ガンバ!Fly high

ガンバ!Fly high

『ガンバ!Fly high』は『週刊少年サンデー』に連載されていた漫画。原作はロサンゼルスオリンピック金メダリストの森末慎二。作画は菊田洋之。1994年から2000年まで連載され、単行本は全34巻である。原作者の森末慎二の引退後日本の体操界は低迷していて、体操をモチーフにした漫画も少なかった。将来の体操界を案じた森末の「漫画を読んで未来の金メダリストが生まれてくれたらよい」という思いが込められている。
前人未到の個人6連覇を成し遂げた内村航平は『ガンバ!Fly high』を愛読書として挙げている。
ストーリーは王道のスポーツ漫画であり、競技が主な描写でありながら、恋愛要素もある。主人公の藤巻駿は初登場時中学1年生。運動が得意とは言えず、体操も跳び箱で怪我をしてから積極的には取り組んでいなかったが、オリンピックで金メダルと取りたいと体操部に入部。楽しい体操をテーマにメキメキと腕を上げていく。最終的にシドニーオリンピックでの団体金メダル、個人種目鉄棒で金メダルを獲得。見事夢を実現する結果となった。現実世界でも日本体操界は世界に誇れるレベルに成長している。

ngc2775のレビュー・評価・感想

ガンバ!Fly high
10

0点満点

主人公である藤巻駿がラストに”0点”を叩き出す、本作は冴えない少年が体操という競技と出会い、技術はもちろん人間性も成長を遂げていくストーリー。体操を”楽しむ”という事が根底のテーマ。スポーツにおいて競技や試合に臨むメンタル部分がいかに重要であるかを全巻を通し教えてくれます。

本作は藤巻が中学~大学までを主に描いていますが、その中で同級生や先輩、ライバル、同級生との恋愛模様など、様々なエッセンスを加えつつもすべてが根幹にある体操を”楽しむ”という点に回帰し、困難や挫折を繰り返しながらもその度に”楽しむ”に立ち返り成長をしていく各自の姿に大袈裟ですが人生を謳歌する術を教えてもらった気にすらなります。

冒頭の”0点”について。最終巻付近で紆余曲折を経てとうとう藤巻が日の丸を背負い五輪代表として各国のライバル達と鎬を削ることとなります。そんななか藤巻駿が金メダルのかかった大舞台で得意な種目の鉄棒で”0点”を叩き出します。得意種目且つ、前人未到の4回宙での降り技を披露し後に体操界初の技として自身の名がつくような技を繰り出したにも関わらず。全員が嘘だろ…といった表情で目を疑います。体操業界では僅かなミスでも減点される減点方式の採点のため、満点という概念がなかったのです。そのため、9点台の最高点までしか電光掲示板に表示されない仕様となっており満点をただき出した藤巻は”0点”表記となったのです。

体操というニッチなテーマで手に取りにくい作品かもしれませんが、ポジティブに捉え成長していくという人間の重要なテーマを改めて教えてくれる貴重な作品。