毒姫(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ
『毒姫』とは、朝日新聞出版よりNemuki+コミックスで発売された漫画。全5巻。作者は三原ミツカズ。
全身が猛毒の暗殺用の寵姫「毒姫」のリコリスは隣国グランドルの国王を暗殺するためにグランドルへと送り込まれる。そこで出会う3人の王子との激動の運命を描く。
キャッチコピーは「誰も抱きしめる事のできない姫と誰にも抱きしめられなかった王子。ふたりが欲しかったものは自分以外のぬくもり」。
グランドル国王の第1王子。
生誕時に受けた占いでは「無能な子」にあたる。人よりも何倍もの努力をした結果、勤勉で優秀(に見える)ようになった。
リコリスがミトラガイナから差し向けられた刺客だと判明すると辛辣な態度で接し、素手でロウソクを持たせるなどリコリスに数々の屈辱を与えるが、それでも音を上げず「生きるために努力をし続ける」というリコリスの姿勢に共感し、徐々に惹かれていく。
グランドル国王になりすますために長身術(骨をわざと折り、伸ばすという方法)を受けている。
マオ・エフェドラ=グランドル
グランドル国王の第2王子。
生誕時に受けた占いでは「守る子」にあたる。
ハルの毒見役を引き受けており、時折食事に混ぜられていた毒にあたって瀕死になっている。そのぶん毒についての耐性はある程度あり、(後で嘔吐や痙攣などに見舞われるが)リコリスに触れたりすることができる。
毒見役の報酬としてハルから金貨の支払いを受けている他、メイドたちと賭け事をして得た勝ち金を国のはずれの洞窟の中に隠している。
「ハルを国王にする」ということに並々ならぬ執着を持っており、そのためならハル自身の意思を無視することもしばしばある。
生誕時に受けた占いによって、国を滅ぼす「災厄の子」とされ殺される運命にあったが、古臭い占いを嫌うグランドル国王によって救われた。
自身に狂気的な部分があることは自覚しており、自分の狂気を正気に転換するためにハルを王にしようとしている。
カイト・ユビデカレノン=グランドル
グランドル国王の第3王子。
生誕時に受けた占いでは「優秀な子」にあたる。
天賦の才を持っており、特に得意なのはカラクリなどの複雑な仕掛けを解くこと。小さい頃、父に渡された仕掛け箱を一瞬で解き、組み替えて「絶対に開けられない箱」を作った。グランドル国の水門を開閉する複雑な13個の鍵も自力で解いており、その先に捕らえられていたグランドル国王(父)を発見した。
勉強中の板書のノートも上下逆さに書く(そして正解する)など、異様な才能を持っているが、この才能が周囲にばれたらハル、マオと引き離されると察し、小さい頃から自らの才能を抑制してきた。
ただそのことはマオにはばれており、「嫌な奴」と疎まれている。
そうして抑圧してきた結果、心が何処か歪んでしまった。
「無能な子」として完璧になりすませてしまったため、また生殖能力もない上に王位継承権の低い第3王子だからと誰からも関心を持たれなくなってしまった。「誰かに関心を持って欲しい」と歪んだ心が悲鳴をあげた結果、小動物を殺害するなど狂気的な行動をするようになる。
グランドル国王 / イカルス・テガフール=グランドル
ハル、マオ、カイトの父にあたる。本名はイカルス。
元は庶民の出であったが、前王に反発して反乱を起こし王位についた。
破滅思想がちで、わざと危険に飛び込むなど狂的な部分がある。
自分の息子たちに「優秀な子」「守る子」「無能な子」と占いがくだされ、そのうち1人(マオ)が「災厄の子」となると診断された時もあえてマオを生かした。息子の命が惜しかったのではなく、「災厄の子」が生きることによってこのグランドル国に何が起きるのかを試し、その危機から脱するということがしたかったためである。
前王の息子であるガーレが自分を水門の独房に監禁し譲位を迫った時も、右手以外の四肢を潰されながらも平然としていた。
自らが死ぬことで息子のハルがグランドル国王になりすますだろうということを見越し、同時に「無能な子」であるハルに国は治められずどこかで破綻するだろうと見抜いてのことであった。やはりそれも自らの破滅思想によるものである。
国王就任直後、各国の王を招いた晩餐会で「グランドル王を脅かしてやろう」と画策した周辺国の王たちが王族に変装した囚人たちを晩餐会に出席させた。囚人たちの皿には毒が盛られており、毒で次々と囚人たちが死んでいく中、「自分の皿には毒がない」と確信したグランドル国王は涼しい顔で食事を続けたというエピソードが作中で語られる。
ガーレ・ドナウ=グランドル
グランドル前王の息子。
反乱によって王位を簒奪した現グランドル国王のことを憎んでおり、現グランドル国王を排除し王権を復活させようという「王族派」のひとり。
そのためにグランドル国王を誘拐し拷問にかけたが、頑としてグランドル国王は譲位を宣言しなかった。その時のやり取り、また反乱の時に見たグランドル国王の姿が脳裏に焼き付いており、たびたび彼の残した言葉に悩まされている。
妹にリーゼという少女がいる。リーゼは生まれつき耳が聞こえず、また喋ることができない。そのため相手の手のひらを自分の口に当てて口の動きで喋りたい内容を伝達する(相手の話すことを聞き取る時も自分の手のひらを相手の口に当てて読み取る)。
純粋無垢な妹には権謀術数の薄汚いところなど見せたくないガーレはあえて嘘をつき、欲望などない「きれいな世界」を演出している。
作中では、「あの女性(リコリス)と何を話していたの?」「庭の水仙が咲いたら分けてあげる約束をしているんだよ(実際はグランドル国王の暗殺の指示)」というやりとりが描かれている。
リーゼ
ガーレの妹。ガーレの項目で説明した通り、リーゼは生まれつき耳が聞こえず、また喋ることができない。そのため相手の手のひらを自分の口に当てて口の動きで喋りたい内容を伝達する(相手の話すことを聞き取る時も自分の手のひらを相手の口に当てて読み取る)。
薄汚い権謀術数など知らず、綺麗な花を見ておいしいお菓子を食べて綺麗な衣装を着て、優しい兄と優しい召使いたちに囲まれた「きれいな世界」の中で生きている。
グランドル国王(ハルの父親)が前グランドル国王(自分の父親)を殺してその座についたこともよくわかっておらず、「父様は戦で勇敢に命を落とした」というガーレの嘘を信じ、またその時に自殺した母親のことも「自分たちをかばって敵の刃に討たれた」と認識している。
「毒姫」の最終盤であるイスキア国が攻めてきたことも状況を把握しておらず、おそらく「普段より騒がしい雰囲気がしているが祭りか何かだろうか」くらいの認識であると思われる。
ミトガライナ女王 / ダチュラ・メテル=ミトラガイナ
ミトラガイナ国の女王。
描写はないため、おそらく独身で世継ぎがいないと思われる。
ミトラガイナ国は表向きは薬草などの医療品を主な産業としているが、裏では毒草などの毒物を輸出している。
毒姫もまたその一環であり、毒姫の生育を指示したのも女王の仕業である。
グランドル国王即位の晩餐会では「新参者の王を脅かしてやろう」と各国の王たちに呼びかけ、囚人たちを諸王に変装させ、囚人たちを毒殺した。
しかしグランドル国王には見抜かれており、逆に恥をかかされたというエピソードがあり、このことを個人的に根に持っている。
カラバッシュ国の国王を毒姫(ベラドンナ)によって暗殺したことを看破され、釘を刺す文書がグランドル国から送られてきたことが、グランドル国王暗殺のきっかけとなる。
柘榴
毒姫が裏切った時、毒姫を処刑するための「同族狩り」。
また各国に送った毒姫を監視しており、裏切りの兆候があれば釘を差し、暗殺の算段がうまくいってなければ急かすという役割も兼ねている。
元はベラドンナやリコリスと同じ毒姫であったが、崖から転落したことで顔に傷を負い、女性としての価値がなくなったことで「同族狩り」に転身した。
その時の名前「イリス」「アネモネ」を捨て、「柘榴」と名前を変えた。同じ道を歩むと決めた2人は常に一緒に行動しており、どちらが柘榴というわけではなく、どちらも柘榴である。
「同族狩り」となった今でも毒姫としての機能は健在であり、作中ではキスでグランドル国の衛兵を即死させるという描写がある。
目次 - Contents
- 『毒姫』の概要
- 『毒姫』のあらすじ・ストーリー
- 毒姫というものについて
- リコリスの出立
- グランドル国でのリコリスの生活
- 捕虜となったリコリス
- 『毒姫』の登場人物・キャラクター
- アトローパ・ベラドンナ=カンタレラ
- アセビ
- リコリス・ラディアータ
- ハル・トリアゾラム=グランドル
- マオ・エフェドラ=グランドル
- カイト・ユビデカレノン=グランドル
- グランドル国王 / イカルス・テガフール=グランドル
- ガーレ・ドナウ=グランドル
- リーゼ
- ミトガライナ女王 / ダチュラ・メテル=ミトラガイナ
- 柘榴
- マンドレーク
- シッカ・ロール
- ベガ
- ハオマ・ソーマ=イスキア
- 『毒姫』の用語
- 毒姫
- 鬼食い
- 靴違え
- 『毒姫』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 私は「毒姫」。この腕は何も抱くことを許されない。愛しい者であればあるほど
- カイトの非才
- 「立ちっぱなしもなんですから、おかけになりますか?」
- メイドの毒死
- リーゼの最期