その怪物を倒せるのはさらなる怪物だけ
原作は浦沢直樹の漫画「MONSTER」。全74話にもおよぶ大長編アニメですが、一気に見てしまうほど引き込まれるものがあります。
「怪物」の名を恣にするサイコパスの少年と、彼に陥れられ、無実の罪で指名手配をされてしまったことで
復讐を誓い、自らも「怪物」になる決意をした元主治医の脳外科医。
ふたりの人生が、周囲の人々の人生も巻き込んで複雑に交差していく過程は緻密に伏線を張り巡らせながら、まさしく風呂敷が広がっていくような形で、大きく、めまぐるしく進行していきます。
あまりにもめまぐるしいため、見ていると「この風呂敷は、たためるの…?」と疑問も湧いてきますが、取りこぼすことなく伏線のすべてを回収し、最後には見ている人にすべてを委ねるリドル・ストーリーとして鮮やかに幕を引いていて、
単にアニメとしてではなくミステリ、サスペンス作品としても非常に優秀な物語です。
登場人物一人ひとりのキャラクターがしっかりと立って魅力にあふれており、メインキャラクターだけでなく、主人公のDr.テンマが旅をしている過程で出会う、いわゆるモブキャラのような人物たちですら、後で再登場した際に「この人、誰だっけ…?」に陥ることはまずありません。
原作があると、アニメ化や実写化にあたって大幅な改変が行われて乖離が生まれてしまう、というのもよくある事態だとは思いますが、こちらはほぼ改変なく忠実にアニメ化されており、すでに原作を読んでいる人でも楽しめる仕上がりになっていました。
あまりないサスペンスジャンルのアニメを探している人や、とにかく見ごたえのあるアニメを探している人に大変おすすめな作品です。