0点満点
主人公である藤巻駿がラストに”0点”を叩き出す、本作は冴えない少年が体操という競技と出会い、技術はもちろん人間性も成長を遂げていくストーリー。体操を”楽しむ”という事が根底のテーマ。スポーツにおいて競技や試合に臨むメンタル部分がいかに重要であるかを全巻を通し教えてくれます。
本作は藤巻が中学~大学までを主に描いていますが、その中で同級生や先輩、ライバル、同級生との恋愛模様など、様々なエッセンスを加えつつもすべてが根幹にある体操を”楽しむ”という点に回帰し、困難や挫折を繰り返しながらもその度に”楽しむ”に立ち返り成長をしていく各自の姿に大袈裟ですが人生を謳歌する術を教えてもらった気にすらなります。
冒頭の”0点”について。最終巻付近で紆余曲折を経てとうとう藤巻が日の丸を背負い五輪代表として各国のライバル達と鎬を削ることとなります。そんななか藤巻駿が金メダルのかかった大舞台で得意な種目の鉄棒で”0点”を叩き出します。得意種目且つ、前人未到の4回宙での降り技を披露し後に体操界初の技として自身の名がつくような技を繰り出したにも関わらず。全員が嘘だろ…といった表情で目を疑います。体操業界では僅かなミスでも減点される減点方式の採点のため、満点という概念がなかったのです。そのため、9点台の最高点までしか電光掲示板に表示されない仕様となっており満点をただき出した藤巻は”0点”表記となったのです。
体操というニッチなテーマで手に取りにくい作品かもしれませんが、ポジティブに捉え成長していくという人間の重要なテーマを改めて教えてくれる貴重な作品。