現役バリバリのシンガーソングライター
私は両親が勧めた映画次郎物語を見ても感動することはありませんでしたが、最後のエンディング曲で、こんな歌の上手い歌手がいるんだと感激しました。そこから情報収集して調べると、さだまさしが歌っていることがわかりました。それから年月が経ち、友人たちが当時人気絶頂だった浜崎あゆみさんやMr.Childrenに熱狂していたとき、私はさだまさしさんの歌に熱狂していました。きっかけが何だったのか、これもはっきりと覚えていないのですが、ふと手に取ったさださんのベストアルバムをレンタルしたのが、私の音楽生活を大きく変えることになりました。そこで話は前述に戻るのですが、「次郎物語」のエンディングを歌っていたのがまさしくさださんの「男は大きな河になれ」だったのです。スメタナの「モルダウ」という管弦楽曲にさださんが歌詞をのせた曲でした。子どもの頃、名も知らぬ人の歌に魅了された私が、大人になったいま、同じ人の歌に魅了されている…言うなれば、子どもの頃から「さだファン」だったのです。すごい奇跡だと感動しました。
コンサートは4400回以上、これまでに発表した曲は567曲という、驚異的な記録を持つさださん。それこそ名曲は数えきれないほどあるのですが、ここでは「償い」という曲をおすすめします。さだファンにとってこの曲は名曲中の名曲、「当たり前だろう」と突っ込みを入れられるでしょうが、未試聴の方へ、ぜひ一度聴いてほしい作品として紹介します。
「償い」は、悲しい過ちを犯してしまった“ゆうちゃん”の物語。実話だと言われています。
ひとは過ちを犯してしまう生きものです。でもそれが、贖いきれないほどの重い罪だったとしたら。
償いのかたちはひとによって違うでしょう。刑務所に入ったから償いは終わった、と考える人。真摯に反省して償いを考える人もいれば、償うことから逃げる人もいます。そして“ゆうちゃん”のように「何もかも忘れて働いて働いて 償いきれるはずもないが せめてもと 毎月あの人(被害者の奥さん)に仕送りをしている」(歌詞より)という人も。
2002年2月、被害者男性に暴行を加え死亡させた加害者少年ふたりの裁判で、山室惠裁判長は「君たちは、さだまさしの『償い』という歌を聴いたことがあるだろうか」と問いかけました。自分たちの犯した罪の重大さに気づかず、ぽかんとするふたりに「この歌の歌詞だけでも読めば、君たちの反省の弁がいかに人の心を打たないか分かるだろう」と述べました。
裁判官が具体名を出した発言をするのは異例で、当時マスコミにも大きく取り上げられています。
“ゆうちゃん”の償いはおそらく、彼の命が尽きる日まで続くのでしょう。こんなにやさしい人もいる、だからこそ哀しいんです。「何だかもらい泣きの涙がとまらなくて」(歌詞より)、こちらももらい泣きの涙が止まりませんでした。
さださんの歌う「償い」は聴いているのがとてもつらいです。しかし、本当に大切なことを教えてくれる歌だと思っています。未試聴の方、ぜひ“ゆうちゃん”の償いを見届けてあげてください。