめげず、小舟に乗り、たった一人で出漁する。残りわずかな餌に想像を絶する巨大なカジキマグロがかかった。4日にわたる死闘ののち老人は勝ったが、帰途サメに襲われ、舟にくくりつけた獲物はみるみる食いちぎられてゆく…。
徹底した外面描写を用い、大魚を相手に雄々しく闘う老人の姿を通して自然の厳粛さと人間の勇気を謳う名作。
ラルフ・エリスン 『見えない人間』 1952年
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アメリカの黒人であるがゆえに、歴史に埋もれ、見えない人間になった名もなき青年。社会の周縁に押しやられ、組織から疎んぜられた行き場のない黒人の状況を、叙情的に描写し現代の「人間の条件」に迫る。作者は、1920・30年代のアメリカ社会を浮き彫りにすると同時に、その社会が持つ諸問題を鋭く抉り出す。7年間を費やして書き上げた労作。
パウル・ツェラン 『パウル・ツェラン全詩集』 1952年
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象徴主義やシュルレアリスムの流れに立ち、ユダヤ人としてナチズムの惨禍、スターリニズムの傷痕を心の奥深くに宿しながら、現代詩人の命運を生き、自死した、パウル・ツェラン、本邦初の個人完訳全詩集。
サミュエル・ベケット 『モロイ』 1951~53年
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気がつくと母親の家にいたモロイの意識はすでに崩壊寸前で、自分の名前も思い出せない。一方モロイの調査を命じられたモランにも同じ運命が……。
ヌーヴォー・ロマンの先駆的役割を果たした記念碑的前衛小説。ノーベル文学賞受賞作家による、文学史に衝撃を与えた小説三部作の第1部。
サミュエル・ベケット 『マロウンは死ぬ』
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放浪の生涯のあと死の床に横たわるマロウンは、所有物の品目と数編の物語を書きつける。彼の生と物語の生は徐々に収斂されていき、ついに……。
凄絶なユーモアが読者を奇妙な体験に引きずり込む「小説についての小説」。グロテスクでコミカルな小説三部作の第2部。
サミュエル・ベケット 『名づけえぬもの』
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肉体の死のあと暗闇のなかでしゃべり続け、おれはワームに出会った……。どことも知れぬ薄明の中で語り続ける声。自分をときあかそうとする語り手は言葉を重ねるほどに溶け去っていく――
《小説についての小説》から《言葉についての言葉》にまで遡りつめた小説三部作の終編。
マルグリット・ユルスナール 『ハドリアヌス帝の回想』 1951年
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旅とギリシア、芸術と美少年を偏愛したローマ五賢帝の一人ハドリアヌス。命の終焉でその稀有な生涯が内側から生きて語られる、「ひとつの夢による肖像」。著者円熟期の最高傑作。
ジョージ・オーウェル 『1984年』 1949年
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“ビッグ・ブラザー”率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが…。
二十世紀世界文学の最高傑作。
アストリッド・リンドグレーン 『長くつ下のピッピ』 1945年
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「あしながおじさん」にヒントを得て、作者リンドグレーンの小さい娘が,「ねえ、長くつ下のピッピって女の子のお話を作って」と母に頼んだ。そこで生れたのがこの世界一つよい少女の物語だった。自由ほんぽうに生きるピッピに、子どもは自分の夢の理想像を発見し、大人は愛さずにはいられない野育ちの永遠な少女を見出す。
ボルヘス 『伝奇集』 1944~86年
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夢と現実のあわいに浮び上がる「迷宮」としての世界を描いて現代文学の最先端に位置するボルヘス。われわれ人間の生とは、他者の夢見ている幻に過ぎないのではないかと疑う「円環の廃墟」、宇宙の隠喩である図書館の物語「バベルの図書館」など、東西古今の神話や哲学を題材として精緻に織りなされた魅惑の短篇集。
カミュ 『異邦人』 1942年
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母の死の翌日海水浴に行き、女と関係を結び、映画をみて笑いころげ、友人の女出入りに関係して人を殺害し、動機について「太陽のせい」と答える。判決は死刑であったが、自分は幸福であると確信し、処刑の日に大勢の見物人が憎悪の叫びをあげて迎えてくれることだけを望む。
通常の論理的な一貫性が失われている男ムルソーを主人公に、理性や人間性の不合理を追求したカミュの代表作。
ウィリアム・フォークナー 『アブサロム、アブサロム!』 1936年
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南部の差別と人間の苦悩を描く、ノーベル賞作家の代表作。
アメリカ南部の田舎町に姿を現した男サトペンが、巨大な屋敷と荘園を建設し、自らの家系を築きあげる。南北戦争をはさんで展開される繁栄と没落の物語。重層的な語りの中に、呪われた血の歴史が浮かびあがる壮大なサーガ。
セリーヌ 『夜の果てへの旅』 1932年
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全世界の欺瞞を呪詛し、その糾弾に生涯を賭け、ついに絶望的な闘いに傷つき倒れた“呪われた作家”セリーヌの自伝的小説。上巻は、第一次世界大戦に志願入隊し、武勲をたてるも、重傷を負い、強い反戦思想をうえつけられ、各地を遍歴してゆく様を描く。
人生嫌悪の果てしない旅を続ける主人公の痛ましい人間性を、陰惨なまでのレアリスムと破格な文体で描いて「かつて人間の口から放たれた最も激烈な、最も忍び難い叫び」と評される現代文学の傑作巨篇。