初恋限定。(Hatsukoi Limited.)のネタバレ解説・考察まとめ

『初恋限定。』は、河下水希による漫画作品。
『週刊少年ジャンプ』にて、2007年44号から2008年26号まで連載された。
中学2年生の有原あゆみと江ノ本慧を中心に、中学生と高校生計8人の恋が同時進行で進む姿を描いたオムニバス作品だが、連載期間は約半年と短命に終わった。
いわゆる「打ち切り」となった作品であるが、打ち切りに遭いながらドラマCDやアニメといったメディアミックス化された珍しい作品でもある。

あゆみ達友人の知らぬ間に彼氏を作っていた土橋だが、部員から頼まれてコーチ役を引き受ける時の「…こないだまでは関東大会があたしの中心だったけどこれからはアンタがアタシの中心だな」というセリフと笑顔は、男子を意識させるのに十分な「破壊力」があった。

それから土橋によるマンツーマン練習が始まるが、練習は厳しかったものの上手く出来たら笑顔で褒めてくれたので、寺井は彼女の笑顔のため必死に努力し、土橋からも通常練習に戻っても大丈夫と言われるまで上達する。
だが、土橋から上達を認められた事は二人だけで一緒にいられる時間の終わりを意味しており、寺井はこれまでのように二人で練習出来ないという事実にショックを受ける。

褒めているのに寺井は「それなら頑張らなきゃよかったかも…」と、全く嬉しそうな表情をしておらず「そしたら…ずっとこうやって土橋さんと練習が…」と、後ろ向きな発言をする。
この寺井の発言から「これからも自分と一緒にいたい」という気持ちを感じ取った土橋は寺井からの告白と捉え「このまま本当に付き合ってみる?」と、軽いノリで告白OKの返事を出してしまう。

デートも何もした事がないのにいきなり付き合う事になって驚く寺井だが、付き合う事になってからも特に恋人らしい事はないまま時間が過ぎていた。
体育祭では各種目で1位と大活躍だった土橋に対して寺井は100メートル走で3位と結果が出せずに落ち込むが、土橋は「アンタ去年は100m走ダントツでビリだったじゃん!それが3位ってスゴイことじゃないの?」と、彼の努力を認める言葉を掛け、最後に「努力賞」として土橋りかのハグという最高のご褒美をプレゼントしてくれた。

ちなみに、土橋自身は恋愛に慣れていないため、寺井が手を繋ごうとすると顔を真っ赤にして避けるなど、表情が乏しい彼女にしては珍しくかわいらしい反応を見せてくれた。

武居源五郎「……俺………水着が好きなんだよなあー」

武居が自ら立ち上げた水泳部だが、部員が転校した事によって4人となってしまい、部として必要な人数である5人揃わなくなった事によって同好会に格下げの危機を迎える。

勿論、同好会でも活動出来ない事はないが、これまで無料だった(恐らく部費を利用していた)プールをタダで使えなくなるばかりか、大会にも出られなくなってしまうので、今のメンバーで大会に出場する事を目指していた水泳部にとって格下げは事実上の廃部を意味していた。

水泳部は5人目の部員集めに奔走するが、寒い時期の勧誘に誰も相手にしてくれず、教師から通告された期限の一週間は目の前に迫っていた。

武居から真っ先に勧誘されたものの断っていためぐるは、スイミングスクールという今でも自分の泳ぐ場所がある武居が水泳部にこだわる理由が気になっていた。

それに対する武居の言葉が「水着が好き」で、文章だけ見たら変な人で、その言葉を聞いためぐるも武居に対して「変な人」と呆れるが、武居は「あの水着本当に気にいってたからさー みんなで選んでみんなで決めた あれ着て大会出るんだってみんなで頑張って……それを着る機会がなくなっちまうのは淋しいなあー」と続ける。

武居にとって最も大切なのは自分が立ち上げた水泳部であり、部員勧誘のため水着で校内を駆け回るなどやりすぎな行動が目立つものの、全ては愛する水泳部のためだった。

昔と変わらない、愛すべき水泳馬鹿である武居と水泳部のため、めぐるはマネージャーという但し書きが付くものの水泳部入部を決意し、彼女の巨乳に沸く部員に対してマネージャーとして部員をビシバシ鍛え上げる事を宣言した。

曽我部弘之「じゃあ ま…また明日」

楠田のアシストもあって千倉と二人きりで帰る事になった曽我部から別れ際に出た「また明日」という言葉だが、告白のチャンスを逃したと楠田と読者は残念がっていたものの、これは後に重要な伏線となっている。

連城の登場で根拠のない自信を打ち砕かれてしまった曽我部は物陰から千倉を見るしかなく、彼女の帰りを待ちながら偶然を装って一緒に帰る事しか出来なかった。

曽我部と一緒に帰る千倉は曽我部に対して「また明日!」と、あの時の曽我部と同じセリフを返すが、また明日会えると思っていた連城は海外に飛び立ってしまい「また明日」を言う相手がいなくなってしまった。

当初は何気ないギャグシーンと思われていたところ、別れの悲しみを更に強くさせる重要な伏線だった事に驚くとともに、連城との別れを乗り越えて千倉が絵を完成させるまでの流れが美しい、作中屈指の名シーンを語るためには欠かせない名言である。

江ノ本慧「もう一度忠告するけどいい?男は中身なのよ中身!!」

連載開始当初は「男は顔」と公言していた江ノ本だが、楠田との恋で「男は中身」と語るようになっており、彼女の恋愛観は180度変わっていた。

そして、財津兄弟への告白の返事に悩むあゆみに「男は中身」としつこく説く。

楠田との恋で連載開始当初とは文字通り別人になった江ノ本の変貌ぶりを見て、土橋からは「アンタが言ったらマジギャグだから」といじられるが、中学生パートのメインを張った江ノ本にとって、からかわれたとしても彼女の変化を認めるコメントは最高の褒め言葉でもあった。

『初恋限定。』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

アニメで名前が決まった男子キャラクター

作品の主要人物として活躍する楠田と曽我部だが、連載当時中学生男子は財津衛以外名前が決まっておらず、コミックに掲載されたキャラクター相関図でも楠田、曽我部、寺井と苗字だけだった。

彼らのファーストネームである悦、弘之、春人はアニメ化によって決まった名前であり、フルネーム不明のまま連載を終えた彼らの名前はアニメ化によって「救われた」形になっている。

女子中学生組の名前の法則

キャラクターの名前には法則があり、分かりやすい例を出すと女子中学生の名前はArihara、Bessho、Chikura、Dobashi、Enomoto、Fudonomiyaとアルファベット順に苗字が決められている。

また、久間(Q)に夕(U)に慧(K)など名前の響きがアルファベットになるよう決められた名前もあり、ストーリー以外にも名前の法則を考察する面白さがある。

登場人物に兄妹が多い理由

有原兄妹、別所兄妹、千倉兄妹、土橋兄妹(作中で土橋兄は登場しない)など、作品には兄妹が多く登場し、江ノ本にも姉がいるなど男子組も含め兄弟率がかなり高い。

作者によると、これは初期設定でボツとなってしまった兄妹モノを考えていた頃の名残である。
相変わらず兄妹にこだわっていた作者に、担当が「オムニバスをやろう!」を提案したところ、お互いのやりたかった事を合わせて『初恋限定。』が生まれたという背景がある。

ちなみに、当初はあゆみがメインで主人公は有二という家庭内ラブコメをやりたかったと語っており、作者にとって心の主人公は有原兄妹と強く思っている。

実は大出世キャラクターだった楠田悦

江ノ本慧の初期設定では「美人が、お世辞にもカッコイイとは言えない少年に恋する話」として構想が出来ていたものの、初期の段階で楠田と江ノ本の恋は考えていなかった。

楠田自体は2話というかなり早い段階から登場しており、作品の中心的存在として最後までストーリーを引っ張る重要なポジションを担うが、作者自身当初はここまで重要なキャラクターになるとは思っていなかったため「ヒッドイ顔に描きすぎちゃったなあーと反省してます」と反省の弁を述べている。

構想段階で作者から雑な扱いを受けていた楠田がいつしか作品の中心人物となり、しかもクラス一の美少女である江ノ本慧と恋仲になるのはある意味では「大出世」であり、作者も大人になった楠田を描く時は身長も髪も伸びた、ちょっと目つきの悪い好青年に描くと誓っていると語るなど作者の中でも大きな存在となっている。

あゆみと衛が登場?『秋色妄想日和』

『いちご100%』の連載終了後、2007年10月に『初恋限定。』の連載が始まるまで作者の河下水希は読み切り作品を何作か発表しており、その中の一つである『秋色妄想日和』にはあゆみに似た「亜季」と、衛に似た「朝田」が登場する。

二人とも容姿が似ているだけでなく、何かがあれば兄に強烈な蹴りを決めるあゆみのキック力や、衛の美術部設定など『初恋限定。』に受け継がれている部分も多い。

残念ながら『秋色妄想日和』は読み切りで単行本化もされていないが、彼らのデザインと設定が『初恋限定。』に活かされている事は想像に難くない。

『初恋限定。』の主題歌・挿入歌

OP(オープニング):スフィア『Future Stream』

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@leina19y6

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