様々な妖怪たちが楽しく暮らす妖怪アパートに夕士はなじむことができるのか
人ではないもの、妖怪、そして人間が同居するアパート。両親を亡くし親戚に引き取られて育った孤独な青年「稲葉夕士(いなば ゆうし)」は、高校進学で入居するはずだった寮が火事になってしまいしばらくの間、一人暮らしをすることになった。後ろ盾もない夕士と契約してくれる不動産業者は見つからず途方に暮れていると、小さい男の子がある不動産会社へ導いてくれた。その不動産業者が紹介してくれたのが、妖怪たちと人間が同居する妖怪アパートだった。
妖怪アパートでの暮らしも少しずつ慣れてきた夕士。中には本当に幽霊なのかと思うくらい、見た目は人間のようなものもいる。夕士は両親を亡くし、親戚の家に引き取られて生活していたこともあり、ごく当たり前の「普通」の暮らしがしたいと思っていた。高校を卒業したらサラリーマンになって、普通に働き普通に結婚し、普通の幸せをつかむんだと考えていた夕士。しかし妖怪アパートにきてからというもの、「普通」ではない日々の繰り返しとなっている。なんとか普通に暮らしていきたいともがく夕士は、次々と現れる現実離れした幽霊や妖怪たちに思わず「いいかげんにしてくれ」と怒鳴ってしまった。一斉に部屋が鎮まり、言いすぎたと思った夕士だったが、妖怪たちが静かになったのは「人間(だろうといわれている)」の住人であり霊能力者の「龍さん」が現れたからだった。
幽霊や妖怪たちがひれ伏している姿を見て、霊能者のすごさを実感する夕士。温かな雰囲気を持つ龍さんに、不思議と人間のかかわりや常に変わり続けることが通常であることを聞き、自分にとって「普通」ってなんだろうと考え始める。
龍さんのいうように肩の力を抜き、妖怪たちとの暮らしを楽しめるようになるのか。少しずつ妖怪たちに心を許し、自分にとっての普通を知る夕士の姿が描かれる。