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y_i_no0のレビュー・評価・感想

マリンブルーの風に抱かれて
9

登場人物に共感!恋と友情物語

小学生時代に好きだった有川君と高校で再会した主人公の遥の、不完全燃焼で終えたはずの恋心が再び揺れ動く恋模様を描いた漫画、「マリンブルーの風に抱かれて」はよい作品です。遥と有川君を中心に、さまざまな登場人物たちの気持ちも上手く描かれています。

小学生時代、遥に意地悪したことをずっと「謝りたい」と思っていたクラスメイトのリカは、時を経てようやく謝ります。当時意地悪した理由もわかり、次第によき理解者になったリカに対する遥の苦手意識がなくなります。
「遥と仲よくならないだろう」と思わせるリカが、遥の気持ちを段々軽くしたり、小学生時代のリカを払拭するかのように背中を押したり、よき友になっていく流れに「グッ」ときます。
口は悪くても、リカはハッキリキッパリ物を言う、サバサバした性格です。そんなリカにしかできないことをこっそりしたり、きちんと遥にぶつけたり、女同士の友情が育まれていく様子に「スカッ」とするうえ、安心し泣けてきます。
遥の親友も有川君に惹かれます。遥の気持ちに気づき、気持ちを出さないようにする親友は打ち明けるのか、どうするのか、遥と親友の仲がどうなるのか、とても注目です。
幼いときから遥と共に育った一平と有川君は、サーフィン仲間であり、ライバルでもあります。恋愛対象にしていない遥と、少し気持ちが違う一平の恋の行方のほか、一平と有川君の男同士の友情も注目です。
サーフィンで大怪我し入院してしまう一平の輸血に仲間が集まる場面はとても感動します。一平は助かるのか、さらに遥は有川君との恋を成就できるのか、気になる見所です。

この漫画は恋愛だけではなく、女同士と男同士の友情も上手く描かれ、読んでいくうちにこの先どうなるのか、多くの気になるシーンがあります。
ヒューマンストーリーが多い矢沢あいの、サーフィンが好きな男子たちと、恋愛、友情がたっぷり描かれた漫画は、全ての登場人物の気持ちに感情移入し共感できます。
読んでいくうちに先が気になるこの漫画は、応援したくなったり、ハラハラドキドキしたり、ストーリーの展開に目が離せません。
登場人物の気持ちになり、涙したり、安堵したり、感情まで揺さぶられる漫画です。
時代背景のバブル期を感じさせる部分が、面白さの1つです。一昔前の時代でも、人の感情は変わらないと感じられる漫画です。情緒ある登場人物たちが生み出す物語に魅了される本作。登場人物の心情に共感したり、涙したりすること、間違いありません。恋愛だけではなく、熱い友情も描かれたすばらしいお勧めの漫画です。

THE KEBABS
9

カメレオンすら舌を巻く! ロック風味なバンド

『THE KEBABS』は『UNISON SQUARE GARDEN』の田淵智也と、『a flood of circle』の2人を中心に結成された4人組ロックバンドです。

彼らは常に気をてらったアイディアを出し合い、そのアイディアに見合ったライブパフォーマンス披露してくれます。

さらに『月間THE KEBABS』という通販を行っており、6か月連続でシングルを受注生産し、それを月に1度届けるという前代未聞の試みを実践しています。
しかし、6か月連続でただリリースするわけではなく、ファンからシングルのタイトルを考えて応募してもらう、という驚きの内容なのです。

1か月に1度配信ライブをしたり、都内だけではなく全国でライブ展開をしたりしています。

なお、初期の音源は下北沢でライブをした際にしか購入できず、現在はプレミア価格になっています。
何者にも捕らわれない彼らの世界に飛び込めば、もうハマること間違いなしです。

リングにかけろ
8

集英社ビルを新築したボクシング漫画、リングにかけろレビュー

友情・努力・勝利。
1994年に発行部数653万部のギネス記録を達成した、週刊少年ジャンプのモットーとして有名なこのフレーズ。
これを1970年代の終わりにいち早く定着させ、ジャンプ黄金期の礎となった作品が、車田正美作『リングにかけろ(1977年〜1981年)』です。

当初こそ60年代から70年代にかけて大流行したスポ根漫画の影響を受けた熱血人情モノの側面が強かったものの、日米Jr.チャンピオン決戦編で主人公の高嶺 竜児が、猛特訓でモノにした得意のフックに磨きをかけ「ブーメランフック」というスーパーブロー(各々の必殺パンチを、作中ではこう呼ぶ)を使いだした辺りから作品の方向性は大きく逸脱。
SFボクシングとも言うべき、新ジャンルを開拓していくことになります。

それ以降は「団体トーナメント戦」「かつて戦った強敵が仲間になる」「死亡したはずの味方が次のエピソードで復活」
「実際には存在しない文献や疑似科学理論を用いた解説」「修行→身につけたド派手な新必殺技で敵撃破」といった、後に数多くのバトル漫画で多用されるパターンを開発・定着させ、当時の少年読者の圧倒的な人気を獲得していきました。

物語の整合性よりも、読者をびっくりさせることをとにかく最優先し、アイディアの思いつくまま迸るエネルギーで突っ走っていた若き車田先生。
その集大成と言えるのが、竜児の宿命のライバル剣崎順の世界タイトル挑戦編です。

物語終盤、竜児に先駆け一足早くプロデビューを果たす剣崎。
通常デビュー時にはB級までしか認可されないライセンスを当然のように最初からA級で所持し、バンタム級の絶対王者として君臨するジーザス・クライストとのタイトルマッチがいきなり組まれます。

迎えた世界戦では、チャンピオンのジーザスがスーパーブロー「ネオ・バイブル」を天地創造を思わせるカットと創世記のナレーションを背景にひたすら打ち込み、剣崎は開始1ラウンド目でにして6回以上ダウンさせられます。

もはやダウンから立ち上がるだけで3分経ってしまうんじゃないかと言うくらい1ラウンドでボコボコにされ、心肺停止にまで追い込まれる天才剣崎。
そこにリングサイドで見ていた竜児が駆け寄り、涙ながらにスーパーブロー「ブーメラン・テリオス」を剣崎の心臓目掛けて叩き込みます。

熱い男の友情により蘇生した剣崎は、2ラウンド目に自身最大のスーパーブロー「ギャラクティカ・ファントム」を炸裂させ、ジーザスを会場である後楽園のスコアボードにホームランして見事勝利、いよいよ竜児との最終決着へと続くのでした。

『あしたのジョー』や『がんばれ元気』というリアルな劇画調作品が主流だった当時のボクシング漫画に革命を起こし、80年代に続くジャンプの黄金メソッドを1タイトルで作り上げた本作のヒットでジャンプの売り上げは大幅に上昇。
集英社のビルが新しく建て替わったという伝説は、半ばネタにされながら今もなお語り継がれており『リングにかけろ』は、漫画史的に非常に重要な作品なのです。