天 天和通りの快男児

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天 天和通りの快男児のレビュー・評価・感想

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天 天和通りの快男児
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中年の星になった神域の男の生きざまに刮目せよ!天 天和通りの快男児 レビュー

麻雀漫画の金字塔「アカギ」
アニメ化までされた本作があまりにも有名になってしまった為、知らない人も多くなってしまいましたが、元は別の漫画の人気脇役だったキャラクターを主役に持ってきたスピンオフ作品でした。

その元ネタとなった麻雀漫画こそ、「天 天和通りの快男児」です。

理詰めの麻雀を好む学生、井川 ひろゆきが無頼の麻雀打ち天貴史と出会うところから始まったこの物語は、当初一話完結の人情モノでした。

しかし徐々に心理戦による本格闘牌麻雀漫画に移行。
作品の半分を占める東西のトップ麻雀打ちによる一大決戦へと進んでいきます。
そのターニングポイントとなったのが天とひろゆきの前に、赤木 しげるが現れた回でした。

「アカギ」の時代から約30年後、神域の男と呼ばれ、伝説の麻雀打ちとなっていた赤木しげる。
このおっさんになった赤木がとにかくめちゃくちゃカッコいい!

常にニヒルでクールだった若い頃と比べると「ちょっとゴルフがしたくなった」と仲のいいツレに声をかけて思い付きでハワイに行ってみたり、結構茶目っ気のあるところも見せつつ、いざ麻雀勝負になると、敵味方含めた最強キャラとしてひたすら頼りになります。
更にその若さと繊細な感性ゆえに悩み迷うひろゆきに対して東西戦を通じて、要所要所で助言をして導く師匠ポジションでもある。

「俺の暗刻はそこにある…」「そういうこざかしいことと無関係の所に…強者は存在する」など痺れる名言も山盛りで、読んでいくうちにどんどん赤木に心酔すること請け合いです。

また終盤に描かれた通称「通夜編」では麻雀漫画雑誌連載作でありながら全く麻雀をせずに、死を前にした赤木と周囲の人たちとの会話劇が繰り広げられますがこれがまたアツい!物語の最後、飛散した赤木を語る天とひろゆき。
寂しくもあり、どこか清々しくもある。そんな気持ちを読者も共有できるのでは無いでしょうか。

13年に及ぶ長期連載の中で、人情漫画家からギャンブル漫画家、そして人間心理を描く第一人者として覚醒した福本 伸行先生の成長の記録としても貴重な本作。
皆さんも、伝説の男の生きざまを追体験してみてはいかがでしょうか?

天 天和通りの快男児
10

麻雀を知りたい人にも、人間の心理学に興味がある人にもおすすめな漫画です。

漫画「天 天和通りの快男児」は麻雀を題材としている漫画です。
麻雀といえば運によって左右されることが大きいのですが、この作品ではそういった運による勝負展開ではなく、ひたすら理詰めで解説をしていきます。例えばテンパイになった時にはそのテンパイの受け方が何通りあるのか、あるいは切る牌が何通りあるのか、などを実に丁寧に解説されています。
また相手の捨て牌や、テンパイの形の読み方にしても理詰めで考えていき、時には直接相手の手牌や捨て牌をよむのではなくて、他の人がどのような捨て牌をしているのか、から読んだりもしています。
それから、この漫画では麻雀という勝負時における人間心理の描写も実に濃密なまでに行われています。漫画の主人公は一応はタイトルにある天貴史という男なのですが、もう1人の主人公として井川ひろゆきという青年もいます。麻雀の勝負時における手牌の描写は、天よりもむしろひろゆきの手牌の方が多いくらいです。
この漫画は大別すると3つのパートに分かれています。第1部は天とひろゆきの出会いとその2人の勝負、第2部は天やひろゆきが東の代打ちとして西の代打ちと戦う東西戦、そして第3部では麻雀漫画なのに全く麻雀の描写がないという驚きの展開があります。第3部は天やひろゆきとともに東の代打ちとして活躍した赤木しげるの生前葬の話になっています。安楽死の問題にもふれていたりと生きるとは何かということを考えさせられる展開です。こういった内容ですので麻雀に興味がある人はもちろん、麻雀は知らなくても心理学に興味がある人や生きるとは何かという哲学的なことに興味がある人にもおすすめの漫画です。