『親なるもの 断崖』を徹底紹介!教科書に載らない暗い歴史【超大作】

曽根富美子の『親なるもの 断崖』は、昭和初期の北海道に実在した幕西遊郭を舞台にした物語。思わず目をそらしたくなるような生々しい描写が特徴的なヘビーで残酷な作品ですが、史実を元にした物語は一見の価値があります。
ネット広告などで紹介され、じわりじわりと知名度を増している『親なるもの 断崖』について紹介します。

『親なるもの 断崖』がネットで話題に

出典: sps.k-manga.jp

2015年、「ネット広告でよく目にする」など、曽根富美子作の漫画『親なるもの 断崖』が話題になった。1992年に日本漫画家協会賞優秀賞を受賞した作品である。
史実に基づいた内容になっており、「知らなかった事実を知れた点において、この作品に出合えたことに感謝する」という読者が多かったそう。

20年近く前の作品だが、電子配信の漫画ランキングでも連続1位をキープしていた。

あらすじ

出典: ameblo.jp

出典: blog.goo.ne.jp

道子は一人、容姿が醜かったために女郎にも芸姑にもなれず、下働きの身であった。

昭和2年4月。北の海を渡り、16歳の松恵とその妹で11歳の梅、13歳の武のと11歳の道子、4人の少女が北海道室蘭の幕西遊郭に売られてきた。松恵は遊郭に着いたその日に客をとらされ、首を吊った。奈落の底で少女たちの血を吐くような人生が始まった。
本来は半玉(見習い)を経てからだが、女将の独断で男を知らない純粋な16歳の少女は客をとらされた。みずから命を断つほど、受け入れられない酷い現実だったのだ。
松恵の亡骸を前に、3にんはただ泣き崩れる事しかできなかった。
松恵の借金はお梅が背負うことに。一緒に来た武子13歳は半玉として厳しい修行の毎日、そして道子11歳は下働きだ。同情など一切無く強制労働の毎日が始まった。
遊郭に入った女性が生き抜く方法は、芸妓か遊女かの2つしかない。武子・梅・道子、残された3人の三者三様の道とその先にある結末。この第1部は、4人が遊郭入りしてから約7年後までのことが描かれている。

舞台は昭和初期の北海道・室蘭の幕西遊郭。
つい最近まで存在した遊郭で生きる、身売りされ、親の借金のために女郎や芸姑になった女性たちの物語。

gionchoubu.exblog.jp

幕西遊郭とは

10代前半の娘も、生理が始まる前の11歳で女郎になった梅と同じように客を取らされた。

昔、北海道・室蘭の幕西というところにあった政府公認の遊郭。
この時代、北海道で大規模な鉄道工事が行われていた。これにより、室蘭にはタコ部屋と呼ばれる重労働など、男性移住者がたくさん押し寄せ、遊郭が発達したようだ。
遊廓に身を投じた女性達は、沢山単身で北海道に乗り込んだ男共の一夜妻として、開拓の最前線にいた。
幕西遊郭の文書は殆ど残っていないものの、数年前に見つかった「精算帳」には1000円で家一軒立つ時代に娼妓1人平均の借金が963円、1カ月の稼ぎである「玉代(たまだい)」は11円から49円との記述があったそう。
そういう生活を強いられていた女性が江戸時代ではなく、昭和32年まで存在していたとはかなり衝撃だ。
裏口から遊女が逃げようとしても、そこは断崖絶壁。昭和32年に法律によって遊郭は廃止になったが、密かに続いていたのではないか。

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タコ部屋労働(タコべやろうどう)とは、主に戦前の北海道で、労働者をかなりの期間身体的に拘束して行われた非人間的環境下における過酷な肉体労働である。
タコ部屋労働で使役された労働者をタコと呼び、タコを監禁した部屋をタコ部屋(ないしは監獄部屋)と呼ぶ。タコ部屋はタコ部屋労働環境そのものを意味することもあった。

身売りされた女郎の運命

足抜きする気はなかったが、遊郭から出てしまった梅もひどい拷問を受ける。

出典: sps.k-manga.jp

道子も着物がボロボロになり、ついにゴザを体に巻いて、客をとるようになる。

それでも女として扱われることに喜びを感じる道子…

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