還願(Devotion)のネタバレ解説・考察まとめ
『還願(Devotion)』とは台湾の「Red Candle Games」が開発したホラーゲームでSteamから配信されていた。主人公の脚本家・フォンウが次元が歪んで時代が錯綜する台北の集合住宅を彷徨いながら元女優の妻・リホウや娘・メイシンを捜すうちに、過去の断片を集め家庭崩壊に至る経緯を徐徐に思い出していく。当時の社会情勢や精神病への偏見、新興宗教の問題などを盛り込み、消えた娘を追う過程で自らのエゴを突き付けられる主人公を通し、親子愛や家族愛とは何かを問う作品に仕上がっている。
1980年のメイシンの部屋にて鉢植えから咲いたチューリップを見守るフォンウの言葉。彼も確かに人の親であり、メイシンの成長を心から喜んでいた。しかし脚本家としての挫折や生活苦が重なり妻子への思いやりに欠けた彼は無神経な言動を繰り返し、最愛の人達を病むまで追い詰めてしまった。フォンウにとっての美しい花とは一粒種のメイシンの比喩に他ならず、彼女の健康だけを祈っていた初心が垣間見える。
「でも私が病気の治し方を知ってることを パパは絶対に知らないんだ」
物語の終盤、全ての真実を知ったフォンウが浴室の扉を開けると元気になったメイシンが向こうへ駆けていく。フォンウはメイシンを追って歩き出す。聡明なメイシンは自分の発作が心と繋がっているとわかっていた。母の事を思い出すと胸が苦しくなる、寂しさで息もできなくなるのがその証拠だ。両親が再び揃い、家に笑い声が戻れば自分の病気もきっとよくなると彼女は信じていた。しかしフォンウはメイシンですらとっくにわかっていた治し方に気付かず、結果として大事な人間を失ってしまった。
「パパ、おうちへ帰ろう」
フォンウを小さい公園に導いたメイシンの最後の言葉。この光景はフォンウの幻覚かメイシンの霊が見せた彼女の生前の願望の具現かは定かではないが、どんなに恐ろしく惨たらしい出来事があった場所でも、両親と暮らした集合住宅こそメイシンにとってかけがえのない我が家であり、フォンウにとって唯一の居場所だった。もはや何もなくなってしまった現実を知らず、うちへ帰りたがる彼女の心情が切ない。
『還願(Devotion)』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
『還願(Devotion)』のDevotionの意味は献身
台湾版のタイトルは『還願』だが、日本版タイトルは『Devotion』に変更された。しかし並列して表記する場合が多い。『Devotion』の意味は献身、一意専心、傾倒、深い愛情、熱愛の他に宗教的な帰依、信心、祈祷、勤行などもあり、フォンウは娘の回復を祈りインチキ新興宗教に帰依するも報われず、リホウは娘と夫を生活苦から救う為に芸能界復帰を試みるがフォンウの抵抗で果たせず、メイシンは両親の期待にこたえようと無理した挙句に体調を崩す。それぞれの幸せを一途に願って献身しながらすれ違いのはてに家庭崩壊に至った悲劇と、背景にある新興宗教の問題を包括した秀逸なタイトルである。
『還願(Devotion)』の発売前に公式が投稿した動画を解読すると、作中の歌番組の初放送日が出てくる
「Red Candle Games」(赤燭遊戲)は一作目から発売前に宣伝を兼ねた謎解き動画を投稿しているのだが、本作の予告動画では女の子向け着せ替え遊びの台紙のモデルのポーズが慈孤觀音を彷彿とさせたり、暗号から解読した数字を並べるとメイシンが出演した歌番組のモデルとされる「五燈獎」(ウ・ドン・ジャン)の初放送日になったりと、本編に繋がる数々のヒントが仕込まれている。
『還願(Devotion)』発売前のユーザー参加型イベントでリホウの失踪が判明
その日にその時間に指定された場所に行くと、ARGイベントが行われてて、その場に行った参加者はスタッフに人探しの依頼を頼まれる。内容は大体こう、自称「陸心会」という団体のとあるメンバーはストーカーされてるようだからそのストーカーを探し出して欲しいと。
— すなのえす (@edith12741) February 24, 2019
本作発売前にユーザー参加型の公式イベントが開催された。まずイベントWebページを開くとたくさんの神棚が出現し、その神棚に願いごとをするとヒントを貰える。このヒントを解いて指定された時間と場所に行くと、陸心会という団体のメンバーからストーカー捜しを依頼される。参加者が謎を解いていくうちにこのストーカー被害を受けている陸心会のメンバーこそ実は黒幕であり、ストーカーの正体は陸心会という怪しい宗教団体を内偵調査していた人間だと判明する。
陸心会はホー先生が主催していた新興宗教団体の母体であり、ストーカーはリホウの妹。リホウは本作の冒頭1987年時点で失踪を遂げ、姉の蒸発に陸心会が絡んでいると見た妹が調査を継続していたのだ。以上の情報から1987年時点でリホウは既にフォンウに殺されているか、あるいは娘の死の遠因となった陸心会を探って処理された可能性が高い。
『還願(Devotion)』の製作者は『フィンチ家の奇妙な屋敷でおきた奇妙なこと』から着想を得た
『還願(Devotion)』は『サイレントヒル』や『Layers of Fear』などの一人称視点のホラーゲームから着想を得ているが、中でも親和性が高いのは『フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと』。特定のアイテムを取得したり特定の場所である行動をする(日記を開く、覗き穴を覗く)などをすると、プレイヤーの操作キャラクターが主人公から過去の同じ場所で同じ事をした人物または動物へ切り替わり、一人称視点は引き継いだまま物語が進む。この特徴は『還願(Devotion)』と同じであり、両作をプレイするとさらに余韻が増す。
『還願(Devotion)』の主題歌・挿入歌
エンディングソング:草東沒有派對(台湾外表記:No Party For Cao Dong)『還願』
エンディングソング:鞏莉芳(何夏)&杜美心 (劉芷融)『碼頭姑娘 Lady of the pier』
目次 - Contents
- 『還願(Devotion)』の概要
- 『還願(Devotion)』のあらすじ・ストーリー
- 『還願(Devotion)』のゲームシステム
- 基本システム
- 4種類の扉
- 申年1980年の扉
- 丑年1985年の扉
- 寅年1986年の扉
- 卯年1987年(現在)の扉
- 『還願(Devotion)』のアイテム
- 『花と愛』
- 『港のお嬢さん』
- アンティークドール
- バレリーナの人形
- 金属のレリーフ
- 折り紙のチューリップ
- 『還願(Devotion)』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- 杜豐于(ドゥ・フォンウ)
- 杜美心(ドゥ・メイシン)
- 鞏莉芳(ゴン・リホウ)
- サブキャラクター
- 何老師(ホー・ラオシ)
- 『還願(Devotion)』の用語
- 還願
- 紅龍
- 紙人形
- 選び取り
- 女兒紅
- 慈孤觀音
- 言問い
- 『還願(Devotion)』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 「この花が将来 健やかに育ちますように」
- 「でも私が病気の治し方を知ってることを パパは絶対に知らないんだ」
- 「パパ、おうちへ帰ろう」
- 『還願(Devotion)』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 『還願(Devotion)』のDevotionの意味は献身
- 『還願(Devotion)』の発売前に公式が投稿した動画を解読すると、作中の歌番組の初放送日が出てくる
- 『還願(Devotion)』発売前のユーザー参加型イベントでリホウの失踪が判明
- 『還願(Devotion)』の製作者は『フィンチ家の奇妙な屋敷でおきた奇妙なこと』から着想を得た
- 『還願(Devotion)』の主題歌・挿入歌
- エンディングソング:草東沒有派對(台湾外表記:No Party For Cao Dong)『還願』
- エンディングソング:鞏莉芳(何夏)&杜美心 (劉芷融)『碼頭姑娘 Lady of the pier』