さだまさし

とむぽんのレビュー・評価・感想

レビューを書く
さだまさし
9

心の琴線に触れる歌詞とメロディー

日本語の美しさやなつかしさを含む語彙が豊富な方である。
一人の人間としての自分を愛する気持ちを抱かせ、命の大切さを語らせると右に出る者はいない。
「精霊流し」のヒット曲は、愛する人を亡くした哀切をひしひしと伝えてくれている。
メロディ―は若くして失った夫を悼む妻をまるで慈しむかのように、包み込むかのように甘く切ない。
また夫の母親の着物の色を表現することで、姑を気遣う若いお嫁さんの気遣いを忘れない細やかな優しさをもにじませている。
自分は夫を失い、母親は愛する一人息子を失った。夫を思い、一人息子を思う、妻として母親としての哀切を謳っている。
さだの作詞作曲は、こうした人間模様を巧みに歌いあげている所である。
若いカップルの甘酸っぱい恋を描いたり、「防人の歌」のように自然界にある無常を歌い上げ、山は死ぬのか、川も地も死んでいくのか?と問いながら、人の苦しい歩みに儚い夢や希望が託され終わって行く切なさを謳っている。
さだの歌には、生きる私たちに、本当の人間らしさ、ぬくもりがどういったもので、どのように相手に示されて行くのかを伝えようとしているかのように見える。
人の気持ちに寄り添う優しさや機微が感じられ、細やかな心のヒダにメロディーとともにそれらが沁み込んでくるような感じがする。
時には淋しい、時には面白い、時には情緒たっぷりに、その美しい日本語の表現と音楽に癒されて、至福の喜びに満たされていくのである。