「GRAVITY DAZE」主人公キトゥンがシリーズを通して貫いた信念と貫いたからこそ活きてくるラストバトルでの熱い演出

GRAVITY DAZE主人公であるキトゥンは、シリーズを通して人助けに終始することになる。彼女はなぜ人々を助け続けるのか?ゲーム開始当初記憶を失っていた彼女がシリーズを通して成し遂げたかったこととはなんだったのか?彼女の生い立ちや、演出、ラストバトルでの絶叫について解説する。

GRAVITY DAZEの概要

PS Vitaが発売されるにあたって開発された「GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において彼女の内宇宙に生じた摂動」。好評につきPS4への移植がなされ、5年後にはシリーズ二作目となる「GRAVITY DAZE 2/重力的眩暈完結編:上層への帰還の果て、彼女の内宇宙に収斂した選択」が発売された。

GRAVITY DAZEの主要キャラクター

キトゥン

GRAVITY DAZEシリーズの主人公。
ゲーム開始当初から記憶を失っており、自分の本当の名前や、生まれた場所、今いる場所がどこなのかもわかっていない。
彼女には重力の方向を変える能力があり、プレイヤーはその能力を駆使して人々の願いを聞いたり、敵を倒したりしながらストーリーを進めていくことになる。
基本的には天真爛漫で真っすぐな性格の少女だが、面倒なことや明らかに理不尽な要求をされると露骨に嫌がったりと、ただの「いい子」ではないことが垣間見える。

ダスティ

キトゥンの守護獣である黒猫。
キトゥンはダスティの力を借りて重力の方向を操作しているため、ダスティが近くにいないとただの少女になってしまう。
このゲームでは守護獣を持っているキャラクターがキトゥン以外にも何人か登場するが、どういった共通点で守護獣が発現するのかはゲームの終盤になるまで明かされない。

GRAVITY DAZEの舞台

ヘキサヴィル

GRAVITY DAZEの舞台となる街の名前。キトゥンはここで記憶喪失の状態で目を覚ますことになる。
普通に想像する街とは大きく異なり、島が丸々浮いており、下を見下ろすと底の見えない空間が広がっている。
始めは島が一つ浮いているだけだが、スト―リーの進行とともに島が増え、最終的には4つの島からなる街だということがわかる。

ジルガ・パラ・ラオ

GRAVITY DAZE 2の舞台となる街の名前。
異次元へと飛ばされたキトゥンはこの街に降り立つことになる。
ダスティとはぐれてしまい重力を操れなくなったキトゥンは採掘船に拾われ作業員として働くことになるが…。

GRAVITY DAZEの魅力

キトゥンと人助け

GRAVITY DAZEシリーズの最大の魅力といえば何といっても主人公であるキトゥンだろう。
プレイヤーがゲームを開始した時点から、彼女はひたすらにまっすぐだった。
本ソフトは、プレイヤーがキトゥンとなって重力アクションを使いこなしながら人々を助けつつ、不思議な世界の謎に迫っていくというのが大まかなゲーム内容だが、この人助けが一筋縄ではいかない。

物語の冒頭、記憶を失った状態で目を覚ましたキトゥンは、少年の命を救うことになるのだが、この少年にまず文句を言われ、さらにはその少年の親にまで文句を言われる。しかもキトゥンのまったく関知しない内容で罵倒されるのだ。キトゥンはその場から逃げ出してしまうのだが、プレイした人は思ったのではないだろうか。「このゲーム大丈夫か?」と。
記憶を失っているため自分が今どこにいるのかもわからないし住む場所すらない。そんな主人公が命を救った相手から罵倒されるのだ。筆者はいちプレイヤーとして、なんて嫌な住人なんだと思った。
だがキトゥンは違ったようで、めげることなくこの後も人々を助け続けた。要領を得ない頼みでもぶつくさ言いながら、それでも人々を助け続けたのである。アクションゲームでサブクエスト、となれば人助けに終始するのはよくあることかもしれないが、そのやりとりの描き方がうまいのだ。
キトゥンは文句を言われれば文句を言い返すし、理不尽な要求にははっきりと「No!」と言う、気丈な少女として描かれている。だからこそプレイヤーも理不尽な世界の住人を助けることに嫌悪感を抱かずにプレイできるのだろう(ちなみに、重力アクションの爽快感もこのゲームの魅力の一つだ。キトゥンは重力の方向を変えることで、自在に空を「落ちる」ことができる。しかしこの重力は周りの者にも影響を与えるため、住人の近くで使用すると住人が吹っ飛んでいってしまうのだが、基本的に住人が嫌味な性格なので罪悪感を感じることなく思いっきりアクションに没頭できる。このゲームの世界の住人が少し嫌味な性格に描かれているのはそういった理由もあるのかもしれない)。

人助けの理由

キトゥンはシリーズを通して人々を助け続けた。
ストーリー進行上とかサブクエストで引き受けたからとかは置いといて、その理由に触れたいと思う。
GRAVITY DAZE 2の終章で、キトゥンは世界の上層にあるエトという街にいくことになる。その街の住人は、はるか昔、上昇を続ける暗黒の海から逃げるため世界の柱と呼ばれる巨大な柱を登って上層へと昇ってきた過去がある。そしてこの街こそキトゥンの生まれた場所であり、さらにはそこの女王だったというのが判明する。
暗黒の海がいまだ上昇を続けていることを知った女王キトゥンは、なんとかして下層の人々を救おうと呼びかけるが、能力の源である守護獣を当時発現していなかったため支持を得られず、暗殺を企てられ下層へと突き落とされてしまう。落下の途中守護獣が発現するが記憶を失い…というところでGRAVITY DAZE 1の冒頭に繋がるのだ。
「下層の人々を救いたい」。これこそがキトゥンが人々を助け続ける理由である。記憶を失っても信念を曲げず、人々を支え続けた。「女王だから人々を助ける」のではなく、キトゥンというキャラクターは人を助けずにはいられなかったのだ。1から仄めかされていた上層の謎が解き明かされるとともに、これまでプレイヤーが共に歩んできたキトゥンの真っすぐさを実感できる非常によくできたストーリー展開に、感動を覚えたプレイヤーも多いのではないだろうか。

どうしても「お使い」になりがちなゲームの仕様だが、このストーリー展開を知った後だと、それら一つ一つの積み重ねによる感動なのだと思い知らされ、嫌味だった住人もどことなく愛らしく思えてくる。間違いなくこのゲームの一番の魅力はまっすぐなキトゥンというキャラクターだろう。

ラストバトルでの絶叫

終章にて上層にいたキトゥンは、下層が襲われていることを知る。急いで戻るキトゥンだが街はボロボロ、奮闘していた仲間も倒れ…というところでラストバトルが始まる。
相手は現在エトで王位に就いているカイという少年で、エトを暗黒の海の届かない場所へ連れていくために、下層の街を滅ぼしその重みで世界の柱を切り離すのが目的だった。

今までずっと守ってきた街をボロボロにされ、共に戦ってきた仲間もやられ、キトゥンは何を思ったのだろうか。
その答えは、ボスとのやり取りが終わった後のキトゥンの叫びを聞けばわかるだろう。あのシーンが心に残っているプレイヤーは少なくないはずだ。
今までどんな理不尽にも耐え、空回りをしても必死に解決策を見出し、決して後ろ向きにならなかったキトゥンが、そのイメージからは想像もつかない声で絶叫するのである。
怒りや悲しみや憎しみなど負の感情を全面に出した絶叫を聞いて、筆者は「このボスには負けられない、負けたくない」と心から思った(一回負けた)。

前項で述べたキトゥンの真っすぐさを改めて実感するとともに、プレイヤーにひどく感情移入させる演出が非常にうまいと感じさせられる名シーンだった。

最後に

この記事でいくらかこのゲームの魅力は伝わっただろうか。
ここに書ききれない魅力がまだまだたくさんあるが、とりあえずは本記事で少しでもこのゲームの魅力が伝わったのなら嬉しい。

keeper
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