君が僕らを悪魔と呼んだ頃

君が僕らを悪魔と呼んだ頃のレビュー・評価・感想

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君が僕らを悪魔と呼んだ頃
7

あなたは主人公を許せるか

1部と2部から構成されており、1部は記憶をなくした主人公である男子高校生の平凡な日常から始まる。
だが、主人公は記憶を失う前はとんでもない「悪魔」だった。
記憶を失う前の知人友人らが主人公の前に現れる。ある者は復讐のため、ある者は主人公を利用するため。
現在の平和な生活を当たり前のものと思っていた主人公を追い詰める被害者や元仲間たちの存在、そして過去の自分の罪と向き合っていかなければいけない重圧に主人公は苦しむ。
そんな主人公に寄り添うガールフレンド。だが、ガールフレンドは主人公が過去に最も苦しめた同級生に瓜二つなのだった。
度重なる主人公と仲間による強姦の末、妊娠し中絶した同級生。
彼女への贖罪の気持ちからか、記憶を失っても彼女と顔の似ている女性を愛したことに驚く主人公。
「悪魔」と言われていたという俺に贖罪の気持ちがあるなんて…。
主人公を追い詰めるため、現在のガールフレンドが危険にさらされ元仲間たちの言いなりになる主人公だったが、元仲間たちを反対に自分の子分にしてしまう。
その後、過去に強姦した同級生に再会し一緒に死ぬことを決心したが、ガールフレンドの懸命な説得により死ぬのはやめ、贖罪の人生を歩むことにする。
そこで1部が終了し、2部は偶然知り合った不幸な兄妹のために自分を犠牲にしてまで守ることを主人公は誓い、行動する話になっている。

君が僕らを悪魔と呼んだ頃
10

主人公が異常だけどかっこいい

主人公の斎藤悠介は学生時代にありとあらゆる悪行を尽くし、失踪。
裸で発見された斎藤悠介は記憶を無くし、真っ白な人間になった。
目を覆いたくなるような悪行を重ね、友人ですら悪魔と呼ばれた斎藤悠介だが彼には何か人を引き付けるような魅力を感じました。
同級生の中でも一番ひどい目にあわされた一ノ瀬も、彼を殺してしまいたい衝動を持っているのにも関わらずなぜか斎藤悠介から離れられない…私も作品を読みながら、被害者の屈辱と加害者、斎藤悠介の償いについてとても深く考えさせられる作品でした。
登場人物も個性がかなり強く、悪行を重ねているにも関わらず正当な発言をする会澤も、おちゃめな雰囲気から一変し人を委縮させてしまうほどの話術を持っていてかっこよさを感じました。
人によっては被害者を思うと気分を害する作品かもしれません。それが本能なのか、偽善なのか…そんなことですら考えさせられる作品です。
やったらやられる、さらに強い力で制圧すると周囲にまで復讐の手が及ぶ事態に、記憶を失った主人公が生涯をかけてどう償うか。
復讐と恐怖の波にのまれそうな主人公が自分の意志で決断した道を阻害しようとする人物まで現れてしまいハラハラドキドキの作品です。
続きが気になって徹夜で読み切ってしまいました。

君が僕らを悪魔と呼んだ頃
8

貴方は自分の中の過去の過ちを信じることができるか

記憶喪失の主人公斎藤悠介は、順風満帆な高校生活を送っていた。彼女もできて、甘い青春時代を謳歌する斎藤悠介。そんな幸せは過去の友人会澤の登場から、一瞬にして脆く崩れ去る。
会澤の手には普通では考えられないくらい大きい穴が空いている。それは小学校の頃、面白いからという理由だけで悠介に空けられたのだと友人は言う。しかも毎日、毎日少しづつ穴を大きくされていったようだ。
そんな人間いるはずがない。もしいたとしたらそれは悪魔だ。
記憶喪失の悠介には、はっきりと自分じゃないということはできなかった。
突然現れた、会澤の目的は果たして何なのか。すると彼は口を開いた。
「悠介の失った記憶を取り戻す。僕はその手助けをしに来たんだ」
手の穴から除く彼の目は、昔の悪魔であった時の自分を取り戻してほしい羨望の眼差しにも見える。
拷問、リンチ、レイプ。考えうる悪魔的所業はすべてしてきたという悠介。被害者たちはけして忘れない。
悠介は過去のレイプ被害者、一ノ瀬あかりのことを思い出す。そして自分がしてしまった最大の過ちを悠介が思い出したとき物語は再度動き出します。
現代の悪魔と評すべき描写が、普段の生活とかけ離れていて背筋がぞくぞくしてきます。過激な内容の暴力や表現から主人公の葛藤を見るのが好きな人には非常にオススメです。