多田くんは恋をしない(第8話『雨女だったっけ?』)のネタバレと感想・考察まとめ

多田たち写真部は、富士山麓に撮影合宿に出かける。ドライバーとしてシャルルも同行し、小旅行を楽しむ。しかし、「星」をテーマにした撮影なのに、あいにくの曇天だった。気象予報を信じて晴れ間を待とうと、写真部一行は撮影スポットの湖畔に向かう。
今回は「多田くんは恋をしない」第8話『雨女だったっけ?』の内容(あらすじ・ストーリー)と感想・考察を紹介。

「多田くんは恋をしない」第8話『雨女だったっけ?』のあらすじ・ストーリー

神社で参拝後の様子。(左から)テレサ・アレク・シャルル・多田・伊集院・山下・ピン先輩・長谷川。山下は、おみくじに意気消沈。

次のコンテストに向けて、写真部は撮影旅行に出かける。シャルルの運転する車で、富士山麓に向かった。雨雲が垂れこめていて、富士山はきれいに見えない。以前テレサがピクニックではいつも雨に降られた話をしたことを思い出した多田は、「雨女だったしたっけ?」とテレサをからかう。
浅間神社に晴天祈願に出かけると、曇天ながら富士山が見えた。れいん坊将軍のロケ地であることに気づいた大喜びしたテレサが、何気なく多田と視線を交わすのを、アレクとシャルルは見ていた。
神社では、それぞれおみくじを引いた。「待人、音信なし、来る」の解釈ができずに首をひねるテレサに、長谷川が「『待人』は転機となる人」を指すこともあると教える。山下とアレクは「待人来ず恋愛あきらめなさい」と、おみくじの文言が同じだった。多田は凶を引き、「今が最悪だと思えば悪くない」と言う。納得するまで三回おみくじを引いた伊集院は、多田や山下たちも引き直すようにそそのかす。恋愛運がよかったシャルルは、「恋無き人生は死せるに等しい」という言葉を引き、「恋ってなんだろうね」と呟いた。

多田(左)とシャルルの卓球勝負。

ホテルでのピン先輩は相変わらずで、大浴場の壁に張りついて、女風呂を透視しようとしている。多田は、シャルルと卓球をして完敗だった。
夜間の撮影に備えて、写真部一行は仮眠に入る。風雨を気にしながら本を読んでいたアレクがロビーに出ると、シャルルが電話を終えたところだった。シャルルは仕事でトラブルが起こったことを残念がり、アレクが起きていることを慮る。アレクは風の音で眠れないと答えながら、シャルルの前から立ち去ろうとする。シャルルは、アレクが自分を逃げようとしていると冷やかすように言う。うろたえるアレクが左腕をさすっているのを、部屋から出てきたテレサは見た。「風の音もシャットアウトできるよ」と、自分のデジタルオーディオプレーヤーをアレクに手渡して、部屋に戻った。アレクは、ロビーでプレーヤーに入っていた、モーツァルト「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」を聴きはじめた。

シャルル(右から2番目)に見送られて撮影スポットに向かう(左から)アレク・テレサ・長谷川。

出発の時間には、雨が上がった。シャルルをホテルに残して、写真部は西湖へ出発する。移動中、ピン先輩が来年は京都大学に進学していることを話す。ピン先輩の語る京都の四季の美しさに、テレサは心をときめかす。しかし、テレサとアレクの留学期間は一年であり、来年の春には日本にはいない。
次のコンテストのテーマは「星」である。撮影場所を湖畔に定め、準備をはじめた。テント張りや三脚の設置、ひと息入れるためにコーヒーを淹れるなど、多田は率先して動いている。頼りがいのある多田を、伊集院は将来のスーパーカメラマンになるべく技術を身につけているとほめる。「すごいですね。ずっと同じ夢を持ち続けて、目指しているなんて」と多田に話しかけるテレサに、アレクははっと息を飲んだ。伊集院に「何になりたいの?」と問われて、テレサは、身長が伸びなくてバレエダンサーをあきらめたと話す。「笑顔で生きていければ」という今のテレサの望みは、伊集院を拍子抜けさせた。アレクは「いつも笑顔でいる人は、心身共に万全ですから」と口をはさみ、ガガーリンの逸話を言い添えた。世界初の有人宇宙船の飛行士に、ガガーリンが選出された決め手が、満面の笑顔であったという。
コーヒーを飲んだから完徹できるとひとしきりはしゃぎ、舌の根も乾かぬうちに、伊集院は眠ってしまう。他の部員も、晴れ間が出るという気象予報を信じて、横になって一寝入りすることになった。

雨上がりで滑りやすい水辺で、テレサ(左)を助ける多田。

みんなが眠っても、多田は雲の切れ間を待っていた。テレサも起きだした。多田と話しながら、空模様に気をとられているテレサは、足元がおろそかになって、水辺に落ちそうになる。気付いた多田が手を引いて助けた。
テレサが、「どうして、そんなに頑張れるんですか?」と多田に問いかける。テレサの知る多田は、写真だけでなく、喫茶店の手伝いにも一生懸命だった。多田は、「早く大人にならなきゃと、どこか思い続けているかもしれない」と答えた。テレサ自身にも過去に何かあったのではないかとたずねられて、テレサは答えに窮する。多田の父親の遺作を見たテレサが、「きっとその日から、多田くんは強くなろうと思って生きてきたんでしょうね」と話した。多田は自分の心境が言い当てられたと同時に、テレサにも強くなろうと思った出来事があるのだと感じた。テレサは、「七歳のとき、早く大人にならなきゃいけないと、自覚したのかもしれません」と答える。「とても大切な人(アレク)を泣かせてしまった」ことを、テレサは後悔していた。多田は、「一度後悔したことは、二度と後悔しなければいいんじゃないかな。それが、後悔した意味なんだと思う」と、淡々と湖面を見つめて話した。その言葉は、テレサの心を動かした。

幸運のしるしである北極星を一緒に見上げて、しばし見つめ合う多田(左)とテレサ

空が一気に晴れて、テレサと多田は歓声を上げる。自分たちを導いてくれる北極星も確認して、テレサと多田はしばらく見つめあった。寝ぼけた伊集院に驚いて、テレサは多田にすがりつく。二人から離れたところで横になるアレクは、イヤホンを耳にはめてはいたが、テレサと多田の様子をうかがっていた。
部員たちが次々起きても、長谷川だけが横向きで熟睡している。ピン先輩は、長谷川を「委員長」と呼んでから、「日向子」と言い直して揺り起こした。
撮影会がはじまっても、テレサは多田に気をとられている。テレサの様子を、アレクは何も言わずに見守っていた。
多田は、朝焼けに見入るテレサにカメラを向け、シャッターを切った。

多田がピントを合わせてテレサを撮影するのは、これがはじめて。

シャルルが帰国する日、テレサはアレクと空港まで見送りに出かけた。たこ焼きが出店しているのを見つけたテレサは、シャルルの手土産にしようと、買いに走った。
シャルルは、テレサから目を離さないアレクを、「テレサをもう少し信用してあげなよ。これが最後なんだし」となだめる。「テレサも僕も、そう簡単に道をはずれて生きることはできないんだよ」というシャルルの言葉に、アレクは何か言いかけた。テレサが戻ってきたために、アレクは口をつぐんでしまう。シャルルは「どんな君(テレサ)でも、僕は愛してる」という悲愴な想いを胸に秘めて、テレサの手の甲にキスをした。
展望デッキでシャルルの乗る飛行機を見送り、アレクは「お話があります」と改まった態度で、テレサに語りかけた。

「多田くんは恋をしない」第8話『雨女だったっけ?』の感想・考察

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