キャロル&チューズデイ(Carole & Tuesday)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『キャロル&チューズデイ』とはボンズが制作、渡辺信一郎が総監督を務めたアニメ作品である。人類が火星に移住してから約50年後を舞台に、ミュージシャンを目指すキャロルとチューズデイの2人の少女が織りなす物語。世界に通じる音楽アニメーションをテーマに制作され、日本アニメでありながら主題歌・挿入歌はすべて英語で書かれた。全世界からオーディションで選ばれたシンガーたちの圧巻の歌唱シーンが見どころの1つとなっている。

『キャロル&チューズデイ』の概要

『キャロル&チューズデイ』とは、渡辺信一郎(監督)、ボンズ(アニメスタジオ)、フライングドッグ(音楽レーベル)のタッグで制作されたオリジナルアニメ作品である。ボンズ20周年、フライングドッグ10周年の記念作品として制作された。Netflixで全世界独占配信のほか、日本国内では2019年4月から10月までフジテレビの深夜アニメ枠である「+Ultra」にて放送された。
物語の舞台は人類が火星に移住してから約50年後、AIが音楽を作る時代。そこで地球からの移民である17歳の少女・キャロルと火星の裕福な家庭で育った17歳の少女・チューズデイが出会い、二人で音楽を作り、ミュージシャンを目指していく物語である。音楽はもちろんのこと、政治的な要素も交えながら、AIが生み出す音楽ではなく生身の人間が生み出す音楽の力をテーマに、2人の少女が奮闘する姿が描かれている。
主題歌・劇中歌は声優ではなく別の歌い手によって担当され、世界に通じる音楽アニメ作品をテーマに、全編英語歌詞の楽曲となっている。キャロル、チューズデイ、アンジェラの歌い手は全世界オーディションを行い、女性シンガーを選出した。楽曲提供においても、半数近くは海外ミュージシャンが行っている。また、作中で使用される楽器においては、Nordやギブソンなどの実在する海外楽器メーカーとタイアップしており、実在する楽器が使用されている。作中の音楽演奏シーンでは、スタジオで歌手や演奏家、ダンサーなどのパフォーマンスをマルチカメラで撮影して、それうぃアニメーターが手描きで作画するという手法が使われている。ゆえに、よりリアルな演奏シーンを再現しており、手の動きや体の動きがなめらかにアニメ化されている。
世界中に通じる音楽アニメーションをテーマに音楽シーンの表現や、楽曲に関しては他のアニメの比ではないほど力を入れており、アニメ音楽というジャンルを超えて、世界で通用する音楽となっている。Netflixで全世界独占配信されたこともあり、世界中で日本の音楽アニメとして人気を博している。

『キャロル&チューズデイ』のあらすじ・ストーリー

キャロルとチューズデイとの出会い

物語の舞台は、人類が火星に移住してから約50年後。
田舎町の裕福な家庭の17歳の少女・チューズデイは、アーティストを目指し首都・アルバシティ行きの列車に乗り込むのだった。
そのころ、アルバシティに住む17歳の少女・キャロルはバイト先での客達のクレームに嫌気がさしていた。
一方、アルバシティに到着したチューズデイは都会の人の多さに圧倒されていた。

人気子役の17歳の少女・アンジェラはCMの撮影をしていた。
チューズデイはカバンを置き引きされ、ギター一本を抱え路頭に迷っていた。
もう帰ろうかと弱気なるが、ミュージシャンを目指して家出してきたのだからと自分を励ますのだった。

客に嫌がらせをしてバイトをクビになったキャロルは「凹んではいられない。やりたい事があるのだから」と決意を胸に橋の上でキーボードを広げ歌いだす。
「誰も本気で聞いてくれたりしない、でも歌いたいんだ」と歌うその歌声を聞いて、居合わせたチューズデイは涙を流す。
キャロルは歌がチューズデイの心に届いたことを感じとる。

アンジェラと母のダリアは、大物AI音楽プロデューサーのタオのアーティエンスラボへ来ていた。タオはアンジェラに「最高の曲とプロジェクトを用意する。君はマリオネットになる覚悟はあるか?」と問う。アンジェラは「最高のマリオネットになってやる」とタオに言い切るのだった。

キャロルとチューズデイはキャロルの家へ来ていた。
あるバーでは元音楽プロデューサーのガスがくだを巻き呑んだくれていた。

チューズデイは「学校に馴染めず苦しかった時、ラジオから昔のある曲が流れてそしたら涙が出てきて、自分も音楽をやりたいって思った」と過去を語る。
「キャロルは?」と聞くと、「昔トップアーティストのフローラを目の前で見て、自分も歌いたいって思った」と語るのだった。
さっき歌っていた曲になぜ歌詞がないのかと聞くチューズデイに「あれはただのメロディーで何か足りないんだ」とキャロルは答える。
するとチューズデイはびっしりと歌詞が書かれたノートを手渡し、キャロルは「やろうよ、足りないものを探しに行こう」と言うのだった。
互いに楽器を手に取るとぎこちないふたりの初セッションは、少しずつ音が重なり合っていくのだった。

曲が完成するとふたりはインスタグラムに投稿をする。チューズデイとキャロルは互いに「一緒に音楽やっていきたい」と言い、ふたりは一緒に音楽をやることを決めるのだった。
まだ世界中の誰も彼女たちを知らない。これからキャロル&チューズデイが始まるのだった。

プロデューサーガスとロディ

キャロルはバイトに出かけるが、またもやクビになってしまう。キャロルはチューズデイに掃除を頼んでいたが、家に戻ると部屋はもっとひどい惨状になっていた。「掃除などは全部メイドがやっていた」とさらりと述べるチューズデイに驚きつつも、キャロルはとりあえず部屋の片付けをしようと促した。

一方アンジェラは、タオのラボで妙な椅子に座らされていた。キーチェックをするタオにアンジェラが発声し始めると、機械が無理やりに口を開けて喉を押し始める。
悲鳴を上げ怒り散らすアンジェラだがタオは相手にしないのだった。

「二人で一緒に作った曲をちゃんと演奏してみたい」と考えたキャロルとチューズデイは、火星移民メモリアルホールで知り合いの警備員に無理をいい、ホール内に忍び込むと演奏を始める。
ホールでは火星の有名DJ「アーティガン」で音響を担当しているロディが休憩していた。演奏に聞きほれたロディは二人の動画をこっそり撮影してアップロードすると、瞬く間に大きな話題を集める。
連日酔いつぶれていたガスは、知人であるロディが動画を投稿したことを聞きつけ、彼に連絡を取る。キャロルとチューズデイのアカウントを見つけた二人は突如キャロルの部屋を訪れ、ガスは「今日から俺がお前たちのマネージャーだ」と断言した。

突然現れた二人を警戒するキャロルとチューズデイだったが、ひとまず話を聞いてみることにした。ガスに促されインスタグラムをチェックしたキャロルは、フォロワーが急激に増えていることに気が付く。ロディがこっそり投稿していたことを知ると二人は「盗撮、変態」など言いたい放題だった。
ショックを受けているロディをよそに、ガスは自己紹介を始める。

一方チューズデイの実家では、母親のヴァレリーが兄のスペンサーにチューズデイの居所を確認していた。「捜索願は出さないのか?」と問うスペンサーに対し、ヴァレリーは「選挙が近いから騒ぎを起こしたくない。必ず警察より先に見つけて」と指示する。
現役の州知事であるヴァレリーは、大統領選挙への出馬を考えていた。

ガスの事を怪しんでいるふたりに、ロディはネットでガスの経歴を検索して見せた。有名なドラマーだったことやプロデュース業で成功していたことに驚くが、近年ヒットに恵まれていない為いまいち乗り気になれない。それでも自分たちの才能を認め、「音楽を趣味でやって満足なら俺は何も言わん。だが、銀河中にその歌を届けたいなら俺と組め」と言い切ったガスの熱意に感化され、ふたりは手を組むことを承諾したのだった。

そのまま売り込み会議に突入するとガスは「地道な外回り」を提案し、全員から「やり方が古い」と却下される。ロディが「大物DJに目を掛けてもらって名前を売る」と提案すると、ガスは「じゃあ頼んだ」と丸投げをする。そしてキャロルとチューズデイに知り合いのボイストレーニングを紹介して、会議は終了となった。

ガスに紹介されたボイストレーナーを訪れたキャロルとチューズデイだったが、まるで宗教のように大声で発生する集団を見て怪しむ。
一方のアンジェラもボイストレーニングを受けていたが上手く声が出ない。「この曲は完璧なのだから、君が曲に合わせて」と言うタオに対し、アンジェラは「出ないものは出ない」と反発する。するとタオは新しい機械を作動させた。アンジェラは悲鳴を上げたが、今まで出なかった音域が出せるようになっていた。

謎のボイストレーニングを終え、「あれのどこがボイトレよ」と怒るキャロルにガスも「前はああいう感じじゃなかったんだけどなぁ」と濁す。
その時ロディが「大物、アサインできましたよ」と言い、それはDJのアーティガンだった。

キャロル、チューズデイ、ガスはアーティガンのもとを訪れるが、ガスは締め出しをくらう。ふたりは待たされた上、やっと来たアーティガンはサインか2ショットか何が欲しいのかと聞いてくる。
「そうじゃなくて、曲を聞いてほしい」と言うふたりにアーティガンは、「遊びで音楽をやっているわけじゃない。そんな音楽は聴く価値もない」と拒否をする。
キャロルは帰ろうとするが、チューズデイは持っていた楽譜をライターで燃やす。スプリンクラーが作動し、ガスと3人で急いで逃げるのだった。

売り込み会議の行方

アーティガンとフィーチャリングする作戦が失敗した4人は、次の手立てとしてミュージックビデオの作成を計画し、ロディが発見してきたディレクターAIの「IDEA」を使って撮影を行う。しかしその出来栄えはとんでもないものであり、「IDEA」が「ディレクターAIと称し居座るAIロボット」だと問題になっていることが判明して返品となる。またしても売り込み会議は失敗に終わった。

次の案は「ライブを地道に行って知名度を上げる」というものだった。ガスは旧知の仲であるオーガナイザー・ヘフナーのもとを訪れたが、すげなく断られる。
一方ライブハウスオーナーのベスに会いに行ったロディはキャロル&チューズデイのライブ開催を頼み込み、「一曲だけ」という条件で承諾を得るのだった。

ライブが実現することになり、ふたりはやる気満々に新しい曲を作ることにする。
「キャロル&チューズデイです。たった1曲だけだけど、よかったら聴いてください」というキャロルの言葉で、ふたりの初ライブは始まる。そこにチューズデイの兄・スペンサーが現れるが、生き生きと歌う妹の姿を見て引き返すのだった。
「この記念すべきファーストライブの観客は僕を含めてたったの10人。でもこの10人はきっとこの場に居合わせたことを将来自慢することになる」そう感じるロディだった。

ライブ後、キャロルとチューズデイは「次のライブは観客10万人。サイドニアフェスのメインステージだ」と驚きの報告をされる。ドタキャン常習犯であるカリスマバンド「オメガ」のボーカル・ヨシュアの補欠として、ヘフナーから話が回ってきたのだ。
当日、火星のトップアーティストたちが出演する大型フェスの雰囲気に圧倒されるキャロルとチューズデイ。
ヨシュアは会場に到着するもののパニック状態に陥っており、キャロル&チューズデイがステージに上がる。観客からの激しいブーイングにも負けずに演奏を始めたが、突如ステージが暗転しヨシュアが姿を現したことで、二人は歌いきることもできずに悔し涙を流した。
そんな彼女たちのもとに、二人が憧れている歌手のクリスタルが現れ「素晴らしいステージだったわ。あの状況でよく挫けなかった。あなた達の歌はきっと届いてる」と励まし、抱きしめた。ふたりは絶対にここに帰ってくると誓うのだった。

『マーズブライテスト』への挑戦

次の目標はオーディション番組『マーズブライテスト』に参加することに決定する。応募者20万人のうち、本選出場は8組だけという狭き門だが、二人は早速応募したのだった。
一方、アンジェラもタオから『マーズブライテスト』の参加を告げられる。既に出場することは決まっており心配するダリアだったが、タオやアンジェラは「素人に負けるはずが無い」と強い自信をのぞかせていた。
予選当日、カメラに映ることを恐れたチューズデイはサングラスをかけて変装し、審査員からの質問にも無言を貫く。代わりにキャロルが難民キャンプにいたこと、施設で育ったことを語った。
キャロルの過去を初めて知ったチューズデイは、「私、何の当てもなくこの町に来て、キャロルにいっぱい助けてもらって。なのにキャロルのこと何も知らなくて、自分のことばっかりで。いつもウジウジして自信もなくて、自分が嫌になっちゃって」と本音を吐露する。
そして、両親は離婚していて父親をよく知らず母親は政治家であること。兄はハーバード大卒であること。自分は学校にも行けなくなった落ちこぼれであることなど、チューズデイ自身の事を語ったのだった。気持ちを明かしたチューズデイは「私はキャロルと一緒に音楽をやりたくてここにいる。何も悪いことしてるんじゃないし堂々としてたいの」とキャロルに伝える。その数日後二人のもとに本選出場の連絡が入った。

ついに『マーズブライテスト』の本選へとやってきたキャロルとチューズデイ。楽屋に入ると出場者たちがそろっていた。
その中で、チューズデイの大ファンだというシベールが声をかけてきた。チューズデイに憧れて今回応募したとのことだった。

とうとう番組が開始され、次々と出場者が発表される。
99歳の双子・ファイヤー兄弟。
チューズディのファンのシベール。
女装集団・マーメイドシスターズ。
強面の大男・OGブルドッグ。
独特の世界感を醸し出すGGK。
SNSの有名人・ピョートル。
そしてキャロル&チューズデイ。
それに加えて特別枠で参戦するアンジェラ。

そしてトーナメント表が発表され第1戦目はファイヤー兄弟VSピョートル。
先攻はファイヤー兄弟で、見た目を裏切る素晴らしいメタルサウンドを繰り広げるのだった。
後攻はSNS上で大人気のピョートル。目立ちたがりで子供のときから歌手になりたかったという彼は、素晴らしいダンスと歌声を披露する。審査員から本気が伝わってきたと評価され、第1戦目はピョートルの勝利となった。

第2戦目はOGブルドッグVSキャロル&チューズデイ。先攻は元ギャング・元ドラッグディーラーを名乗るOGブルドッグで、過激なラップで自己紹介をする。ヒップホップラッパーかと思いきや、オペラとヒップホップラップの融合で美しい歌声を披露するのだった。

次はキャロル&チューズデイの出番。AIを使わない曲作りを司会者から聞かれ肯定したふたりは、新曲の美しいメロディと澄んだ歌声を披露する。
第2戦の結果発表となり、審査員は「OGブルドッグ。ラップとオペラの融合はとても興味深かったけど嘘はよくなかったわね。実はおばあさんに来ていただいてるの」と言い、OGブルドッグは祖母から身元の詐称を暴露されてしまう。
キャロル&チューズデイの評価は「まさにその音楽だけで勝負しようという姿勢、それは他にはない個性になってた。次も期待していいわね?」となり、勝者はキャロル&チューズデイが選ばれたのだった。

キャロルとチューズデイが1回戦突破を喜んでいると、そこにアンジェラが現れる。「私ね、アンタたちの歌嫌い。大っ嫌い!調子に乗った素人ほどムカつくもんはないわ!」と去っていくのだった。唖然とするふたりにガスは「なに、ようやくライバルとして認められたってことさ」と言うのだった。
キャロルとチューズデイが楽屋に入ると、「チューズデイと一緒に組みたい」とチューズデイに抱きつき言い出すシベールに、どう対応したらいいのかわからないチューズデイだった。

第3戦目はGGKVSマーメイドシスターズ。先攻のGGKは独特な世界観を見事に歌い上げ、特徴ある歌声と不思議なメロディが重なり合う美しいステージだった。
後攻はマーメイドシスターズ。女装の3人組とボイスパーカッションの男性の4人組。楽曲は素晴らしいハーモニーなのだが、とんでもない歌詞を歌い上げ審査員に途中で演奏を止められてしまうのだった。当然勝者はGGKとなる。

シベールが「緊張しちゃって」とチューズデイにハグを求めると、チューズデイは優しくハグするのだった。
4組目の先攻はシベール。「人は若い時だけ美しさを表現できる」と言うシベールのパフォーマンスは、美しさを表現したウィスパー系の綺麗な歌声だった。

次はとうとうアンジェラの登場だ。沸き立つ会場で審査員は「リスクを背負ってまでオーディション番組に挑戦した理由を教えてくれる?」と聞く。対して「それはこれから見せるパフォーマンスで証明したいの」と答えるアンジェラだった。言葉通りアンジェラはパワフルで圧倒的な歌唱力を見せつけたのだった。
審査員はアンジェラに「おめでとう!ここに素晴らしい歌手が誕生したことを認めるわ!」と評し、アンジェラが勝利を収めるのだった。

シベールは舞台袖のチューズデイに駆け寄り「負けちゃいました。でも次はシベール&チューズデイで出ればいいよね?」と言い出すのだった。
チューズデイが断るとシベールは表情を変え、「信じられない」とつぶやき走り去っていくのだった。

それぞれの準決勝

『マーズブライテスト』準決勝が始まった。審査員にはふたりにとって因縁の相手であるDJのアーティガンが登場するのだった。青ざめるガスにロディは、「ああ見えて審査に私情を挟むような人じゃない」と言いつつ「といいなぁ」と付け足す。

キャロルとチューズデイが楽屋に入ると、そこにはシベールがいた。
シベールは「チューズデイ…あなたは僕にとっての唯一の希望でたった1つの拠り所でした。あなただけは僕を分かってくれると思ってました」と言って去っていく。
チューズデイは心配になりシベールを追うのだった。

準決勝第1戦目は、GGKVSアンジェラ。先攻はGGK。
GGKは自身について「私は砂漠の小さな村で生まれたのね。でもそこは私みたいな人間は居場所がなかったのね。それで私の心は一旦死んだの。でも気付いたの。居場所がなかったら自分で作ればいいんだって」と語るGGK。独特な世界観を持つ彼女は会場をミステリアスな雰囲気に包むのだった。

シベールを探していたチューズデイは、撮影禁止にも関わらずSNSのためにこっそり撮影をしていたピョートルと遭遇する。
キャロルはチューズデイへの誕生日プレゼントを見ながら、「なんかリズム合わないなぁ」とつぶやくのだった。

後攻はアンジェラ。
楽曲はアンジェラのスター性をより引き出すものだった。そこに彼女の圧倒的な歌唱力が備わり、人を惹きつける彼女らしいパフォーマンスだった。
審査員は「私たちの想像を超えてまた新しい可能性を見せてくれた」と評価し、アンジェラが決勝進出となったのだった。

準決勝2戦目先攻はピョートル。
ロートーンの美声と美しいダンスで、彼の過去を投影したような歌詞が会場を惹きつけるのだった。

そのころ、次が出番なのに現れないチューズデイを心配して、キャロルが楽屋に向かうとチューズデイの叫び声が聞こえた。楽屋には「ハッピーバスデイ、チューズデイ」と書かれた箱があり、彼女が箱を開けた途端煙が出たのだった。
箱の中身はドライアイスで、チューズデイは右手に凍傷を負いギターを弾ける状態ではなかった。ふたりはギターなしでも出来る曲を考える。

ステージにふたりが登場すると、審査員は「今回はギター抜きなのかしら?ピアノとギターがふたりのトレードマークだと思ってたんだけど」と言う。キャロルは「それだけじゃない。新しい面を見て欲しいです」と言うのだった。
今までの楽曲とは打って変わり、ピアノの切なく力強い旋律の美しいバラードソングだった。どこか不安定でそれが心に染みる、そんなエモーショナルなパフォーマンスだった。

そして、結果発表。審査員はピョートルに「すごく完成度が高かった。あなたはものすごい努力家ね。しかもその努力を微塵も感じさせないのも素晴らしいわ」という評価が与えられる。
対してキャロル&チューズデイには「あなたたちはまだまだ未完成で不安定でもある」と言われる。しかし「もちろんよくできた曲や完璧な歌は素晴らしいものだわ。でも時に音楽はその人の不安や迷いを映し出すこともある。あなたたちはそれを見事に表現できていたわ」という評価をもらうのだった。
「どちらの歌をもう1曲聴いてみたいかと問われたら、それはあなたたちの方ね」と、キャロル&チューズデイが勝利するのだった。

ガスはチューズデイに怪我をさせた犯人を監視カメラで探そうとしたが、肝心なところが映っていなかった。そこでロディはピョートルがSNSであげていた動画に犯人の一部が映っていたことに気が付く。
楽屋でキャロルがチューズデイに誕生日プレゼントを渡そうとしていたとき、スタッフから犯人が捕まったとの一報が入る。
犯人はシベールだった。「傷ついた?僕だってチューに傷つけられたんだ。チューが悪いんだ。チューが悪いんだ!僕を裏切るから!僕を裏切るから天罰が下ったんだ!」と言うのだった。

チューズデイの診察後、キャロルは「あのさ、こんなこと言いたくなかったんだけど。チューズデイのハッキリしない態度もよくなかったんじゃないかな?」と言う。
「このままじゃアンジェラには勝てない。ここで負けたらまたバイト生活だよ。それでもチューは帰れる家があるからいいけど」と言うキャロル。チューズデイは「家があったって誰も私を待ってない。あの家のどこにも私の居場所なんてない」と泣き出すのだった。

その時「お迎えに参りました。お母さんがお待ちです」とチューズデイの母親に命じられた男が現れ、力づくでチューズデイを連れ去る。
キャロルは必死に助け出そうとするが、振り落とされてしまう。

離れ離れのふたり

実家へ連れ戻されたチューズデイに母親のヴァレリーは、「余計なスキャンダルがどれだけ選挙のダメージになるか考えたことある?あんたには何も期待していない。だから邪魔だけはしないでちょうだい」と冷たく言い渡すのだった。

ガスとキャロルは海辺のレストランにいた。
ガスは自分の過去について語りだす。「俺はな、人生でたった1つだけ後悔してることがある。かけがえのない相手に裏切られたと感じた時、そいつを連れ戻しに行かなかった。行っても仕方ないってそう自分に言い聞かせた。でもそんなのは嘘っぱちだ。俺に勇気がなかっただけさ」そう言って、ガスはキャロルに「今どんな気持ちだ?」と問うのだった。

一方、チューズデイの部屋に兄のスペンサーが来ていた。
「あのライブハウスにお前を連れ戻しに行ったんだけど、歌うのを見てたら連れて帰れなくなって。あんな生き生きした顔、初めて見た気がしてさ」とスペンサーは告げる。
スペンサーは過去に音楽をやりたかったことあきらめたことを話し、だからこそお前には夢を実現させてほしいと言い、チューズデイに「どうしたい?」と聞くのだった。

ガスの問いに、キャロルは涙目になりながら「私は彼女を必要としている!彼女もきっと私を必要としている!」と言うのだった。するとガスが「実はこれからちょっと誘拐に行くんだけど一緒に来るか?」と聞き、キャロルは間髪入れずに「行く!」と返事をする。もちろんロディも巻き込み3人はチューズデイの家へ向かうのだった。

アーティエンスラボでは、アンジェラが「AIが作っている歌詞、心を読まれてるみたいでちょっと怖いんだけど」と話していた。
タオは「このラボは場所自体がセンサーになっていて、君の全てをモニターしている。本人の意識を超えた無意識の部分が歌詞に反映されることもあり得る」と答えるのだった。
アンジェラは「私はさ、いつだって誰かに必要とされたいと思ってた。歌だってママに認めてもらうために歌ってた。でも今度の歌はそういう歌じゃない。だから、明日は私だけを見て」と言うとタオは了承する。

キャロル、ガス、ロディの3人はチューズデイの家へたどり着いていた。ガスは「陽動作戦に出よう」と、囮のロディは門の前でひと暴れすることになる。
家の中ではスペンサーがチューズデイを脱出させようと玄関へ向かっていた。
警備ロボが現れるがスペンサーが力づくで止め、その隙にチューズデイを外へ逃がすのだった。
ガスとキャロルはロディが気をひいている間にはしごを使い塀を越えようとする。
そこに走って来るチューズデイの姿を見つけ、ふたりはようやく再会を果たす。警備員たちが駆けつけるが、ガスは「先に行け!」とふたりを逃がすのだった。

アルバシティへ向かう電車の中で、キャロルはチューズデイに「ごめん。私さ、チューズデイと曲を作ったり、歌ったりすごく楽しくて。他に何にもいらないって思ってた。けど、いつの間にかオーディションに勝つことばかり考えるようになっちゃって」と謝るのだった。
チューズデイも「ううん。私こそキャロルに心配ばっかかけて。初めて会った時さ、あの時思ったんだ『やっと会えたんだ』って」と気持ちを伝えるのだった。
そしてずっと渡せなかった誕生日プレゼントを渡すキャロルだった。

ふたりが急いで会場へ向かう途中『マーズブライテスト』の決勝戦が始まってしまう。
先攻はアンジェラで、彼女はこれまで以上にパワフルな歌声を披露する。誰のためでもない、自分のために歌う。その輝かしい歌声は会場を圧倒するほどに情熱的なパフォーマンスだった。
アンジェラのステージが終了した時、キャロルとチューズデイもどうにかスタジオに到着するのだった。

ふたりの決勝戦

なんとかステージに間に合ったふたりだが、審査員のカトリーヌはルール上「番組スタート時点でスタジオに来てない出演者はその時点で失格」と告げる。
キャロルは「ごめんなさい。失格は受け入れます。でもお願い、どうか今ここで歌わせて欲しいんです!」と言う。「たとえ歌っても失格は覆らないわ。それじゃあ意味がないんじゃない?」というカトリーヌ。
「いいんです。もう優勝とか関係なくて。私たちここで今2人で歌いたい。それだけなんです」と言うふたりに、アンジェラも彼女たちにほんの少し時間をあげてと援護する。失格には変わりないが、特別にパフォーマンスの機会を与えられるふたりだった。

ふたりはステージに立つ。「世界中の自分が1人ぼっちだと思ったことのある人に捧げます」とキャロル。「私たちが初めて作った2人の原点の曲です。『The Lonliest Girl』」とチューズデイ。
キャロルが奏でる美しいピアノの旋律で始まる。そこにチューズデイのアルペジオと歌声が溶け合っていく。ふたりの重なり合う歌声と演奏は、会場の全ての人の心に問いかけるように音が紡がれていくのだった。曲が終わると、大喝采が起こりアーティガンすら涙を流し立ち上がるのだった。

鳴りやまない称賛のなか、カトリーヌは「みんなの気持ちはとてもよく分かる。でも失格を覆すわけにはいかないわ」と観客に言うのだった。
しかし続けて、「ただし、どんな規則にも例外ってものがあるはず。たった一度だけこの規則を破ってもいいかしら?『マーズブライテスト』の優勝者はアンジェラ!ただし今回のみの特例としてアンジェラ、キャロル&チューズデイ その両方にデビューの機会を与えます!」と言うのだった。

デビューへの切符を掴んだキャロル&チューズデイ。ふたりには様々な仕事のオファーが舞い込み、有名人になった自覚のないまま世間で注目を集める存在となっていた。
ガス、キャロル、チューズデイはデビューの交渉をするため「ブライテストレコード」を訪ねていた。アンジェラはふたりに「さっさとデビューしてきなさいよ。競争相手がいないとつまんないわ」と言って去るのだった。

3人はデビューの交渉のため、カトリーヌの部屋へ案内されていた。カトリーヌは「あなたたちのおかげで今年は特に素晴らしい放送になったわ」とふたりに告げる。
彼女は「ブライテストレコーズは正式にキャロル&チューズデイと契約を結びたいと思ってるわ」と言う。
ガスは「ここからは条件面での話だ。お前ら外で待ってろ」と言うのだった。

『キャロル&チューズデイ』の登場人物・キャラクター

主人公

キャロル

チューズデイ

アンジェラ

keeper
keeper
@keeper

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