実はあまり知られていなが、その本質を見事についているアメコミ映画「アンブレイカブル」
「スパイダーマン」、「アイアンマン」、「X-MEN」などのマーベルコミックなどのマーベル作品の「アベンジャーズ」や、「バットマン」、「スーパーマン」などのDCコミック作品など当たり前となったアメコミ映画。しかし今回、私が紹介する映画「アンブレイカブル」(2001年日本公開)は、公開当初はアメコミ映画とは認識されませんでしたが、この作品は紛れもなくアメコミ映画です。
なぜ、アメコミ映画と認識されなかったのでしょうか。それは3つの理由があると思います。
まず、この「アンブレイカブル」は原作となるヒーローが存在するのではなく、オリジナル脚本で、かつアメコミというのはメインのストーリーではない点です。
次に、監督と主演が、あの〝史上最大のどんでん返し”作品として有名な「シックス・センス」のコンビである、M・ナイト・シャラマンとブルース・ウィリスのコンビで、しかもまた「どんでん返し」の宣伝が強調され、映画を見に行く観客もそれを期待していたためです。しかしながら、そのどんでん返しが思っていたよりもインパクトがあるものではなく、多くの観客が肩透かしを食らいました。
第3に、2002年に公開された「スパイダーマン」が世界的な大ヒットを記録し、ハリウッドでも「アメコミ映画は儲かる」という意識が根付く以前につくられていたため、まだ多くの観客はアメコミ映画と聞かれても、ピンとこなかったためです。
ストーリーは、アメフトのスタジアムの警備員として勤務するデヴィッド(ブルース・ウィリス)が乗る列車が、アメリカのフィラデルフィアで事故を起こし、デヴィッド以外の全員が亡くなる、というところから始まります。そして後日、イライジャと名乗る謎の人物から手紙が届きます。
ここで、アメコミが絡んでくるのです。イライジャはアメコミのコレクターであり、それに関するビジネスも展開していました。そして、彼は骨形成不全という難病を抱え、生涯にわたり骨折を繰り返していましたが、イライジャは長年、体が弱い自分とは対照的なアメコミのヒーローのような人物を本気で探しており、列車事故でただ一人生き残ったデヴィッドこそがヒーロであるというのです。
それではネタバレをしましょう。実はデヴィッドはあまりにも〝ヒーロー探し”に固執するあまり、自分自身でいくつもの悲惨な事故を起こし、「本当のヒーローなら絶対に生き残る」という思いにとりつかれていました。そして彼が起こした事故のうちの一つに、まさに正真正銘のヒーローであるデヴィッドが乗った列車が含まれていたのです。
ネタバレを知ると、始めは「な~んだ」と思うかもしれません。しかし、ヒーローを求めることの本当の危うさや、正真正銘のヒーローの誕生に瞬間が丁寧に描かれていることです。
もう一度いいますが、この映画にどんでん返しを期待してはいけません。何度もいいますが、これは「アメコミ」映画だからです!