魔人探偵脳噛ネウロ

魔人探偵脳噛ネウロ

『魔人探偵脳噛ネウロ(まじんたんていのうがみねうろ)』とは、2005年2月から2009年4月まで週刊少年ジャンプで連載された漫画作品であり、それを原作とするアニメ作品。“謎”と呼ばれるエネルギーを主食とする魔人・脳噛ネウロ(のうがみねうろ)と、平凡な女子高生・桂木弥子(かつらぎやこ)が探偵として様々な事件を解決していく。ストーリーを通して弥子の成長や、魔人の視点を通しての「人間の可能性」を描いていく。謎解きよりもその独特な画風や強烈なキャラクターが一部のファンにカルト的人気を博している。

魔人探偵脳噛ネウロのレビュー・評価・感想

魔人探偵脳噛ネウロ
9

「暗殺教室」の作者のデビュー作!謎解きと変態のえげつない名作(※グロあり)

「謎」を喰べて生きる魔人「脳噛ネウロ」。魔界の謎を喰いつくしたネウロは、謎を求めて人間界にやってきます。謎の匂いに誘われた先には父親を何者かに殺された女子高生「桂木弥子」の姿が。ネウロは魔界777ツ能力を使い弥子の父親の事件を解決し、犯人から出た謎を喰べます。
もっと多くの謎を呼び寄せる為に、弥子を無理やり女子高生探偵に仕立て上げ、ネウロはその助手として様々な難事件の謎を解決していきます。事件は絡み合いやがて遺体をバラバラにして赤いガラスの箱に詰める怪盗「X(サイ)」や、春川教授を殺害し暴走する電人「HAL」が現れます。数々の事件でピンチを乗り越えた弥子とネウロは相棒として絆が深まってきたように見えましたが、事件は7千年繰り返し悪意を継承してきた「新しい血族」の当主「シックス」へと繋がっていくのです。

個性的な登場人物たち、シリアスとギャグが融合したストーリーは飽きのこない面白さがあります。だいたい登場人物は変態だというのも(笑)、深刻な展開に笑いが入ることで魅力が増したストーリーに引き込まれました。
ただデビュー作ということもあり、独特の絵のタッチは好き嫌いが分かれるかもしれません。あと殺人シーンや容赦ない残虐な表現もあるので、そういう漫画が苦手な人は心がまえが必要です。伏線回収や先の読めない展開は「さすが松井優征作品!」と叫びたくなるほど。お勧めしたい作品です。

魔人探偵脳噛ネウロ
10

異色の漫画家の原点にて最高傑作

アニメも大ヒットした大人気漫画『暗殺教室』や『逃げ上手の若君』の作者である、松井優征先生。そんな先生のデビュー作が『魔人探偵脳噛ネウロ』である。この作品には他の漫画には見られないポイントが3つある。
1つ目は、最強の主人公が回を経る毎に弱体化していく点である。普通のジャンプ漫画は落ちこぼれが努力で天才に打ち勝つストーリーになると思うが、本作では主人公である魔人ネウロが人間界で過ごすために、ため込んでいたエネルギーを少しずつ消費していくことで弱体化していく。自分は弱体化を続けていくが、敵は強く凶悪になっていく。このスリリングな展開はほかで見ることはないだろう。
2つ目は個性的すぎるギャグセンスである。本作を知らなくても、ドーピングコンソメスープは知っているという方も多くいるのではないだろうか。コマの隅に時事ネタをブラックに風刺していたりと、読み返す度に新しい発見がある作品だ。実は先生はあの『ボボボーボ・ボーボボ』の作者である澤井先生の元アシスタントを務めていた。圧倒的ギャグセンスにも納得である。
3つ目はストーリー展開の先の読めなさだ。特に電人HAL編は最初から最後まで我々の想像の斜め上を超えていく。普通の漫画に飽きた、個性は漫画を探している。
そんなあなたには是非この『魔人探偵脳噛ネウロ』をお勧めしたい。

魔人探偵脳噛ネウロ
10

エンタメ×探偵の快作漫画「魔人探偵脳噛ネウロ」

魔界の謎を食い尽くした魔人ネウロが食料である「謎」を求めて地上へ来て、事件で父を亡くした桂木弥子と出会い、探偵事務所を開いて謎を食べていくお話。
魔人のネウロと人間である弥子が築いていく関係、魔人と人から見た、事件を経て見る「人間」というものの存在、探偵物と思いきや魔界道具という人智を超越した道具で事件を何段階も飛び越えて解決してしまうが、それに不思議と強引さは感じられず、むしろそれが心地良く感じる快作。
シリアスとコメディー・ギャグ的な描写のバランスが絶妙で、惨状な事件にもくすりと出来るポイントがあり、読後に気分が深く沈み込み過ぎるという事は無い。事件の犯人の描写が振り切っており、最大限の誇張表現にも関わらずリアリティーを外さない。見た目や展開を飽きさせない工夫で楽しませてくれる中で、探偵物で見たいセオリー(犯人の犯行動機、トリック等)が押さえられている。
一話一話の質量が高く、読後の満足感はページ数以上。全体的な構成にも工夫がされており、飽きというものを感じさせない。
だんだんとシリアスさが深くなって行き、そこで成長していく人間の弥子、そして、人間というものの存在を知りネウロもまた成長して行くのを感じる。この探偵と助手のコンビは、種族の垣根を微塵も感じさせない永遠の相棒と成る。

魔人探偵脳噛ネウロ
10

探偵物語としては珍しい

ある日、父親を亡くした女子高生・桂木弥子のもとに、ネウロと名乗る不思議な青年が現れる。
彼の正体は魔界からやってきた魔人であり、謎を主食として生きてきたのだが、魔界の謎を食べ尽くしてしまったため弥子の住む人間界へやってきた。彼の目的は、どこかにあるという究極の謎を食べる事であった。
ネウロはその目的のために弥子と共に探偵業務を開始し、事務所へやってくる様々な依頼をこなしていくという物語。
二人とも食べることが大好きで、食にたいしての執着心や欲望は人一倍。
そんな二人が事件を通し、問題を解決していきながら相棒として絆を深めていく。
話の中では様々な事件の犯人が出てくるが、そのキャラクターも個性豊かな人物ばかり。
世界的な歌姫、自分の信念のためには同僚をも排除するシェフ、脳の研究をしていたが愛する恋人を失った悲しみから世界を支配する電子ドラッグを作ってしまった科学者、そして自分の細胞を変異させ誰にでも変身することのできる大怪盗など、各々のエピソードがとても個性的。また、ネウロと弥子がその事件に対しどのように向き合い、解決していくのか。それによる二人の成長と関係性の変化は見ごたえ十分。
物語の後半は、人類の滅亡を目論む「新しい血族」シックスと、謎を生み出す人間を守ろうとするネウロとの戦いが主なテーマ。
前半の探偵物語とはまた雰囲気が変わって、後半は主にネウロとシックスの手下たちとのバトルが中心となる。
弥子は今までの探偵業で得た知識と経験をもとにネウロを支えていく頼もしい相棒となり、さて血族との戦いの行く末は…というところでクライマックス。
食をテーマとした探偵物としては珍しい作品であり、個性豊かなキャラクターと予想のつかない怒涛の展開が大変面白い作品。ぜひ一度手に取ってほしい。

魔人探偵脳噛ネウロ
9

『ヒト』と『魔人』の間に生まれるモノ

2005年から2009年にかけて、集英社より発刊されている週刊少年ジャンプにて掲載された少年漫画である。アニメ化やゲーム化もされ、コアな人気を得た少年漫画であるのだが、かなり異質な作品であった。
松井は元々ボボボーボ・ボーボボの作者である澤井啓夫のアシスタントをしていただけあって、勢いのあるギャグもこの作品の特徴のひとつだ。

作者である松井優征が1巻のコメントで述べている通り、ジャンルとしては『推理物の皮を被った単純娯楽漫画』が適切だろう。
しかしながら、読者としては単純娯楽では終わらない。しっかりと考えさせられるギミックが随所にちりばめられているのである。
主人公である桂木弥子は、物語冒頭においてはネウロに脅されるような形で傀儡役を請け負うのだが、作品が進むにつれ、様々な人間、そして様々な犯人と出会う。そのなかで弥子は自分自身の手・頭で考えるようになる。
ネウロがギミックやトリックを解き明かし、弥子は犯人たちの中身を解き明かす。
一見バランスの悪い主従関係のようにも見えるふたりから見出す絆は、下手したらヒトとヒトよりも強固なものになっている。
けれどもふたりはそれを言葉にしない。する必要がないからだ。
では、どうして読者はそこに絆を見出すのか。それを知りたくなったあなたは、ぜひこの作品を手にとって欲しい。