イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 / The Imitation Game

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 / The Imitation Game

第二次世界大戦中に、ドイツのエニグマ暗号の解読に挑んだアラン・チューリングの実話を、グレアム・ムーア脚本、モルテン・ティルドゥム監督により2014年に映画化した、歴史ミステリー映画。解読不能と言われたエニグマ暗号を、万能マシン「クリストファー」によって解読し、イギリスを勝利に導いたものの、同性愛者であることから不遇の人生を送ったアラン・チューリングをベネディクト・カンバーバッチが熱演している。

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 / The Imitation Gameのレビュー・評価・感想

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 / The Imitation Game
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イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密

ベネディクト・カンバーバッチが、コンピュータの父と言われたアラン・チューリングを演じた映画です。
演技力には定評があるベネディクト・カンバーバッチですが、ここまで素晴らしい俳優だったとは!

アラン・チューリングは発達障害の特性を持っていて、さらにゲイであるというとても複雑な人物であるにもかかわらず、人間関係や良心の呵責など、複雑な人間性のなかにある苦悩を本当に上手く表現しています。
また、キーラ・ナイトレイもアラン・チューリングの良き理解者であるジョーンを好演!ジョーンとアランの男女を友情を超えた愛情は、羨ましくなってしまうほど。

しかし、素晴らしいのはキャストだけではありません。
仲間内にスパイがいるとわかり、それが誰か判明した瞬間は鳥肌もの。ストーリー展開と伏線の回収が秀逸です!
それだけではなく、パブのシーンの撮影には実際の「ブレッチリー・パーク」も使われていて、アラン・チューリングが実際にここでビールを飲んでいたのかと思いを馳せない人はいないでしょう。

戦争映画は重いイメージがつきものなので、避けてしまう人も多いかと思います。
しかし、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』は、戦争に翻弄された人たちのヒューマンドラマであり、キャスト・監督・脚本、制作チームがチーム一丸となって作った名作です。ぜひ死ぬまでに一度は見てみてください。

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 / The Imitation Game
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誰も想像しなかったような偉業を誰も想像しなかったような人物が成し遂げる。しかし、それがはたして当人にとって本当に幸福なのか?

この映画は、大戦期に実在した天才数学者アラン・チューリングを題材とする実話に基づく物語。
1939年といえば、かつての第二次世界大戦時、イギリスがドイツに宣戦布告した年です。
当時イギリスは、敵国であるドイツ軍の先制攻撃によって一方的に攻撃を受けてばかり。
イギリスは先手を打って戦局を打開しようと、ドイツが交わしている通信暗号文の解読の必要に追われていました。
数学とパズルが好きな数学者アラン・チューリングはイギリス軍の暗号文解読部門に志願。
ドイツの暗号機「エニグマ」の解読に挑みます。
同じく雇われた学者たちとエニグマの解読に挑む中で立ち塞がるのは、変わり者ゆえの周囲からの不理解や衝突といった、マイノリティとしての苦しみ。
そうした生きづらさを抱えているチューリングは、暗号解読のために現代社会において必須な「ある物」の原形を発明します。
「人間は何故暴力を振るうのか?」「戦争に勝つために必要なものは何か?」
こういった問いに対して信念を貫こうと多くの物を背負いながら、チューリングは孤独を深めていきます。
軍の極秘に関わり、犯罪者として記録から抹消されてしまった男の人生と偉業。
そんな彼の生き様とラストシーンに何を思うか?確かに生きてきた人間のドラマがそこにあります。

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 / The Imitation Game
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私たちの秘密とは

この映画は単に、「『エニグマ』という暗号機を解き、ドイツ軍の策略を欺く」、というサスペンス・ミステリーの話だけではなく、人と人との『秘密』を解き明かしていくドラマでもあり、第二次世界大戦時のヨーロッパ情勢を描く歴史モノでもある。

タイトルの『イミテーションゲーム』とは、コンピューターの思考能力を評価するために行なわれるゲームのことであり、コンピューターと人間に同じ質問をして、それぞれがどちらの回答であるかを隠し、それを第三者に提示、どちらがコンピューターの回答であるかを判定させるというものである。

映画でもこの描写がある。

「教えて欲しい、私は犯罪者か、それとも英雄か」
天才数学者の『アラン・チューニング』は苦悩する。

「それって話す時とどう違うの?本当の意味ではなく、別の言い方をする。でも、相手は理解するよね、僕はそうじゃないけど」

幼き日のアランは言う。
人間をどこかで煩わしく思い、ひた隠しにしてきた感情。
その真理を問う場面。

その秘密は、エニグマとの対峙によって徐々に解かれ、そして明かされていく。
最後は切なくて、でも胸が熱くなる物語。